比較的新しい下剤について

下剤が在宅医療に携わっていると頻繁に接する薬である事も事実ですね。
前置きは短くして本題にはいります。

新しめの下剤について

それまでは酸化マグネシウムの塩類下剤やセンノサイドのようなアントラキノン類ばかりだったんですが、ここ数年で新しい下剤が出てきました。

①アミティーザ®(ルビプロストン)

詳しい説明は抜きにして(おい)、小腸に作用するタイプの下剤です。
服用も1日2回朝夕食後となってます。

ちなみに、下剤は大きく分けて2つあります。
刺激性下剤と塩類下剤。
刺激性下剤は寝る前に服用する事が多いです。
これは夜間の方が腸が活発に動く事と、効果時間が服用後数時間とされるので朝にまとめて排便しやすい事、外出時の便意を避ける為などの理由で寝る前の服用とされてます。

酸化マグネシウムが代表的な塩類下剤は、食後や寝る前など服用時点は特に選びませんし、服用回数も1回でも良いですし、複数回に分けても構いません。酸化マグネシウムは一回量が少ないと下剤の効果を発揮できないという事があります。

話がそれてしまいましたが、新しい下剤は就寝前の服用ではない事が、何か目新しさを感じました。個人的には。
ルビプロストンは便に水分を含ませるという意味では、塩類下剤に近い作用と感じています。

発売当初は「どうせ大腸の水分調整で効果は弱いだろう」 などと、タカをくくってましたが、いざ現場で効果をみると思いのほか効果が得られた印象です。24μgでは強くて12μgに下げた症例もありました。
また、一包化もできる事や食後の服用もできる事など在宅医療などには親和性の高い薬剤かと思います。
酸化マグネシウムの量を増やしにくい腎機能低下の患者さんにも使いやすい薬かと思います。

②グーフィス®(エロビキシバット)

グーフィスという商品名は「Good (優れた)とFeces (便)」からきているのだそうです。ちなみに前出のアミティーザは特に理由は無いのだとか・・・。
作用機序は大雑把に言えば胆汁を利用したというこれまでにない目新しい作用です。
一包化もできる製剤ですが、一番の欠点は食前投与・・・
これが在宅医療では非常に手間となる点でして。食後投与でもそれなりには効果は期待できるとは考えられます。持田製薬のHPには

食事の刺激により胆汁酸が十二指腸に放出される前のタイミングでグーフィス®錠5mgを投与し、回腸末端部で胆汁酸の再吸収を抑制することが望ましいと考えられます。
治験では、いずれも朝食前投与で実施しておりますが、胆汁酸は昼食、夕食後にも分泌されるので、本剤は昼食、夕食前の投与でも朝食前投与と同様に十分な効果を示すと判断されること、朝食を摂取する習慣のない患者様も多数存在すると推定されることから、用法・用量は「食前投与」で承認されています。

持田製薬HPより

どう、考えていきましょうか・・・。

今回、紹介する3剤はいずれも水分分泌促進作用を有しますが、グーフィスは加えて、腸管蠕動運動もあるため腸の動きの悪い症例にも期待できます。

③リンゼス®(リナクロチド)

リンゼスって下剤なんですが、「便秘型過敏性腸症候群」の適応があるんですよね。これって慢性便秘と何が違うのよ??と、思ってました。
調べてみると慢性便秘にはその他に機能性(動きが悪い)、基質性(がんなど)、症候性(他の疾患が原因)、薬剤性などがありその中の一つなんですね。
また、痛みを和らげる効果もあるとの事です。

まあ、しかしながら在宅医療には以下の理由で不向きな薬かと感じています。

まず「食前投与」。
なんでも食後にすると下痢の頻度が高くなるとかで・・・

次いで「一包化不可」。吸湿性が高いとのことです。
こうなると看護師さんのいない施設ではどうにもならんわけですし、独居の方にも使いづらい。

しかしながら、効果は小腸から大腸となっており、前述のアミティーザより広い範囲である事から、他剤で充分な効果が得られない時は是非試してみたいお薬でもあります。

とりあえず、1タイトルで3つまでをコンセプトにしているので、今回はここまでとします。
モビコールについても書きたかったのですが、また別の記事にしたいと思います。

雑感

ここからは個人的な考えが多く混ざりますので、あくまでも参考程度としてください。使用等の責任は負いません。

作用部位は考えた方が良いはず

これは特にアミティーザに対してです。
腸管の水分代謝ってやっぱり大腸なんですよね。小腸で水分を増やしても、大腸で再吸収されてしまっては元も子もないというか。

そう考えるとアミティーザって、従来の酸化マグネシウムやモビコールなど大腸で水分を保持するタイプの下剤との併用が良いのかとは思います。

臨床での私の感覚として、効果は良い薬と感じてます。24μg x 2だと強めな感じもしました。減量する際、12μg x 2が添付文書に従った減量なのでしょうが24μg x 1でも効果は得られた症例もありました。

グーフィスの食前投与

正直なところ、1日1回で効果を示すし、脂分の多い食べ物は夕食に多いのに対して朝食前の治験だったり、そもそも吸収は殆どされないんだから・・・と、考えると別に食後でも良いのかと考えてます。

リンゼス

これは若い方で、環境のストレスを感じやすいタイプが良いのかなーと思います。
高齢者では強すぎる気もします。

在宅医療ならこれ

私としてはアミティーザ一択ですね。
いずれの薬も腎機能には優しいとされてますが、前述しましたが便利なんですよね(他が不便とは言ってない。言ったかも?)。

嚥下困難な症例であれば、3剤いずれも簡易懸濁は使用可能とされています。ただ、アミティーザは懸濁に時間がかかるという情報もありました。
グーフィスの粉砕は可能ですが、メーカーは推奨はしてませんね(そりゃそうか)。

3週間は様子見

私の経験?偏見?と思いますが下剤の変更は3週間は様子を見る事にしています。もちろん全くの勘というわけではありませんが、薬の変更後2週間の判断では早いという感じがこれまで多々ありました。
1週目は効果が出て、2週目では効果が消え、でも3週目以降は安定した・・・と、いう症例は多々あった経験があります。

まあ、もともと定期的な便秘というものもあまりなく、便秘そのものに偏りがあるので落ち着いて様子をみる事が重要かと思います。

ちなみに在宅医療の現場では下剤で経過観察をするためには看護師さんの介入が必須と考えてます。便通が無い場合浣腸を実施できる体制は欲しいですね。

最後に

いずれにしろ、効果は現場でそれぞれが責任を持っていただければと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?