塗料の構造:カチオン系、アニオン系と塗料中の状態

カチオン系塗料

 樹脂の側鎖または末端にアミノ基(R-NR’R'')を持って樹脂をカチオン樹脂と呼ぶ。電着塗料ではエポキシ樹脂やアクリル樹脂を使用している。
 樹脂だけでは水に溶けないために、有機酸(酢酸、乳酸等)で中和することでイオン性を持たせて、水溶性を出している。
 中和して水溶性を持ったカチオン樹脂と疎水性の架橋剤を混合し、水を入れて転相乳化することでエマルションにすることで使用している。


 また、この絵には載せていないが、アミノ基が多い分子や分子量が低い分子などが存在しており、そのような樹脂はエマルションの一部にならずに完全に水に溶けてしまう。このような成分は、電気伝導やクーロン効率、つき回り性等に大きな影響を与えるため、塗料管理を行っていく上で意識している必要がある。

 その他の成分として、溶剤(通常はブチルセロソルブ、エチルヘキシルセロソルブなど)が数パーセント含まれる
 溶剤は親水性度合により、水相/エマルション内部に分かれて存在する
ブチルセロソルブは水と混和するため、水相側にも多く存在し(溶剤としての効きが悪い)が、エチルヘキシルセロソルブはほとんど水に溶解しないために、エマルション中に多く存在する(溶剤として効きが強い)。
 塗料メーカーから溶剤の開示をされていないこともあるが、SDSを見ることで溶剤の中身の判別が可能である

アニオン系塗料

 アニオン系塗料は樹脂の側鎖または末端にカルボキシル基(R-COOH)を持っている。樹脂だけでは水に溶けないために、アミンで中和することでイオン性を持たせて、水に溶解するようにしている。中和した樹脂に水を入れて、エマルションにすることで使用している。
 樹脂はカチオン系塗料のアミン(NR2)と酸(R-COO)を入れ替えたものであるために図は省略する


まとめ:塗料の構造

 エマルション中
  主に中和された樹脂、架橋剤で構成されている。溶剤も入っている
 水の中
  親水基の多い樹脂、低分子の樹脂が溶けている。溶剤も入っている

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