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栞日分室、営業終了。

あす 10.31[日]まで〈栞日分室〉では、4人の作家による企画展「こころの花」を開催しています。先日、この企画展の開催に合わせて、〈栞日分室〉がその2階に入居するテナントハウス〈List〉に、建物全体のリノベーションをしていた当初の計画どおり、〈古道具 燕〉がリオープンして、1階の〈山山食堂〉と合わせ、3テナントが揃った、というご案内をしたばかりにもかかわらず、このようなおしらせとなってしまい、僕の不誠実をお許しください。ギャラリーストア〈栞日分室〉は、今月末をもって、その営業を終了いたします。

理由は、もちろん複数ありますが、端的に云えば、会社全体の経営状況改善に向けた、事業縮小です。〈栞日分室〉は、2019年4月の開設当初から、「これからの日用品を考える」をテーマに掲げ、毎月ことなる企画展を催すスタイルを、場の個性として据えていたため、全国的なコロナ禍に見舞われて以降、集客行為そのものにやりづらさを感じる社会の気分のなかで、効果的な運営方法を見出せず、長らく実質的な休業状態が続いていました。

いま思えば、多くのアーティストやギャラリストのみなさんが実践なさっていたように、オンラインを織り交ぜた展示会の開催や、完全予約制での開廊など、工夫の余地は大いにあったはず。打つ手も打たずに、この末路をたどってしまったことは、ひとえに経営者である僕の怠慢です。

また、〈栞日分室〉には、コロナ禍に陥る以前から(むしろ、開設当初から)、人的にも財的にも、充分な手をかけることが叶わず、展示してくださったみなさんにも、当時、主担当だったスタッフにも、事実上、店番をお願いする格好になって仕舞っていた〈山山食堂〉の店主にも、多大な迷惑をおかけしていました。この場を借りて、お詫びいたします。申し訳ありませんでした。

人員ならびに運営の体制を整え直して再出発するシナリオは、もちろん幾つか構想していましたが、そのために必要な体力が、このコロナ禍で会社全体からじわじわと削がれ、そのチャンスは遠のき、いよいよリミットを迎えてしまいました。〈List〉2階テナントの後継をオーナーに提案することすらできないまま、退散する運びとなり、面目次第もありません。最後まで判断を保留したため、このタイミングでの発表になってしまったことも、併せてお詫びいたします。

来月以降、当面は、〈List〉全体のオーナー〈リスと設計室〉が直営するレンタルスペースとして、使われることが決まっています。僕からオーナーにつなぐことも喜んでいたしますので、もしスペース利用やテナント入居に関心を寄せてくださることがあれば、いつでも気兼ねなくお声かけください。

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〈栞日分室〉のイメージは、2016年夏に〈栞日〉が現店舗で移転リニューアルオープンしてまだ日も浅い頃、2F企画展示室を「本屋のギャラリー」として、ベースに書籍がある平面作品の表現の場にしよう、と決めたとき、ゆるやかに生まれ始めていました。

そもそも2F企画展示室に対してこの方針を定めたのは、ここ松本が、ご承知のとおり「クラフトの街」と称され、それがひとつの観光資源と化して久しいゆえ、手仕事を扱うショップやギャラリーは街場に数多ある一方で、平面表現と触れることのできる展示空間が極端に少なく、そのバランスに違和感でもあり、可能性を感じていたからです。

同時に、この街が「クラフトの街」と評されるならば、ただその冠に便乗してビジネスを展開するのではなく、この街に暮らす僕らが、それぞれの感性で、自分の相棒と呼びたくなるような日用品(日々もちいる品々)を、主体的に選ぶ行為を普段から実践することの方が、その名に相応しいのではないか、と考えました。

そこで、本店から分かれたところに、これまでの「クラフト」や「日用品」の定義や価値を揺さぶるような企画展を開催できる空間を、と望み、巡ってきたタイミングに乗じて、具現化させた場が〈栞日分室〉でした。

今回、2年半という短い期間で、その場を閉じることになり、心残りも大いにあります。一方、上で述べたこの街の「クラフト」界隈に対する課題意識は、2年半が経ったいまも、変わらず僕の胸に在ります。これで〈栞日分室〉は幕を下ろしますが、再び〈栞日〉で、また、それとは異なる何らかの方法で、僕なりのアプローチを続けていけたら、と願っています。

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末筆になりましたが、これまで〈栞日分室〉で展示をしてくださったみなさん、〈栞日分室〉を訪ねてくださったみなさん、〈栞日分室〉の運営を支えてくださったみなさん、本当に、ありがとうございました。

特に、オープン1年目に、鑑賞と実用の狭間を心地よく漂うような、絶妙な塩梅の企画を幾つも打ち出してくれた、当時スタッフの本柳寛子さんには、深く感謝しています。ひろ子ちゃん、ありがとう。

最後の最後。〈栞日分室〉のロゴを考案してくださった、ウチダゴウさん。あのロゴ、永く使っていけず、ごめんなさい。ゴウさんが開業以来〈栞日〉に贈ってくださった歴代ロゴのなかで、実は一番好きでした。

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