都内の新型コロナの現状は?新モニタリング項目と現状認識

 東京都議会議員(三鷹市・都民ファーストの会 東京都議団)の山田ひろしです。

 本日7月9日、都内では新たに224人の新型コロナの感染が確認されました。1日あたりの感染者数としては緊急事態宣言下の時期も含め、過去最多となります。これをどのように受け止め今後の対応を取るべきか、今回は、都の現状のモニタリングの考え方とあわせて私の理解をご説明します。

 まず、皆様は「都内の感染状況をモニタリングする考え方、いろいろ変更されたようだけれど、結局現状の基準はどうなっているの?」という疑問をお持ちなのではないかと思います。

 7月からは、以前とは異なる以下の新たなモニタリング項目に基づく、都内の感染状況の分析が試行されています。

モニタリング項目スクショ

 今回の新たな指標の大きな柱は「感染状況」と「医療提供体制」の2つですが、私の理解では、その目的は医療の「需要」と「供給」のバランスを考慮して「医療崩壊」を起こさない点にあります。一度医療崩壊が起きてしまうと、新型コロナ以外の患者も受け入れることができず、通常であれば救うことができた命も救えない状況に陥ってしまうためです。

 具体的には、一つ目の「感染状況」は、新規陽性者数の増加傾向などをみることで、現在の医療の「需要」に関する状況をモニタリングするものです。そして、二つ目の「医療提供体制」は、救急医療のひっ迫状況や、陽性者のうち入院が必要な患者数や重症患者数などをみることで、現在の医療の「供給」に関する状況をモニタリングするものです。

 この2つの「需要」と「供給」のバランスをみて、医療現場や専門家の意見を得ながら、「需要」に比して現状の「供給」が不足している場合に追加で病床を確保するなど、医療崩壊を起こさないための対応を行い、感染拡大防止と社会経済活動の両立を図ることを目的とした仕組となっています。
 

 極端な話をすると、もし仮に1日あたり感染者が500人になっても、病床が1万床確保されており医療提供体制に余裕があれば、医療崩壊は起こらないため、経済的ダメージが大きい休業要請を行う必要はないという判断があり得るということです。(現実にはここまで病床を確保することは困難と思われますし、ここまで感染者数が多いと指数関数的に増加するリスクが大きいと考えられますが、モニタリングの考え方を説明するための例示とご理解ください。)

 このように、新たなモニタリングは、需要と供給のバランス・相関関係に基づき行う方式のため、「新規陽性者数50名以上」のような一律な数値基準は設定されていません。そのため「分かりにくい」というご意見もあるかもしれませんが、数値基準が独り歩きすることで硬直的な対応に縛られる可能性もあり、一長一短かと思います。
 新型コロナという未知のウイルスとの闘いであり、状況に応じた対応の変更は必要です。その変更に対して、しっかりと都民の皆様の理解を得られるよう、専門家の判断を踏まえながらも、行政としての判断理由を明確に説明していくことが重要と考えます。

 それでは、このようなモニタリングの考え方に基づき、都内の感染の現状をどのように受け止めれば良いのでしょうか。

都は週に1回程度、モニタリング項目の分析結果を公表する形で進めるとしており、現状の最新の分析結果は、昨日7月8日時点での以下の内容となります。なお、この評価には、224人の新規陽性者が確認された本日7月9日の状況は反映されていません

7月8日分析スクショ

 モデルが精緻であるがゆえに、なかなか一目では理解が難しいのですが、右側のオレンジ色部分が専門家の分析の結論となります。下のとおり、「赤」「オレンジ」「黄色」「緑」の4段階評価のうち、「感染状況」「医療提供体制」の二つとも、4段階のうち悪い方から2番目のオレンジと結論づけられています。つまり、「感染が拡大しつつあると思われ、医療体制の強化が必要と思われる」というのが7月8日時点での評価結果となります。

総括コメントスクショ

 これらのモニタリング項目のうち、私が特に注意して確認すべきと考えるのが「入院患者数」と「重症患者数」の二つです。これらに余裕があれば医療崩壊は防ぐことができます。現状では「入院患者数」は444人/1000床、「重症患者数」6人/100床であり、まだ医療の「供給」がひっ迫しているとはいえないと評価できます。この状況が、緊急事態宣言時において医療提供体制がひっ迫していた時期との決定的な違いとなります。

 しかし、繰り返しですが、この評価には、224人の新規陽性者が確認された本日7月9日の状況は反映されていません。高水準の新規陽性者数が今後も続くと、新型コロナの怖さの一つである、無自覚症状者からの市中感染拡大のリスク、特に重症化リスクが高いとされる高齢者への感染のリスクが高まり、その結果、確保していた病床もひっ迫し、医療崩壊の危険性が高まります。

 都では、先週から既に、現状の1000床から3000床の病床確保に向けた動きを開始していますが、コロナ対応の病床確保は受入医療機関にとっても様々な負担が生じ、時間もかかるのが実情です。私個人としては、緊急事態宣言時とは状況は異なりますが、決して予断は許さないというのが現在の東京の状況と考えます。

 都の対応としては、PCRなど検査能力の強化、病床の確保の強化(最大4000床)に加え、感染症への対応力を強化するため、海外事例を参考にした東京都版CDC(疾病対策予防センター)の創設などを進めています。

 また、お店の感染拡大防止と営業活動の両立を支援するため、パーテーション設置費用など感染拡大予防ガイドラインに沿った営業への支援や、業種別のガイドラインに沿った営業を推奨する「感染防止徹底宣言ステッカー」などの取組を進めています。これは、感染拡大防止策の自己チェックを完了したお店がこのステッカーを利用できるようにすることで、安心して利用できる「衛生環境」をお店の一つの競争力とすることを支援する取組です。

 さらに、自治体が実施する繁華街等への一斉検査や休業協力金に対する財政支援、都独自の医療機関への経営支援や都独自の家賃補助などを含めた新たな補正予算の準備も進められていますが、これはまた別の機会に詳細をご説明したいと思います。

 経済を適切に回すためにも感染拡大予防策は必須です。あらためて、マスク・手洗い、3密を避けるなどの基本の徹底をお願い致します。

 今回の内容の詳細については、以下の都のホームページもご参照ください。

 長文をお読みいただきありがとうございました。次回はまた別のテーマについて書きたいと思います。

東京都議会議員 山田ひろし


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