劇場版『鬼滅の刃』が興収400億円を突破 アニメが牽引し続ける日本映画産業

 国内の歴代興行収入ランキングで1位になっていた映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の興行収入が先月、400億円を突破した。

400億到達までの経過

 映画『鬼滅の刃』は2020年10月の公開から10日間で興行収入が100億円を超えるロケットスタートを記録し、その後も勢いは止まらず、公開から3週足らず(17日目)で前年1位の『天気の子』(140億円)および歴代の国内興収ランキング10位(当時)であった2009年公開『アバター』(156億円)を超えて約158億円を記録。

 興行収入は土日祝をまたいで週ごとに発表される。2020年11月24日の発表では259億円に到達し、近年の邦画順位でトップの成績だった2016年の『君の名は。』(250億円)および2014年に世界中で大ヒットした『アナと雪の女王』(255億円)を突破し、国内興収ランキングで3位に浮上した。

 そして2020年12月14日、興収が300億円を突破し、302億円に到達したことが発表された。100億円は一瞬で達成できたため、「煉獄さん(登場人物)を300億の男に」という声があり、300億の達成は一部のファンの悲願であっただろう(参考)。

 興収ランキング3位になったからには1位を目指したいのは当然だ。歴代1位の2001年公開『千と千尋の神隠し』は当初、308億円だったが、『鬼滅の刃』による突破直前で、再上映企画に伴って316億円に積み増され、目標が少し遠のいた(参考)。しかし2020年12月28日の発表で324億円を突破したことが判明し、1997年公開『タイタニック』(262億円)および『千と千尋の神隠し』を超えて歴代1位に躍り出た。

 次に目指すのは当然「400億」だ(参考)。そして前述したとおり、300億突破から約半年かけて400億円に到達した。

公開3日間:46億2311万7450円、動員342万493人
公開10日間:107億5423万2550円、動員798万3442人(100億突破)
公開17日間:157億9936万5450円、動員1189万1254人(1000万人突破)
公開24日間:204億8361万1650円、動員1537万3943人(200億突破)
公開39日間:259億1704万3800円、動員1939万7589人(『アナ雪』超え)
公開59日間:302億8930万7700円、動員2253万9385人(300億・2000万人突破)
公開73日間:324億7889万5850円、動員数2404万9907人(歴代1位)
公開220日間:400億1694万2050円、動員数2896万6806人(400億突破)

映画産業をけん引するアニメ

 国内の邦画の興収ランキングを見ると、アニメ映画の存在感の強さが分かる。 邦画の国内興収ランキング上位10作品のうち8つがアニメ映画だ。特に、上位5作品は全てアニメ。海外作品を含めた国内興収ランキングでは、上位10作品のうち6作品がアニメ映画だ(このうち『アナと雪の女王』のみ洋画のアニメ作品)。

邦画1位 国内1位 劇場版「鬼滅の刃」無限列車編(401.3億)2020年
邦画2位 国内2位 千と千尋の神隠し(316.8億)2001年
邦画3位 国内5位 君の名は。(250.3億)2016年
邦画4位 国内7位 もののけ姫(201.8億)1997年
邦画5位 国内8位 ハウルの動く城(196.0億)2004年
邦画6位 国内9位 踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!(173.5億)2003年
邦画7位 国内12位 崖の上のポニョ(155.0億)2008年
邦画8位 国内13位 天気の子(141.9億)2019年
邦画9位 国内24位 風立ちぬ(120.2億)2013年
邦画10位 国内27位 南極物語(110.0億)1983年

興行通信社調べ、2021年6月13日時点。太字はアニメ

 アニメ映画と言えばジブリ作品が有名だ。大人から子供まで支持され、宮崎駿監督の作品が公開されればその年のランキングのトップに来ることで知られている。上の興収ランキングを見ても、アニメ8作品のうち5作品がジブリ作品だ。しかし近年、ジブリ作品ではないアニメ映画が大ヒットを記録する事例が相次いでいる。

 やはり近年話題になったのは新海誠監督の作品であり、全国公開された『君の名は。』および『天気の子』が邦画ランキングでトップ10入りしている。そして1位は『鬼滅の刃』だ。3本とも2016年以降の作品である。

 『鬼滅の刃』の場合、新型コロナウイルスの影響で多くの作品が公開延期になった影響もあるだろうが、アニメ映画が支持される理由として、幅広い年齢層が楽しめ、それに応じて宣伝活動も幅広く行われていると思われる。また、地上波のテレビアニメの続編という位置づけで上映される例も多く、視聴者が映画に触れる機会が提供されている。

 そもそもアニメーションは実写では不可能な表現を比較的容易に表現可能であり、映像化が難しい世界観やアニメ独特の色彩表現等を強みにできる。また、キャラクターは外見が架空であるから、イメージに合った人物をキャスティングして作品にあてていくのではなく、作品にマッチさせるように作成して没入感・完成度を高める事が可能だ。したがって、表現の幅は非常に広くなる。

 このようにして、映画世界の門戸を全世代向けに開いているアニメが日本の映画産業をけん引しているのは明らかだ。宮崎駿監督の引退発言が騒ぎになる中(後に撤回している)、「宮崎アニメ」ではない作品がアニメの地位を維持し続けている。今後もアニメ映画の日本の映画産業における存在感は高くあり続けるだろう。

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