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岩波文庫に(勝手に)帯をつけるプロジェクト#03

さて、なかなか帯をつくり始めるところまで辿り着かないのだけれど、もう一つだけ先に記しておきたいことがある。

なぜ岩波文庫に(勝手に)帯をつけるのか。理由が二つあると言った。

一つは、前回書いたように、岩波文庫の著者別番号のしくみが紆余曲折しているために、古い本だと番号が現在のものと違っていて、棚に並べる際などに不便だから、ということだった。

では、もう一つはなにか。写真を見ていただこう。

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これは、バンジャマン・コンスタン(1767-1830)の政治論集である。

・『近代人の自由と古代人の自由』
・『征服の精神と簒奪』
・『人類の改善可能性について』

という3冊を訳して1冊にまとめた、たいそうありがたい本なのだ。

写真では分かりづらいかもしれないのだが、「赤525-2」と分類されている。つまり、コンスタンの本は、海外文学(赤帯)に分類されており、著者識別番号は525(フランス文学の25番目)、そしてコンスタンの作品としては2冊目というわけだ。ついでのことながら、1冊目は『アドルフ』(大塚幸男訳、赤525-1、2010)という小説である。

さて、岩波文庫の分類のしくみをご理解の方なら、以上を目にして、ちょっと変なことに気がつくかもしれない。

そう、『アドルフ』は小説だから「海外文学」の赤帯でよい。でも、『近代人の自由と古代人の自由・征服の精神と簒奪 他一篇』は、どちらかというと政治思想だ。岩波文庫の分類でいえば、白帯であって欲しいところ。だが実際には赤帯である。

岩波文庫では、どうやら1人の著者は同じ色の帯に入れるというルールがあるようなのだ。コンスタンは1冊目が海外文学だったので赤に登録され、2冊目は政治思想だけれども、やっぱり赤というわけだ。

そのつもりで見てみると、岩波文庫のそこかしこに、似たような例がある。例えば、最近『パッサージュ論』が入り始めたヴァルター・ベンヤミンは赤帯、ジョン・ロックは哲学で青かと思ったら白帯、という具合。

文句を言いたいわけではない。分類とはそういうものだ。

とはいえ、場合によっては、やっぱり自分なりの分類をしてみたくなったりもする。ベンヤミンとアドルノは並べておきたいよね、とか、出身国はおいといて生年の順に並べたいなあ、などなど。

そんなとき、自分で勝手に帯さえ作ってしまえば、独自分類もし放題。もちろん帯をとれば、元に戻る。うん、いいじゃない。

あ、そうだ。そのやり方ができるなら、他のどんな文庫も岩波文庫化してしまえるのではあるまいか。

そういえば、昔、筒井康隆の文庫を出版社を問わず、筒井康隆文庫として分類整理したいといって、カバーを自分でつくっていた友人がいた。真っ白な紙の背表紙のところに書名と分類番号を入れた簡素なものだったけれど、あれはあれでいいものだった。

――というわけで、オリジナル分類のための帯を作ってしまおう、というのがもう一つの動機なのであった。

以上は前置きで、ここから帯づくりに進もう。

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