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僕らの松本滞在記2020

毎年5月の松本は、市街地のさまざまな場所がギャラリーと化し、工芸関連の展示が開催される。この「工芸の五月」の中でも、ひときわ印象的な風景がある。それが「池上喫水社」(写真は2019年開催の様子)。あの蔵に入り、暗がりに佇む。眼がなれてくるに従って見えてくる空間の全貌。眼を閉じると、ポツンと響き、広がる、水の音。しばらく、そこから動けなくなる。ベンチに腰掛け、いくらでもここに居れる、と思う。実際、長居する。そろそろ行かないと、と思い出し、外に出る。風を感じ、日を受ける。パラソルの影に移る。手渡される水出し珈琲で、喉を潤す(特製のパンナコッタも忘れずに)。あぁ、今年も五月が来たなぁ、と感じる瞬間だ。

その瞬間が、今年は、ない。

寂しくて、寂しくて、たまらない。

だから、あの空間をつくっている〈L PACK.〉のふたりから、この企画の提案をもらったとき「ぜひやろう!」と即答した。あしたからオンラインで彼らが訪ねる松本には、彼らにとって馴染みの顔との「ひさしぶり!」も、これを機に会って話が聴きたいあの人との「はじめまして!」も待っている。企画の設計、ゲストの調整、当日のアシスタントで手伝わせてもらう僕も、各回どんな話が聞けるのか、いまから楽しみで仕方ない。

奇しくも今年の「池上喫水社」の初日を迎えるはずだった、あす 5.27[水]が初回の配信。お相手は、女鳥羽川沿いで果実の旨みとユーモアと哲学をギュッと詰め込んだコンフィチュール店を営む、蒔田友之さん。僕も心から敬愛する、この街の先輩店主のひとりだ。全員よく知った仲だからこその「いつもの話」と「あたらしい話」、どちらも聞けるのではないだろうか。タイミングの合う皆さんは、ぜひ画面を通じて5月の松本の風を感じていただけたら。


LIVE配信 「L PACK.の松本滞在記2020

# 01 _ 蒔田友之
▼ 配信日時|2020.5.27[水]13:00-14:00
▼ 配信方法|YouTube Live → https://youtu.be/sycpfig3igw
▼ ゲスト|蒔田友之[Chez Momo / コンフィチュール職人]

# 02 _ 倉澤聡
▼ 配信日時|2020.5.29[金]13:00-14:00
▼ 配信方法|YouTube Live ※ URLは追ってお知らせします
▼ ゲスト|倉澤聡[都市計画家]

※ 3回目以降の配信日程およびゲストは順次お知らせします

▼ 主催|L PACK. [小田桐奨・中嶋哲矢]
▼ 協力|ZING [吉田朝麻・友野可奈子]
▼ 協力|栞日 [菊地徹]
(以上、敬称略)


そして、この企画、ありがたいことに「工芸の五月」企画室からのお墨付きもいただき、いまのところ6回前後の配信を計画しているが、一連の「訪問」を終えたら〈L PACK.〉のふたりと僕が、それぞれの視点からZINEにしたためて、アナログな「滞在記」もつくる予定。しかも、そのとき、同じくこの5月の松本に毎年通って、松本市美術館で「井戸端プリント」というユニークな工作室を立ち上げてきた、浜松のユニット〈ZING〉が、このコロナ禍にあって否応なく増えた家で過ごす時間を、少しでもクリエイティブなものにしてほしい、という願いを込めて、オンライン販売をはじめた〈ZINE KIT〉を使うことにしている(ちなみに〈ZING〉とは、もうひとつ別のプロジェクトも企てている)。こうやって、ささやかな形に変えてでも、今年も繋がりを保てることが、ただただ嬉しい。

最後になってしまったけれど、以下、今回の企画に寄せる〈L PACK.〉からのメッセージで締め括りたい。

新緑はじける五月の松本。空気が澄み、遠くの山々や優雅に流れる川は偉大で、育まれる食や水の美味しさ、クラフトマンの誠実さ、文化の豊かさなど、何度訪れても新たな驚きをあたえてくれる松本のまちは僕たちL PACK.の心のよりどころです。2009年から11 年続けて通い続けた松本へ、今年はちょっと違った形で訪れてみます。まだ体は現地に移動できないので、オンラインから松本の人たちにセイハロー!普段とはまた違った松本の魅力を味わおうと思います。 毎年顔を合わせている人やなかなか会えない人も、オンラインならむしろ気軽に会える時代。だからこそ、普段だったら世間話だけしちゃって話さないようなものづくりのこだわりや、まだ僕らが知らない松本の魅力を聞いてみたいと思います。題して「 L PACK.の松本滞在記2020」

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