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種の同定って難しいけど、とても重要なことなんですね。

 12月10日の朝日新聞デジタルに、「「水族館にしかいない謎のクラゲ」どこから? 研究で浮かんだルーツ」という記事が出ています。

 一年を通して江の島でもっとも出現回数の多い「エイレネクラゲ」と、「エイレネクラゲ」の近縁の種で、1992年に鳥羽水族館(三重県鳥羽市)の水槽内で発見され「水族館でしか発見されていない謎のクラゲ」とされていた「コブエイレネクラゲ」について、さまざまな情報(形態・生態・遺伝子・分布)を扱いながら厳密な種同定をおこない、それらの基礎的な情報を論文にまとめたものが、台湾の科学ジャーナルである「Zoological Studies 」に、「Integrative Systematics and Biogeography of the Hydrozoans (Leptothecata: Eirenidae) Eirene menoni Kramp, 1953 and Eirene lacteoides Kubota and Horita, 1992 from Japan and China with Comments on Pacific Ocean Distributions」のタイトルで掲載され、今回の記事はこれが元ネタです。

 「エイレネクラゲたちが属するヒドロ虫綱の「マツバクラゲ科」は近縁なもの同士がとても似ており、同定難易度が高いとされていて、世界中で誤同定が頻発しています。世界中にいるさまざまな生物の遺伝子データが登録されている GenBank でさえ、そのクラゲが別のクラゲとして登録されてしまうなんてことがよくある」ということです。
 そのため、「さまざまな情報を扱い「正確に種同定をする」ということはとても重要な作業になる」ということなのです。

 今回の研究で、「長い間水族館でしか見つかっていなかったコブエイレネクラゲが、実はすでに自然界(中国)で採集されており、違うクラゲ(ギヤマンクラゲの仲間Tima formosa)として登録されていたということがわかりました。また、ハワイにあるワイキキ水族館で水槽の中から見つかった個体と、日本・中国の個体の遺伝子間に共通部分が見られたため、元々中国や日本周辺で出現していたものがハワイに進出してる可能性があることも分かりました」。
 「さまざまな情報をまとめたからこそ新しいことが分かった事例で」あり、「同じような誤同定が他の種やグループでも頻発していることが考えられ」るということです。

 なお、この情報は新江ノ島水族館の「えのすいトリーター日誌」12月1日付け「国境を越えた共同研究! エイレネ・コブエイレネクラゲの話」をまとめました。


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