都議会議員の目線で新首相に期待すること(中) -国で進まない新型コロナの法整備に対し独自条例を議員提案 -

 東京都議会議員(三鷹市・都民ファーストの会 東京都議団)の山田ひろしです。

 菅新首相が就任されました。待機児童・不妊治療などの少子化対策や、デジタル庁の設置などが重要課題として挙げられています。これらは、私たちが都政でこれまで強力に推進してきた課題(都内待機児童数の7割減少・不妊治療の助成範囲の拡充、都庁にデジタル推進組織の「戦略政策情報推進本部」を設置など)ですので、日本全体でこれらの取組が推進されることを大いに期待します。

1. 新型コロナ対策を強化する独自条例案の提案

 前回から時間が空いてしまい申し訳ありませんが、都政・都議会議員の立場から期待する点の続きとして、新首相にはやはり、喫緊の課題である新型コロナに対し、各自治体が実効的な対応を可能とする法整備を期待したいと考えています。しかし、非常に残念ながら、政府の方では当面、法整備を進める意向はないようです。
 政府が消極的な理由は良く分からないのですが、新型コロナとの闘いはまだまだ長期戦が想定されます。特にこれから冬にかけては、新型コロナとインフルエンザの同時流行も懸念され、今のうちに実効性のある対策を講じることが急務です。
 新型コロナの感染拡大を早期に防ぐため、都民ファーストの会東京都議団は全国初の罰則付きの条例案を取りまとめました。本年12月の東京都議会への議員提案条例としての提出・成立を目指しており、実現に向けて都民の皆様のご意見をお寄せ頂けますと幸いです。

 こちらは記者会見の写真です。

条例記者会見写真

条例記者会見写真2

条例案の詳細・ご意見は以下までお願いします。

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSeyvM9MiGCw2MYD8lCelWScVb5kC7oyO845HwkwnDpGfYb9Rw/viewform?gxids=7757


2. 「東京都新型コロナウイルス感染症対策強化に関する特別措置条例(案)」の概要

■目的:都民の生命・健康の保護、感染症対策と生活・経済との両立

■都の責務
 〇PCR検査等の体制・宿泊療養施設の整備・医療体制の整備
 〇情報の提供(年代別・感染経路などの分かりやすさに配慮)

■都民・事業者の責務
 〇入院、宿泊療養施設入所、自宅療養、感染の年代・地域に留意した予防の努力義務
 〇調査協力義務、一定の場合の施設名・催物名等を公表措置

罰則の内容一定の行き過ぎた行動・結果発生に限定
 〇新型コロナ感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者が、正当な理由なく検査を拒否する場合
 〇陽性者が、就業制限・外出制限に従わないで、他人に感染させた場合
 〇事業者が、特別措置法に基づく知事の休業要請・時短要請等に従わず、一定人数以上の感染者を生じさせた場合。但し、感染予防ガイドラインを遵守していた場合を除く
 ⇒ 5万円以下の過料

3. 条例案の趣旨・背景

 現行の法規制(感染症法や新型コロナ対策特別措置法)では、以下のような事例に対し十分な対策を講じることができておらず、感染拡大の防止の観点から不十分な状況です。

〇感染を疑われる人に保健所がPCR検査を依頼しても、検査を拒否
〇陽性者が陽性の判明後に接待を伴う飲食店に行き、店員が感染
〇ホテルや自宅で療養すべき陽性者が外出
〇都による休業要請や時間短縮営業の要請に対し、十分にご協力頂けない店舗も存在

 非常に多くの都民・事業者の皆様には、真摯に感染拡大の防止にご協力頂いている一方で、残念ながら、感染拡大防止の意識・対策が十分ではない都民・事業者も存在するのが現実です。感染拡大を防止するため、一定の行き過ぎた事例に対しては、罰則等による対策の強化が必要と考えます。
 経済・社会全体への影響が大きい、「全体的な」緊急事態宣言や各種の休業要請を避けるためにも、「第3波」の兆しが見え始めた早い段階で、感染源に「集中的な個別対応」を可能にする仕組が必要であり、条例案はその趣旨で作成・提案しています。
 私たちはこの条例案を公表後、メディアにも取り上げていただく機会もあり、番組内のアンケートでは8割以上の方がこの条例案に「賛成」を示していただいた例もあるとのことです。引き続き皆様のご意見を頂き中身を精査しながら、成立に向けて尽力していきます。

4. 自治体に主導権を!

(1) その他の課題
 一定の行き過ぎた事例への対応力の強化のほか、これまでに見えてきた主な課題は以下が挙げられます。

国・自治体間の権限分配:地域の感染状況に応じた対応を促すため、緊急事態宣言時の休業要請の対象選定等について、自治体に主導権を持たせるべきではないか
実効性の確保:知事による事業者への休業要請、地域独自の緊急事態宣言などは、現状では罰則等の実効性を確保する法的裏付けに乏しく「お願い」ベースが主
財源:事業者への適切な補償や自治体が独自に実施している協力金の制度化など、自治体の権限の裏付けとなる財源の自治体への移転

 特に休業要請の実効性確保については、全国知事会や東京都医師会からも強い問題提起が継続して行われていますが、残念ながら国の動きは鈍い状況です。

(2) 東京都の特徴:国による全国一律の判断はリスク大
 東京都の大きな特徴として人口の密集・集積の度合いが高い点が挙げられますが、その結果、他自治体と比較して感染拡大のリスクが必然的に高いと言えます。国は全ての都道府県の状況を踏まえての判断となるため、国の判断に都が手足を縛られるのは大きな問題を生じさせる可能性があります。
 現にこれまでも、緊急事態宣言発令時の休業要請の対象業種の範囲、Go Toキャンペーンのあり方(最終的に当初は都だけ除外)、新型コロナの感染症法における「2類相当」の大幅緩和の検討(最終的に見直しは限定的な模様)など、国は経済の側面に「急に」アクセルを踏みすぎではないかとの疑問があります。
 感染拡大防止と社会経済活動の両立のバランスは極めて難しいと日々実感していますが、一足飛びに大幅な緩和を行うのではなく、地域ごとの感染状況をモニタリングしながら、徐々に緩和し、様子を見ていくことがカギと考えます。
 このように、地域の実情に応じた対応を可能にするためにも、新型コロナという緊急的な事態だけではなく、常日頃から各自治体の権限・財源を政府から移譲していく地方分権の積極的な推進が必要です。しかし、地方分権も残念ながら、このところ国政では十分な議論がされていないようです。

(3) なぜ法改正の議論をしない?
 このように、喫緊の課題である新型コロナ対策に関し、特措法・感染症法の改正などの諸課題を一刻も早く国会で審議していただきたいのですが、実質的審議が行われる国会は開かれる様子がありません。こちらも理由はよく分かりません。
 憲法53条には、衆議院か参議院どちらかの総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は国会の召集を決定しなければならないと規定されています。この規定は地方裁判所の判決でも法的義務と明言されており、要件を満たす4分の1以上による要求は7月末に既に実施されています。しかし、この2か月弱の間、国会は召集されておらず政府の対応には憲法違反の疑義が生じています。
 私たちも独自条例案の提案など、現行法制で可能な対応を進めていますが、国には一刻も早く国会を召集し、法改正の議論を進めて頂きたいと考えます。


 長文をお読みいただきありがとうございました。次回は続きについて書きたいと思います。

東京都議会議員 山田ひろし

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