山を発掘する  01

この地には山がない。
私が、Viborg Kunsthalのレジデンシープログラムに参加していた時のことだ。デンマークという国には山がない。ハイウェイを走って遠出しても、どこまでも緩やかな土地の起伏である。
どこを目指すのか、道の続く限り移動しては僅かな看板を頼りにするまで。人工物も景観条例が厳しいのかほとんどない。遠くに山があることをこんなにも頼りにしていたのかと知る。

最初の頃は身体が不安定だとか思っていたが、そのうちに慣れ、もう山がなくても気にもしなくなった、とある明け方。
山がここにあると誰かが言うのを聞いた。
いつもの賑やかな鳥の声に目覚め、ふと側を見ると、そこに山はあった。
懐かしく思いながら、その山を眺めているうちに、淡く何処かへと消えてしまった。

この地にも、かつて山があったかもしれない。

人間が森を伐採したことで水の流れが変わり、大きな湖が徐々に出現し、その湖が拡大することで町の土地は分断された。
そんな、この地の歴史から想像してみる。
日々サイクリングや散歩で人々が周囲を巡っているこの湖は
もしかしたら立場を見かえれば回ってるのは湖のほうかもしれない。

2015年3月
山口







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