でもそれは、遠い遠い思い出

中学生のとき、ときどき遊びにいっていたA君の家ではサルとイヌを一緒に飼っていた。
訪れるたび、「今日はケンカしてたりしないかな……」と少しドキドキしていたものの、サルとイヌは特に険悪な風でもなく互いにのんびりしていたように思う。
放課後なんかに遊びに行くと、A君はヴィデオテープに録画されたRCサクセションのライヴ映像を再生してくれて、2人で繰り返し見て飽きるということがなかった。あの声で「愛しあってるか~い?」と問いかけ、歌うボスはひたすらかっこよかった。
A君は、忌野清志郎の詩集も持っていて、ときどきページを開いて「これがいいんだよね」と私にも見せてくれたりした。
おかげですっかり清志郎とRCサクセションのファンになり、そこから彼らがカヴァーする洋楽のオリジナルも探して聴くようになった。
A君は、当時でいうところのいわゆる不良で、裾の短い改造学ランとボンタンと呼ばれていたパンツを身に付け、そり込みを入れ、煙草と酒を嗜み、バイクを乗り回していた。
どうしてA君と仲良くなったのかは忘れてしまったけれど、よそからの転校生だった私は、地元の中学生たちのあいだに築かれていたはずのさまざまな関係(なんらかのグループやらなにやら)に関係なく、話しかけてくる人のおしゃべりに耳を傾けていたからかもしれない。
田舎の中学校では、転校生は異星人のような扱いだったこともなにか関係しているように思う。
A君には、たくさんのいい音楽やその他のことを教えてもらった。
それは1980年代前半のことで、同級生のギターキッズたちは、ヴァン・ヘイレンやボン・ジョビに夢中になっていた、そんな時代だった。
ということを、モンキーズのマイク・ネスミス死去のニュースに触れて思い出したのだった。

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