富岡の風

福島県の浜通り

磯の匂いがまったくしない 柔らかくて冷たい海風

この風によって 電車がよく止まる

「今日の風は大丈夫だね」

「これよりさらに強かったら止まってたね」

「夜にこの風が吹いていたら富岡には着けなかったね」

何があろうと 常に富岡にふぶく風

身体感覚にのみ残る 富岡に住んでいる証 住んでいた証

今の私たちと 過去をつなぐ共通の感覚

私は1カ月の滞在で、この風に対する感覚を持ち帰ることができるのだろうか

ここに来なければ、滞在しなければ分かるはずもないこの感覚を

私だけにしか分からないこの感覚が、富岡に滞在していた証なのだ

どうか どうか 見えてほしい 証明させてほしい

でも 見えなくていい 証明なんてする必要もない 

だって私と富岡町だけの 秘密だから。



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