漆黒アパートと大家さんとの思い出 分裂した自転車編(後編)

翌日、クソランから帰った私はポストの中に茶封筒が入っていることに気がついた。
開けてみると、中には大家さんからの手紙が入っていた。
その手紙には、今回の一連の謎についての真相が書かれていた…!

「益々ご健勝の事と存じます。」
またいつものビジネス挨拶からのスタートだ。

「昨日はありがとうございました。
あれから私なりに調べてみて、真実が分かりましたので手紙でお知らせいたします。

ヤマダ様の自転車がニ台に増えていた件ですが、もう一台の自転車は、最近ヤマダ様のアパートの向かいのアパートに入居された方の物でした。

また、その方の自転車がボロボロの方だったようです。つまり、ヤマダ様の自転車は綺麗な方でした。

というのも、その方にヤマダ様の自転車の鍵を開けてもらったところ、なんと鍵が開いたのです。
二台の同じ種類の自転車の鍵もまた、同じだったのです。」

こう書かれていた。

私は、この事件が起きるちょっと前に「探偵ナイトスクープ」という番組で
「自分の自転車が、最近なんか違和感があるので本当に自分の自転車なのか調べて欲しい」
という依頼の回を見ていた。

結果は、全く同じ自転車を乗っている人が同じ駐輪場を使っていて、鍵が同じだからお互い間違えて乗っていた。というものだった。
その時に探偵が、自転車が同じで鍵も同じ確立は何万分の1です!(正確な数字は忘れたが)とか言っていたので、あり得ない事だと思い考えも及ばなかったのだ。

私は、新品よりもボロボロの自転車に鍵をさすという、己の謙虚さを嘆いた。
…しかし、半年乗っている自転車でもボロボロの自転車の隣にあれば新品に見えるものなんだなぁ。

今回の事件について結論を言うと、
「とある休日に、他人の自転車を勝手に整備した。」
というだけの話だ。

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