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ふつうの日記 2021.09.20『内臓アパート管理人』

・食べ過ぎ

 ご飯を食べ過ぎて苦しくなってしまった。幸せな苦しみではあるけれど、苦しいものは苦しい。おいしそうなご飯に喜びを求めてたくさん食べたのに、結果として苦しめられてしまうなんて釈然としない。
 自分の体と相談して、という言い方がよくある。これ、実際にやらせてほしい。自分の胃に直接「あとどのくらいなら食べてもいいですか?」と伺いを立て、「あー…白米換算だとあと1.5杯くらいですかね」とか答えてもらいたい。
 これはもう何年も前から考えていることなんだけれど、人に話すと大抵「気持ち悪くない?」と言われてしまう。たしかに気持ち悪い側面はあるかもしれないが、それ以上の多大なメリットに目を向けてもらいたいところだ。内臓と話すことができたら、体調管理はぐっと楽になるに違いない。体内で報連相を徹底させれば、内臓のほうから
「胃です。昨夜からやや荒れています」
「こちら膀胱!あと2分ほどで限界であります!」
「肝臓ッスけどぉ、いい加減ヤバイッスよぉ」
「大腸……水分過多でござんす……」
 などと適宜報告してくれるはずだ。私たちはただ彼らの声を聞いて、その情報をもとにとるべき行動を決めればいい。何か病気になったときでも「こ、こちら腎臓!さっきから何か……何かが……ひっ……いっいま、こっちを見た……!」などと怯えた声が聞こえれば、自覚症状のないうちから病院にかかることができる。そしてお医者さんと内臓たちとで直接話をしてもらえれば、問診でどう伝えたらいいのかと頭を悩ませる必要もなくなるじゃないか。人体はいわば一軒のアパート。私たちはその管理人として、彼らが快適に過ごすお手伝いをできればいい。
 しかし問題は、意思を持った内臓同士が喧嘩する可能性があることだ。胃と小腸が
「胃先輩ってぇ、なんかちょっと暗いですよねww消化楽しめてるんすか?ww」
「小腸くんは楽しみすぎていて、ちょっと仕事が雑なんじゃないですか?」
「いや、消化とか楽しんでナンボなんでwwそんなカリカリしてるとヤバイですよwwあ、カリカリじゃなくてキリキリかww胃だからww」
「はぁ?」
「うわめっちゃ胃液ゴポゴポ言ってるしwwww胃散案件乙wwww」
 などと始めてしまっては私の体が危うい。アパート内の内臓関係が常に良好に保たれるよう、定期的なレクリエーションで絆を深めていくことが重要かもしれない。臓器たちが興奮しすぎないよう、ドライフラワーのアクセサリー作りなどが好ましいだろう。内臓アパート管理人、腕の見せ所だ。


・終了時間

 「◯◯:00~」という表記が世界で一番困る。終了時間を教えてくれないと予定もガタガタになるし、出るやる気も出なくなるというものだ。たぶん私がおばあさんになっても、生まれ変わってもこの表記には困らされるのだと思う。どうにかしてくれませんか。


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