きみと文芸の戦いでは……
ここ数日、1人ブンゲイファイトクラブをやっていた。
というのは言ってみたかっただけで、自分と殴り合いをしていたわけではない。
季節に一度の文芸季評を書くため、文芸誌の山ととりくんでいたのだった。
小説や詩を読むのは嫌いではない。むしろ好きなほうだが、仕事として読むのは少々しんどい。なんらかの評価をするという目的が念頭にあるので、ただ楽しむというわけにいかないからだ。
楽しみのために読むなら、多少細部があやふやでもどんどんすいすい読めばよい。他方で評価をするとなればそうもいかない。登場人物を把握し、話の展開と構造を見てとり、文体や表現について考察を重ねる。メモをとり、図を描き、読み直す。
誰にそうしろと言われたわけでもないのに、文芸誌に掲載された全ての文章を読むことを自らに課してしまったため、気分が乗らなくても読む。途中で飽きてもしまいまで読む。もはやなんのためにやっているか分からなくなってくる。
10作に一つでも、これはいいと感じるものに出会えたら幸いだ。そういうものを読むときは、仕事であることを忘れて没頭する。今回もそういう作品に出会えた。ただし、文芸誌の外で。
というわけで、今回はそのことを書いてみた。年明けの『文藝』(河出書房新社)に掲載予定である。
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