神々の遊ぶ庭 -山の天使 エゾシマリス-
神々の遊ぶ庭、大雪山。大雪山のいろんな所で駆け回る彼らを見つめます。
神々の遊ぶ庭の第4編では、大雪山(=カムイミンタラ)で出会ったエゾシマリスを紹介します。
エゾシマリスはアイヌ語で”ルウオプ(道が入っているもの)”や”カシイキリクス(その背面に縞が通っているもの)”と呼ばれています。神としての名前は見つけられませんでした。
エゾシマリスは、見た目はポピュラーですが、北海道だけに暮らしている種です。冬は冬眠するため夏期しか会えません。大雪山では、登山口から頂上のいろんなところで出会います。突然出てきてはすぐに駆けていきます。
クマ鈴を鳴らしていても近くに出てくるため、音はあまり気にしないようです。臭いもあまり気にしていないように思います。一方で動きに対する警戒心はとても強いです。
彼らの存在に早く気づき、じっとしていればすぐそばまで来ることもある愛らしい山の住人です。
01 春
7月上旬の頂上直下の尾根は、季節で言えば初春。ハイマツや草原はまだ冬枯れが目立ちますが、よく見ると新芽が出ています。
芽吹いたばかりのウラシマツツジの新葉の上に座るのは、冬眠を終えたばかりのエゾシマリスです。前年の秋に隠していた木の実でも掘り起こして食べているのかもしれないですね。
山頂から少し下った斜面では、キバナシャクナゲが満開を迎えていました。
その手前の大きな岩場をスルスルと素早く駆け回るエゾシマリス。遠くから目だけで追いかけていると岩の先端に登り静止しました。しばらくあたりを伺い、安全が確認できたのか毛繕いをはじめます。
時刻は16時。少し傾いた陽射しで満開のキバナシャクナゲの白花が輝きます。静かな時間が流れます。
02 夏
岩に座って休憩していると、目の前に幼いエゾシマリスが来ました。落ち着かない様子で岩の周りをウロウロしています。そのかわいらしい姿を見ていると母リスが現れました。ここは待ち合わせの場所だったようです。
頬を食料で膨らませた母リスが仔リスの首元に優しく触れます。ただ仔リスは母リスの頬いっぱいのごちそうが気になるようです。
満開のエゾノツガザクラの群落を跳ね回り、食べ頃(吸い頃)の花の前で食事をしていました。
エゾノツガザクラの花びらがきれいに切り取られ、中身が丸見えになっている花をたまに見かけますが、彼らの仕業だったようです。この時期のごちそうをしばらく堪能し、草原の斜面を登って行きました。
03 秋
早いときは9月中旬には雪が降りはじめる頂上付近では、8月中旬を過ぎると冬眠のための食料集めに大忙しです。
ちょうど実りだした木の実や草の種を頬いっぱいに詰めては巣穴に戻ります。
食料集めの合間でも、見晴らしのよい岩に登って、あたりを見回すことはかかしません。その背後の景色は秋色に染まりはじめています。
頂上付近では、ウラシマツツジが真っ赤に染まりすでに秋の気配です。
濃いガスの中でも、実りを求めて駆け回っていました。
10月の頂上付近の草原は、もはや荒野です。そんな中でも岩場を駆け回っていました。いつものように見晴らしのよい場所で立ち止まり、様子を伺います。風もなく、静かな時間が過ぎていきます。
04 冬
驚いたことに雪に覆われた尾根を駆け回っていました。冬眠するエゾシマリスにとっては、慣れない雪に戸惑っているようです。岩の上に登りじっと遠くを見つめますが、つい数日前までは草原だった斜面は、見つかりません。
まだ、冬眠の準備が十分ではないこの時期、雪が溶けることを願うのみです。
別の場所では、積雪を免れた岩陰のわずかな草地を求めて駆け回っていました。食料を見つけては頬に詰め、見通しのよい岩に登っては辺りを見回しながら頬の中を整理します。
ぷっくりした体を見ると、この子に限ってはもう冬眠の準備は万端のようです。
≪編集後記≫
大雪山に登るたびに彼らに会うため、動きのパターンがなんとなくわかってきました。基本的には一直線に進むため、遠くに見つけたときは、少し動きを観察して、彼らが岩陰などに入っている間に先回りすることで近づけることがあります。
そして、近づいたら驚かさないように最小限の動きに留めます。ただ、目が合い、首を傾げられるとばれたかなとヒヤヒヤしてしまいます。
会う頻度が多いだけに写真もたくさん撮っています。この記事を書く際に2018年から2023年までに撮影した写真から選びましたが、結果的に2019年の写真ばかりになってしまいました。
2019年は、花を食べるシーンや紅葉、さらには雪のシーンなど初めて見る貴重な場面が多くありました。今度はどんなシーンに会えるのか楽しみにして登りたいです。