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ダブルローカル?

(つづき)来週末 6.21[日]に迎える、「コトトバ」節目の10回目。そのゲスト、デザインユニット〈gift_〉のふたり、後藤寿和さん・池田史子さんに、僕を引き合わせてくれたのも、タッキーこと瀧内貫さんだった(後藤さんは「コトトバ」という企画名の名付け親でもある)。

東京・清澄白河のデザイン事務所兼イベントスペース兼カフェ〈gift_lab GARAGE〉と、もうひとつ、2012年から新潟・十日町で営む宿兼カフェ〈山ノ家〉を、どちらも大切な活動拠点として、仕事と生活を展開する後藤さん・池田さんは、その暮らしのスタイルに自ら「ダブルローカル」と名付け、「ダブルローカルとは何か?」と自問する旅を続けている。

ふたりが〈山ノ家〉を始めるきっかけにもなった「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」のプログラムの一環として、2015年開催時、その年から新たな拠点に加わった旧奴奈川小「奴奈川キャンパス」で、連続トーク企画「地域×カフェ×つくる」が行われた。当時〈gift_〉のふたりが企画運営した「家庭科」の「授業」のひとつだ。このコーディネートを手伝っていたのがタッキーで、僕のことをトークゲストのひとりとして〈gift_〉に推薦してくれた。栞日が2周年を迎えて間もない2015年の夏、僕はタッキーに連れられて越後妻有を訪ね、後藤さん・池田さんと出会い、〈山ノ家〉に泊めさせてもらった。

その3年後、「あの話の続きをしよう」とタッキーから声がかかった。今度の会場は、清澄白河〈gift_lab GARAGE〉。訊くと、続編を記録して1冊の本に仕上げる、という。かくして、2018年の春、僕は東京にふたりを訪ね、「あれから3年」の話をした。越後妻有のときは、松本の街の魅力や可能性については語れたが、それらがなぜ生じているのか、という理由や背景については話せなかった。店を始めて2年間では、その域まで考察を深めていなかったし、その考察に必要な材料を手に入れる機会もまだまだ不足していた。それから3年、現地に暮らし、現場に立って、朧げながらも見えてきたもの(松本という城下町の歴史、街道を通じて交流があった近隣諸国との関係、山国かつ盆地という地理的特性や気候風土、それらから育まれた手仕事や文化、町人気質、その総体としての街の個性など)が確かにあって、清澄白河ではそのあたり、つまり越後妻有から松本に持ち帰った「宿題」に対する僕なりの(その時点での)「解答」を、3年越しでふたりに伝えることができたと思っている。

さらに翌2019年の夏、僕が主宰するブックフェス「ALPS BOOK CAMP」に、今度はふたりが出向いてくれた。もちろん、呼んだのはタッキーだ。2017年からタッキーには「ALPS BOOK CAMP」で開催するトークイベントのコーディネートに協力してもらっていて、昨年は「〈gift_〉とつくってきた本がいよいよ佳境だから、そのエピローグを公開収録したい」というリクエストを受け、そのとおり実現してもらった。

対話集ダブルローカル - 複数の視点・なりわい・場をもつこと(木楽舎)は、こうして幾つものプロセスを経て、ついにこの春リリースを迎えた1冊だ。いまも続いていて、この先も続いていくであろう、〈gift_〉の「ダブルローカル」を探る旅の現在地を、複数の対話の中で発せられた言葉の重なりから炙り出す、そんな実験にも似た貴重な資料ともいえる。

そして、銘々その本を携えての今週末、「コトトバ」だ。タッキーと〈gift_〉の間に、今度はどのような対話が生まれるのか、楽しみでならない。耳をそばだてて聴くとしよう。

その10回目を目前に控えた、6.17[水]には、「# 9.5」と冠して「コトトバ」運営メンバーによる公開会議「コトトマ」がライブ配信される。「コトトバ」と「コトトバ」のあいだ、ということで「コトトマ」と命名したのはタッキーだ。アシスタントのエリーこと草野エリさんと、タッキーと僕の3人で、過去9回を振り返り、節目の10回目を迎えるにあたって、11回目以降のことも考える。楽屋裏で繰り広げられる番組スタッフの雑談を、せっかくだからオープンにして、リスナーからの声も聴こう、という試みだ。僕は、ひとつ前の投稿で綴ったような、「コトトバ」そのものや、「コトトバ」を通じて見えてきた景色に対して感じている、幾つかの「希望」や「期待」についても、話ができたら、と思っている。

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