見出し画像

アマルフィは甘く酸っぱく、ほろ苦い

バスがアマルフィの絶壁の上にある店に到着した。
老いも若きもバスから降りて青い海を眺める。
潮風に喉の渇きを覚えて名物のレモンジュースを注文すると
注文を受けてからおばあさんが、レモンを選び、作り始める。
一杯のジュースに大振りのレモン一個を全部使う。
砂糖はほとんど入れてないが、愛想はとてもいい。
ほら、もうできあがった。
思ったほどには酸っぱくはないが、やっぱりレモンは酸っぱい。
だけどアマルフィの海岸を眺めながら飲むレモンジュースは
夢のように薫り高く、美味しい。
え、残りの半分でいいから欲しいって。
年若い美女からそう言われて、男子たるもの、どうして断れよう。
けれど、私の隣には、気立ての良い女房がいた。
そういうわけにはいかない。
私は申し出を断って、グラスを飲み干した。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?