映画「ルックバック」〜原作に忠実であること〜

はじめに

先日、映画「ルックバック」を観た。
「ルックバック」は発表当時、リアルタイムで読んでおり、かなりの衝撃を受けたのを覚えている。
それが映画化されることを知ったのは大学の元担当教員との会話からだった。

タツキ(敬称略)にはお世話になっている。
「チェンソーマン」は私にとって人生終了を思いとどめるブレーキの1つになっているからだ。(最後どうなるか知りたいじゃん)
あと東山コベニを創造してくれたことへの激烈な感謝の念がある。
また、そもそも映画そのものが好きなので観てきた。

本稿で何を語るか

どうでもいい話はおいておいて、
本稿では映画「ルックバック」と原作である漫画版「ルックバック」との比較を主軸において、漫画原作の映像化に対する一考察を述べる。と言っても高尚な内容ではない。気楽に読んで欲しい。
(もう少し全体的な感想は別途記事を書く)

物語の考察はしない。
この作品に関しては物語考察自体がナンセンスだ。
(例えばこの作品において「何故起こりえない「風」が吹くのか」など)
それを了承した上で読んで欲しい。
物語考察が見たいなら他をあたれ。

また、元担当教員から教えてもらうまで全く知らなかったのだが、初出版からコミック化に至るまで3回ほど改訂が行なわれているようである。
初出版で表現の問題があり、物議を醸したため云々という理由らしい。つまらない理由だ。
が、内容そのものには殆ど影響がないように見受けられたのでその件についても詳しい言及は行なわない。
知りてぇやつは勝手にググれ。

印象

まずは個人的な映画の評価だが、
もう1回観ても良いかな、円盤が出ても買わないかもなぁという感想だ。

全体的に面白くはあったがそれは原作ありきの面白さであるように感じた。
つまり、少なくとも私は映像化したことによる面白さはあまり感じなかったのである。

しかし、1度は観るべきだ。

これの理由は後述する。

原作に忠実であること


漫画原作だけではなく様々な作品が映像化するにあたって、原作に忠実であることは多くのヲタクが望んでいることであろう。
私も好きな作品が映像化する際には原作に忠実であって欲しいと願うタイプだ。
アニオリやキャラ改変などは失敗することは多い印象であるし、そういった事故が起きるとヲタクが直ぐにお気持ち表明をしだす。
さらに昨今の漫画原作の実写化なんていうのはあまりに“原作厨型”のヲタクに優しくない。

この映画「ルックバック」は原作のストーリーから殆ど改変はなく、原作に忠実な作品だったと思う。
しかし、先述したように面白さはさほど感じなかった。

理由はあまりにも、恐ろしいほど、原作に忠実すぎたためだ。

ここで私が表現する映画「ルックバック」は原作に忠実すぎた、とは具体的にどのような点か。それは、

原作である漫画版のカメラワークすら忠実に表現した

という点だ。

勿論、カメラワークは全く変わっていない訳では無い。
そして、原作には無い演出・シーン(と言ってもそれらはストーリーには影響しない)も勿論存在する。

ただ、キャラクターデザインやストーリーだけでなく、原作漫画のカメラワークまで忠実に再現した映画は初めて見た。
これはあまりに衝撃的であり、そして恐怖すら感じた。制作陣のこだわり、否、執念だと思った。

然しながら私が思うことは、漫画と映像ではやはりその特性が違うのである。
「チェンソーマン」を読んでいて、映像的なカメラワークだなと感じるシーンは多々ある。
(もちろん作者のタツキが映画好きであるという点も知っている、知識マウントをとったら殺す)

アニメ「チェンソーマン」もやはり原作(か、もしくは作者)を尊重してか映画的な視点移動が組み込まれていた。
が、映画「ルックバック」のように病的なまでに原作に忠実であろうとする執着心は感じない。

原作である漫画が映像的・映画的なカメラワークを行なっていたとしても、どうしても漫画の表現にならざるを得ない。
完璧に映像的な漫画など描けないと思う。
映像化もまた漫画的な表現は難しいだろうと思っていた。
映画「ルックバック」を観るまでは。

なるほどカメラワークまで同じにすればここまで原作に忠実な映像作品ができるのか。驚きと共に感じたのは、物足りなさだ。
漫画のカメラワークをそのまま映像化したために逆に映像化の利点が損なわれている気がしたのだ。
勿論、映像化ならではのシーンもある。

空から藤野の部屋まで近づいていく冒頭。
藤野の四コマ漫画のアニメ化。
京本の部屋へ四コマ漫画が吸い込まれていくシーン。
そして雨の中、藤野が家に帰宅するシーン。

など、アニメーションだからこそ表現できたシーンがあった。
しかし、それ以上に原作に忠実なシーンが多かったために、私にはそれらのシーンにすら違和感を感じたのである。

おわりに

先述した、1度は観るべきだという理由は以下の通りである。

原作に忠実すぎることは映像化した作品の面白さを損なうことにも繋がるのだということを知ることができるから。

この1点である。この点においてあまりにも資料としての価値がある。

映画好き、また映像化するにあたって原作に忠実であってほしいというタイプのヲタクは観た方が良いだろう。

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