ファクトチェック:毎日新聞の「1日100万回はミスリード」は誤り

 毎日新聞が昨年6月10日に配信した「菅首相『ワクチン接種100万回超えてきた』はミスリード」という記事。これを改めて検証する。

 記事の冒頭を引用する。

菅義偉首相は9日の党首討論で、新型コロナウイルスのワクチン接種について、「8日は100万回を超えてきた」と述べた。しかし、100万回というのは1日分でなく、複数日分の接種回数が含まれており、発言はミスリードだ

 接種回数について、首相官邸の専用サイトでは前日までに集計された総接種回数と、その前の日の数字との差を掲載しており、これが6月8日の分で100万回を超えていたものとみられる。ただし、当日までに集計された数字には数日遅れて報告された分も含まれるため、差分は前日1日間の接種回数を示すわけではない。したがって、上記の記事の配信された頃、6月8日だけの接種回数は60万回を超える程度と集計されていた。この点をもって毎日新聞は「ミスリード」と断じ、首相発言の翌日に上のような記事を配信した。

 しかし、数日遅れて報告されるため、検証は正確な数字が出るまで待つべきだった。現時点で6月8日の接種回数を確認すると、一般接種が97万7891回、医療従事者の接種が16万1922回で、合計およそ114万回に達する。

 確かに当時は根拠に乏しかった。だが、遅れて数字が入力された分も含めた総回数が前日比で100万回を超えただけだとしても、理論上、総回数の前日比が100万回を超え続ければ、総回数を日数で割った1日当たりの平均値は100万回を超える事になる。また、6月は接種回数が右肩上がりの状態にあったため、前日比が100万回を超えた頃には、単日の接種回数も100万回に達していた可能性は高いと判断できる。

 この問題、朝日新聞は9月にファクトチェックの記事を配信し、「結果的に首相の発言は正しかった」と判定している。

 首相を批判したいがあまり、拙速に批判記事を発信した毎日新聞。毎日新聞の無責任な報道に責任が伴う日は来るのだろうか。

岸田政権でも…

 岸田政権でも同様の事態が発生している。2月15日の数字について、岸田首相が「前日からの増加回数が約110万回となった」と説明した事に対し、反論する声がマスメディアから上がった。神奈川新聞社の記事には「未接種関係者も加算される報告ベースの数字を持ち出した」「同月中の最多接種実績が約93万回にとどまっている」という反論が掲載されている。

 首相官邸が公開している接種回数のデータを見てみると、1日ごとの累計接種回数の前日比で、2月15日は113万回を超えている。

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 ただしこの前日比は、前日以前の増加分も含めているので、1日あたりの実績を示すものではない。

 1日ごとの接種実績のデータを見ると、2月15日だけの3回目接種実績は88万回(2月28日までの報告)で、1・2回目の接種実績は1.8万回で、合計で90万回となり、100万回には届いていない。

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 ただし菅政権における前述した事例を踏まえると、2月15日前後には実際に100万回程度に到達していた可能性は高い。これについて何日間も問い続ける事にはあまり意義を見出せない。

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