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つわりの原因が、今までわかっていなかったなんて。

 12月20日の朝日新聞デジタルに、「つわりの原因、やっと解明 女性の問題「軽んじられてきた」と研究者」という記事が出ています。

 つわりなんて、昔はテレビドラマなんかでも、女性が「うっ!」となって流しなどに走るシーンがよくありましたが(最近は見ないですね)、それだけ妊娠の兆候として一般的な現象なので、その原因なんて分かっているとばかり思っていましたが、「GDF15」というホルモンの増加が関係することが分かったのが近年になってだなんて、むしろ驚きです。

 この記事のネタ元は、「GDF15 linked to maternal risk of nausea and vomiting during pregnancy」というタイトルで、イギリスの科学雑誌『Nature』に掲載されています。Abstractだけは無料で読めますが、全文は有料です。『Nature』掲載のAbstractよりも若干詳しいもの(タイトルは「Researchers Identify Cause Of Morning Sickness In Pregnant Women—And Possible Treatments」)が『Forbes』には出ていますので、より詳しい情報を知りたい方はこちらをどうぞ(日本語版はこちら)。

 妊娠中に吐き気や嘔吐を経験した人は、そうでない人に比べて、成長分化因子15 (GDF 15) として知られるホルモンの値が高く、このGDF15の大部分は胎児に由来していたということです。また、妊娠前のGDF15の値が低い女性はつわりが重症化するリスクが高かった一方で、遺伝性血液疾患によりGDF15が慢性的に高い女性は、つわりをほとんど経験していなかったということです。
 GDF15は、人間の体内で生涯を通じて産生され、食欲や吐き気を感じる脳の部位に信号を送るタンパク質で、母体の胎盤に多く含まれているのですが、今回の研究で、GDF15を長期投与されていたマウスでは、対照群と比較して、強い吐き気によるとみられる食欲不振の発症リスクが50%近く低下するということが確認され、妊娠前にGDF15への曝露を増やすことで、つわりが有意に軽減できることが初めて発見されました。 
 妊娠による女性の苦痛が少しでも和らげられるように、今回の成果が治療につながることが期待されます。


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