いつも準備が足りない

よく夢を見る。覚えている範囲でのことだが、私が見る夢にはいくつかのパターンがある。

たいていは見知らぬ土地で、どこかに向かって歩いている。街中や道路などが多いだろうか。巨大な建造物の中のこともある。そんなとき、いつも時間を気にしているようだ。約束でもあるのか、間に合うかしらと考えながら歩いている。

もう一つは、大学で講義をする夢で、それまで一度も担当したことのないテーマについて、準備もないままいまから話さねばならないという状況が多い。たいていは300人くらい学生がいる大教室である。

同様に、いまからライヴのステージに出るのだけれど、これまで練習さえしたことのない曲をギターやピアノで演奏しなければならなくてどうしようかという場面にもしばしば遭遇する。

日頃、よせばいいのに自分の能力を超えた課題に取り組んでいる無理の現れだろうか。我ながらかわいそうだ。

熱などで寝込んでいるときは、『不思議の国のアリス』ではないけれど、自分の体がぐんぐん大きくなったり小さくなったり、周囲の世界が幾何学模様でできていて、これがぐるぐる回ったり歪んだりする夢が子供の頃からの定番である。

かつては高いところから落下したり、黒服の男たちと戦ったり、無免許で車を走らせたりもしていた。日本刀で胸の真ん中を貫かれたときは、鉄の塊の感触があまりにもリアルで困った。お店でレジを打たねばならないのに、キーを見るたび数字が変わるのでうまくいかなかったりしたこともあった。

コルタサルの短編で、夢だと思っていた世界こそが現実の世界だったというふうに、現実と夢が入れ替わって、というよりも正しく認識されて終わる話があったのを思い出す。ときどき夢のなかで、「これは夢でありますように」と願うこともある。

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