003. 肝心の本が出てこないのである

以前、『吾輩は猫である』に登場人物のセリフを色分けを施したことがあって、その作業をしながら「これをゲームにしたら面白いのではないか」と考えたのだった。

そして肝心のその本がどこかへ行ってしまって見当たらない。岩波文庫版で、付箋がにょきにょき生えていて、全体的によれっとしているのだから、すぐに見つかりそうなものだが、部屋のあちこちに書塔や書層があるため、どこに埋もれているのかも検討がつかない。

読み終わったとき、岩波文庫棚のしかるべき位置へ戻しておくのだった……と思っても手遅れである。

かといって、それを理由に先へ進めないのでは仕方がない。改めて入手してとりかかることにしよう。いや、『漱石全集』や『定本 漱石全集』版などはあるのだけれど、あちこち開いたり、移動中にも眺めたりするには、やっぱり文庫版が便利なのである。

人物たちの会話を中心に進めるので、肝心の猫をどうすべきかという点については、まだ決定的なアイデアはない。ただ、猫は、苦沙弥先生をはじめとする人間たちを観察しながら、誠にしょうがいないものだという視線を送ってみせるのが仕事である点を活かしたいと思っている。

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