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一輪と一冊

こんにちは。きょう4月23日は「サン・ジョルディの日」。スペイン・カタルーニャ地方に伝わる記念日で、親しい人に花や本を贈る日です。

この「サン・ジョルディの日」に着目して、2週間前から〈花屋 ことの葉〉と栞日が展開してきた相互POP-UP企画「一輪と一冊」も、いよいよ最終週。今日から日曜までの4日間は、栞日店内に〈花屋 ことの葉〉の出張店舗がオープンします。

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出張〈花屋 ことの葉〉in 栞日
→ 4.23[木]24[金]25[土]26[日]= 毎日11:00-19:00
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「来年のサン・ジョルディには、ことの葉と栞日で一緒に何かやりましょ」。こころが声をかけてくれたのは昨秋のこと。このとき既に彼女は、毎週末の栞日のシフトからは外れていて、信州大の四年生としての卒論執筆と、翌春の入社が内定していた〈花屋 ことの葉〉での仕事に精を出していた。一方、栞日でも、マンスリーレター「a piece of」の表紙の写真と、企画展の記録写真だけは、変わらず担当してもらっていて、この日も確か、その撮影関連の打合せで栞日に立ち寄ってくれた、と記憶している。

「社長があの店内をギャラリーのように使いたい、ってイメージがあるみたいで、その企画を主に私に立ててほしいって」。どうしよう、という顔はしているものの、楽しそうでもある。「だから、とりあえず、来年のサン・ジョルディには、ことの葉と栞日で一緒に何かやりましょ」と、こころは云った。栞日ではここ数年「サン・ジョルディの日」に合わせて、選書チーム〈book pick orchestra〉の企画「春の文庫本葉書フェア」(今年は残念ながら先方の意向で休止)を開催していて、僕もこころもその対応を通じて、この記念日の存在は知っていた。それから、もちろん(ここで綴り出すと長くなるから割愛するが)、僕らが愛する植物図鑑『微花 kasuka』が「サン・ジョルディの日」に創刊していることも、大きい。

以来、一緒に企画を練って、お互いの店でお互いの商品を展開する、という方向性が定まり、具体的な運営オペレーションも組んで、当日を迎えた。まさかこんな状況下で迎えることになるとは、互いに露ほども思わなかったけれど、そもそも僕らは「キャンペーンをやりたかった」わけではなく、その企画を通じて「花や本を贈り合う習慣を、この街の『ふだん』にしたかった」わけなので、初回開催のインパクトなどは、もともと求めていなかった。互いの店さえ開いているなら「ふつう」にやろう、とどちらからともなく自然に決まった。淡々と、粛々と、それこそ僕らの平熱で。

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こころが栞日のスタッフに加わったのは、2017年の秋で、当時は大学二年生だった。もともと栞日によく通ってくれていて、僕もよく覚えていたけれど、直接のきっかけは、同年の初夏に開催された「美術 × 音楽 × 市場」の祝祭「あそびなおす」の運営スタッフを手伝ってくれたこと。閉園した旧幸町保育園を会場に開催したこのイベントは、現代アートの専門ギャラリー〈awai art center〉の茂原奈保子さんと、イベント&バースペース〈Give me little more.〉の新美正城くんが、僕のことも誘ってくれて、三人で企画したもので、奈保子さんも新美くんも、こころと同じ信州大の出身で、特に奈保子さんが、こころと同じ金井ゼミ(人文学部 芸術コミュニケーション/金井直教授)だったから、こころが「あそびなおす」を手伝ってくれたことは、いわば必然だった。その秋に栞日を卒業するスタッフが何人かいて「どうしようかな」という話を奈保子さんにしたとき「こころちゃん、いいんじゃないですか」と返されて「僕もそう思ってた」と云って笑った。

あれから2年半の間、店の週末営業はもちろんのこと、得意の写真で「a piece of」をはじめ、大いに助けてもらった。昨年の年明けからは「花屋で働きたい」という夢を叶えて〈花屋 ことの葉〉でも働きはじめ、そのあたりから急速に、しっかり社会人になっていく彼女のことを、とても頼もしく、そしてちょっぴり寂しく、眺めていた。「一輪と一冊」は、この春、大学も栞日も卒業して、〈花屋 ことの葉〉で社会人のスタートを切ったこころの、初めての企画。どうか、温かく、最後まで見守っていただけたら。

こころ、改めて卒業おめでとう。「一輪と一冊」、ありがとう。

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