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ふつうの日記 2021.09.06『ガムの青春ひとり道』

・ガム

 久しぶりにガムを噛んだ。クロレッツ。ミント味が爽やかで美味しかった。こんなに美味しいのにどうして飲み込めないんだろう、と思った。飲み込んで消化できないのが惜しい。
 ガムは不思議なやつだ。食べ物のようだが食べることはできず、かといって食べ物でないとも言えない。他の食べ物とちょっと一線を引いている雰囲気もある。具体的にはこうだ。
 クッキーとプリンがおしゃべりをしているその後ろを、ガムはクールに通り過ぎる。クッキーとプリンはガムを振り返って、「ガムくんってかっこいいよねー!」とまた盛り上がる。
 休み時間、ポテチがガムをサッカーに誘う。ガムはつけていたイヤホンを外して、「俺はいい」と断る。ポテチは校庭でブラックサンダーと落ち合い、「やっぱガム来ねえわ」「えーあいつマジ付き合い悪ぃな」と話す。
 今度はフリスクがガムに声をかける。ガムはフリスクにだけは笑顔を見せるが、馴れ合いはしない。「ガム先輩、今日うちの部に助っ人来てくださいよ!」とフリスクは懐いている様子だが、「悪い、今日帰り寄るとこあっから」とガムはこれも断る。
 その日の帰り道、ガムは近くの女子高の前で立ち止まる。お洒落な門から出てきたのは歯磨き粉だ。歯磨き粉は制服のスカートを揺らしながら、「今日も迎えに来てくれたのね。ありがとう」と微笑む。しかしガムは目も合わせずに、「別に。親に言われてるだけだから」と歩き出してしまう。そんなガムの秘めた優しさを歯磨き粉は知っているけれど、これ以上踏み込みたくないとも感じている。
 ガム。冷静と愛情の狭間。食べ物と非食べ物の狭間。孤独な狼。無愛想な銀紙に包まれて、彼は今日もひとり、眠りにつく。


・ぬいぐるみ

 ぬいぐるみは可愛いけれど、可愛すぎてどこに置いておいても申し訳なく思えてしまう。自分の足で歩いて、自分にとって一番居心地の良い場所を見つけてほしい。自己責任で。


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