夢の7

へそピとか、空いてたりしないかな。

なんか軽いトレーニングとかしてるらしいし、腹筋割れてたりして。

身長あるんだからもっと運動したらいいのに。でも柄じゃないか。へなちょこじゃないとあの人っぽくないもんね。…はだか、かぁ。

なんて、少し身体が火照る。明日、楽しみだなぁ、とか。


翌日。ポップコーンとポテトチップス、申し訳程度のチョコ菓子をお皿に。もう少し彩りがないかと棚を漁っていると、

ぴーんぽーん

はいはーい

ドアを開けると見知ったメガネが立っていた。待ちに待った客人は、「どうも」とかなんとか言いながらぎこちない素振りで靴を揃えた。

先、ソファ座ってて。

彼をリビングに通して、用意しておいたお菓子を持っていく。

ごめん、あんまり可愛くないんだけど。

「え?ああまあどうせ無くなるものだし。」

…ちょっとは女心ってやつを分かってくれてもいいと思う。

ところで、今日はいわゆるおうちデートというやつである。一緒に映画を観ることになっているのだが、心中はそれどころではない。なんせどちらかの部屋にあがって、というのは初めてなのだ。こういうシチュエーションにありがちな、映画なんてそっちのけでイチャイチャ…みたいなものを夢見ないこともない。この際、隣でじっとシャイニングを観ている男がそんなムードにしてくれるわけはない、という事は無視する。

ホテルの廊下って結構怖いなあ、とかそんなことをぽつぽつ話しながら二人で映画に観入る。ポップコーンが半分くらいになった頃、彼の右手がつん、と当たる。

あ、これは。

こちらからも左手を近づけると、今度はぎゅっと握られた。

期待していなかった分だろうか、なんだかすごくドキドキする。

彼の肩に頭を預けてみる。画面では真っ赤な洪水がエレベーターから流れ出てきた。どうしてそうなったのかよく分かっていないのは、映画の作りのせいだろうか、それともうるさく鳴り続ける心臓のせいだろうか。

「あの、」

不意に声をかけられて振り向く。彼の顔は耳先まで紅い。

「…そろそろ」

…うん

頷くと、わたしの肩に手が掛かりソファに押し倒される。

思っていたよりがっちりとした腕。なんだか昨日の妄想みたい。

少し息の荒い彼が、ゆっくりと上着を脱いでいく。この男はこんな時に限って変なTシャツを着ていたりする。締まらないな、わたしたち。

猫のプリントのシャツが床に落ちて、彼の身体が露わになる。

息を呑んだ。


…あいてる。


画面の向こうでドアに斧が振り下ろされる音は、もう二人には聞こえていなかった。

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