日本共産党が「#医療費2倍化とめる国会」キャンペーンを実施。「現役世代の負担増キャンペーン」に支持は集まるのか

 日本共産党がTwitter上で「#医療費2倍化とめる国会」というタグを使い、高齢者の医療費負担を増やす法案への反対キャンペーンを実施している。しかし健康保険料は年金と同様に少子高齢化社会において大きな課題の一つとなっており、どれだけ支持が広まるか疑問だ。

不都合な事実は隠す

 今回の法案は、75歳以上の医療費負担を現行の1割から2割に引き上げるというものだ。つまり6歳未満の未就学児や70~74歳の医療費負担と同等となり、69歳以下の3割負担より低い割合のまま維持される。また、年収制限も設けられ、単身世帯は年収200万円以上、複数人世帯は75歳以上の年収合計が320万円以上の場合のみ負担が引き上げられる。したがって、その対象者は75歳以上の高齢者のうち年収上位2割の人々にとどまる。高額療養費制度も維持される。

 日本共産党の議員によるツイートでは、現在の制度やこういった年収制限についての説明は少なく、1割負担から2割負担となる事を「2倍化」と呼んで批判している。

現在の健康保険制度は歪

 74歳以下の国民健康保険・被用者保険はおよそ1億1千万人が加入し、その規模は約20兆円である。これに対して後期高齢者医療制度は加入者およそ1800万人で、規模は約16兆円であり、高齢者医療費がいかに莫大なものかが分かる。

 約16兆円のうち、後期高齢者によって支払われる保険料は約2兆円であるため、後期高齢者による保険料収入だけでは制度の維持はできない。したがって、およそ半分の約8兆円が国などの公費から拠出されており、さらに74歳以下の国民健康保険・被用者保険(約20兆円)から約7兆円が後期高齢者医療制度に拠出されている。

 したがって、現役世代による医療費負担の3分の1は、現役世代の医療費ではなく後期高齢者の医療費に費やされている状況だ。単純計算で、74歳以下の1人あたり約6万円の負担となり、税金も含む公費負担分を加味すると現役世代の負担はかなり大きなものと言える。そして今後も高齢化の進行で現役世代の負担がさらに大きくなる見通しだ。

 団塊の世代が後期高齢者となって後期高齢者の人数が最大で約2200万人に達し、現役世代の負担が急増すると考えられている時期が迫っている。負担急増が始まるのが2025年ごろであるため「2025年問題」とも呼ばれ、現役世代の負担は2025年度には年8兆円に上るとされる。

高齢者医療費制度は今後も見直しか

 今回の後期高齢者医療制度の改革によって、現役世代の保険料から拠出する金額の軽減額は800億円台とされ、現役世代1人あたり年間800円程度の削減にしかならない。したがって、今回の医療制度改革は大したものではないと言うこともできそうであるが、改革派まだ序の口である可能性も高い。高齢者の視点でみれば不安は大きい。ただし同時に、日本が高齢者を以前同様に支えられるほどの余裕があるかどうかは意見が分かれるだろう。

 政治的意図をもって反自民党キャンペーンの一環としてこの問題を利用するのではなく、負担増に耐えられない現役世代が出てくるなどして制度そのものが維持できなくなる可能性も考えて問題に真剣に向き合うべきではないか。

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