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都議会議員の目線で新首相に期待すること(上) -「地方創生」に東京の視点は?国は都民一人ひとりに6万円を還元すべき-

 東京都議会議員(三鷹市・都民ファーストの会 東京都議団)の山田ひろしです。

 現在、国の方では自民党の新総裁、つまり新首相が誰になるか様々な動きが報じられています。国政では与野党ともに様々な動きがあるようですが、私は都政・都議会議員の立場から、新首相に期待すべき主な事項は以下と考えています。

(1) 「地方創生」に東京の視点は?国は都民一人ひとりに6万円を還元すべき
(2) 新型コロナ:自治体に主導権を!
(3) 経済:コロナ禍からの復興は「新しい成長」モデルで!
(4) 人口減少を理由とする構造問題への対応強化を!

1. 「地方創生」に東京の視点は?国は都民一人ひとりに6万円を還元すべき

(1) 最近の国の措置は疑問だらけ

 新首相の各候補とも「地方創生」を強く訴えていらっしゃいますが、その「地方」の中には地方自治体の一つである東京都が含まれているのかどうか、私のこれまでの都議会議員の経験から最も疑問に感じている点です

具体的に掲げますと、
(a)  東京都、そして都内の各自治体から税の流出を招く結果となっている 「ふるさと納税」の制度としての妥当性
(b)  東京を直前で除外し、同じ税金を支払っている都民に対して何ら代替措置を示さない状況でのGo Toキャンペーンの実施
(c)  一部報道によれば、東京は国際金融センターとして世界3位とされるなど、対外的評価が高いにもかかわらず、政府は金融拠点を大阪・福岡で新たに整備する方針を検討。

 (c)について、国際金融センターとして発展するためには世界から「選ばれる」ことが重要ですが、一定の集積がある東京ではなく大阪・福岡に新たに政策資源を投入することが合理的といえるのでしょうか。

 最近の国の対応をみていると、政府は「東京都は勝手にやってくれ」と言わんばかりの対応が続いています。意図的に東京都に嫌がらせをしているのか私は分かりませんが、例えばGo Toキャンペーンの対応など、都民とその他の地域の国民との間に不合理な不公平を生じさせてしまっており、率直に言って最近の国の政策立案能力に大きな不安を覚えます。

(2) 東京を都合の良い「財布」化

 さらに毎年、国は東京都から「他の自治体との間で税収に偏りがある」との理由で、都民の皆様から頂いている税収の一部を国に追加で取られ続けています。
 確かに、都道府県の間では住民一人当たりの税収には差が生じています。しかし、その税収差は「地方交付税」の制度で既に調整が図られています。その結果、都の水準は全国平均と同水準になっています。以下の都作成の資料をご参照ください。
 なお、東京都は都道府県の中で唯一交付金を受け取っていない自治体であり、大阪府も愛知県も国から交付金を受け取っています。

都税収奪調整スライド

 このように、自治体・地域間の公平を図るための調整が既に実施済みであるにもかかわらず、国は「追加で」都からお金を取り続けているのです。これは「偏在是正措置」と言われており、その額は、毎年の税収によって異なりますが令和2年度では年間8386億円と見込まれています(コロナの影響を勘案する前の都の算出)。

 東京都の現在の人口は約1400万人であるため、単純に割り算をすると都民一人当たり年間約6万円が、「地域間の公平を図る調整」(地方交付税)に更に「追加で」お金を取られている(偏在是正措置)ことになります。
 都は新型コロナ対策で実に総額約1兆7000億円の対策を展開しています。都の財政調整基金もコロナ前の9348億円から1741億円(令和2年度末見込)に減少しています。仮に偏在是正措置により追加で国にお金を取られていなければ、8386億円が都の手元に残ることになるため、財政調整基金もコロナ前の金額水準に戻ることになります(コロナの影響を勘案する前の都の算出に拠りますが)。
 繰り返しとなりますが、偏在是正措置により国に追加で取られている都民一人当たり年間約6万円のお金は、本来であれば都が新型コロナ対策など独自に都民サービス向上のために使えるはずであったお金であり、国は都民一人ひとりに6万円を還元すべきとすら言えます。

(3) 国から都へのコロナ交付金は非常に少ない

 話はこれだけでは終わりません。国は都から追加でお金を取るだけにとどまらず、新型コロナ対策として各自治体に交付する金額について、都への金額を著しく低額にしているのです。
 国は総額3兆円の「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」を設けています。これは「新型コロナ対策」の目的で自治体に交付されるものですので、本来は、全国で最も感染者が多い東京都に手厚く配分されるべきなのですが、以下の通り、都には驚くほど低い金額しか配分されていません。
 国のコロナ交付金の3兆円とは、都道府県と基礎自治体(区市町村)の双方の総額であり、これまでの都道府県全体への交付金額合計は約1兆2304億円となります。そのうち東京都への交付総額は572億円であり全体のわずか約4.6%にとどまります
これはどれだけ少ない金額なのでしょうか。人口数で考えると、都の人口は全国の約11%を占めており、人口比率からすれば総額の11%である約1350億円の交付を受けるべきとなります。
さらに、感染者数で考えると、日々変動はありますが都はおおむね全国の約30%を占めており、感染者比率からすれば総額の30%である約3690億円の交付を受けるべきとなります。
繰り返しですが、この交付金は「新型コロナ対策」を目的とした交付金であり、最も新型コロナの感染者が多い東京都に手厚く交付されるのが合理的ではないでしょうか。

(4) あるべき地方創生は権限・財源の国からの移譲

 このように、国は東京都から追加でお金を奪っておきながら、コロナ対策の交付金では都への交付額を著しく低くするという、信じられない対応を講じています。残念ながら、これらは国の所管事項であり、都知事も都議会議員も関与・決定できません。このような場面こそ、東京都選出の国会議員の方々のご尽力を期待したいところなのですが、そのような動きは国会の方から聞こえてきません。
 私はあるべき地方創生とは、地方自治体が、それぞれの強みを活かすための独自の創意工夫を講じることで達成されると考えており、国はそのための環境整備に徹するべきと考えています。そのためには、裏付けとなる財源をセットにした、国からの権限の移譲が必要不可欠です。
 「東京一極集中」が課題と指摘されますが、国は、これまでの「地方創生」のやり方で本当に地方が創生されてきたのか、また、なぜ旗振り役である国の政府機能の、東京からの移転が進まないのか、自らを省みる必要があるのではないでしょうか。


 長文をお読みいただきありがとうございました。次回は続きについて書きたいと思います。

東京都議会議員 山田ひろし

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