見出し画像

山種美術館に行ってきた

恵比寿の山種美術館に行ってきた。

太田記念美術館に行った後、山種美術館に行ってきた。JR恵比寿駅から徒歩15分くらい。坂がきつい。静かな街。

お目当ては、【特別展】没後80年記念 竹内栖鳳 展。

 展覧会のポスターにもなっている、「班猫」にひかれて。太田記念美術館相互割引をやっているということで梯子にちょうど良かった。日本画専門の美術館とのこと。

 私自身はあまり美術に造詣が深いわけでもなく、美術館に行くようになったのもここ2年くらい。もともと絵を見るのは好きで描くのも好き。Twitterで展覧会の情報やポスターを見ていいなと思ったところにとりあえず行ってみるという感じで楽しんでいます。

 今回は展示作品で記憶に残ったものと、同日に鑑賞した浮世絵と日本画を比較して考えたこと、竹内栖鳳のことばについて書く。


記憶に残ったもの

写真を撮れたのが斑猫のみなので他の作品は山種美術館のHPをのぞいてみるか、実物を見て欲しい。今回はとくに実物を見て欲しいと思う。筆致を見るべき。

「斑猫」
 初め、スマホの画面上で目にした時、猫の輪郭がぼやけていて、すごいと思った。ふわふわ感というか空気が存在している感じ。サバトラの白という毛色の猫で日本でよく見られるタイプ。こういう猫を触ったり、近くで見たことがある人はわかるかもしれないが、この毛色は、サバトラの部分は毛足が長く硬い毛が混じる、白の部分はなめらかで艶々とした毛と模様ごとに毛の質がちょっと違う。実物を見て気付いたというか思い至ったが、竹内栖鳳はこの特徴を描き分けている。と思う。よくよくみるとサバトラの部分がより立体的ではないだろうか。
すごい観察。とそれを表現できるのすごい。
今回の展示では、特別に「斑猫」が撮影可能になっていた。

斑猫


「風かおる」
 つばめと柳の葉。構図がすごくいい。余白が効いている。少ない筆数で精緻に描かれた一羽のつばめと陰影のないのっぺりとした色合いの葉の対比というか組み合わせが面白かった。つばめが目立たず際立っている。

「鴨雛」
 おきにいり。家鴨かな。三匹の鴨雛が餌皿の近くにあつまっている。一匹仰向けに転げているのがかわいい。この絵も輪郭がぼやけているようですごい。近くで見ると輪郭線が薄く引かれているが、一歩離れてみると線が消えて、そこに雛が存在しているように感じる。写真とも違う写実さ。

「艸影帖・色紙十二ヶ月」
 十二の色紙に十二ヶ月それぞれのモチーフを描いたもの。二月の雪に倒れた鳥居、六月の蜆、十二月の四十雀が好き。十二ヶ月どれをとっても構図が良い。余白のとりかたがすごすぎる…。とんでもないバランス感覚というか思い切りというか。

「緑池」
 池に浮かんでいる一匹の蛙。もしくは水から上がろうとしているのかもしれない。蛙の半身が水に浸かっている様子が描かれている。水中の蛙の足の筆数が少なすぎないか…すごい…実際に見てくれ…

ほか、竹内栖鳳の弟子や同時期に活躍した画家の作品も展示があった。

竹内栖鳳は教育者としても優れていたらしく、良き師として慕われいたことが窺えるエピソードが作品とともに展示されていた。


浮世絵と比較して考えたこと

まずでかい。でかいし背景の描き込みとか日本画の方がシンプルなのに情報量が多い。浮世絵の方「闇と光展」が作品のサイズがほぼ一定だったのもあって、日本画の方は掛け軸はじめ作品のサイズがかなり大きく感じられた。でかさはまんまパワー。圧倒される。
また日本画は筆圧とか筆の動きが感じられて、なんというか描いた人を間近に感じる…油絵ほどではないが立体的だし。浮世絵はより平面的で分業制だからか画家の濃度が低い感じがする。
色の濃淡の表現の幅の違いだろうか、見る側が感じ取れる空気感というか情報量がちがう感じがしたのがおもしろかった。

竹内栖鳳のことば

 竹内栖鳳のことばがすごくおもしろかった。絵とともに栖鳳のことばが展示されていたのだが、文がとてもわかりやすい。自身の感覚的なものを論理的に説明してくれている。これは教えるの上手いだろうなという感じ、栖鳳は感覚を言葉で表現できる人だったんだろう。
 購入した竹内栖鳳作品集にことばがまとめられているのだが、読んでいるうちに、日本画は論理的で型や法則があるものだということを知った。誰かが明言したものではないが重力や呼吸のように法則をもって存在するような、なんとなくで成り立っているようでそうでないものというようなことを考えた。
 また栖鳳は研究の人で自分が感じたものを表現する、その過程で西洋画東洋画問わず研究し、墨や紙も作ってみる。必要だからやるといった感じ。
 言葉の中で特になるほどと思ったのは「輪郭のこと」。”画は形を取扱うものである。”という一文だ。画を描く時は紙の上に線を描いて形を表すわけだが、栖鳳の画の輪郭は線を感じさせない。境界が曖昧な感じがする。

この輪郭の捉え方が、栖鳳が言う「動物を描けばその体臭まで描く」ということの表れなんだろうと思う。


余談
現地では、栖鳳の画うますぎてうますぎるって感想しか浮かばなくなっちゃってた。山種のカフェでお茶したかったわね…リベンジすっぞ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?