こちらまでおいしくなる
食堂でお昼を食べていると、隣にそのお店の常連らしいおじさまが座る。
注文した皿が運ばれてくると、「これはおいしそうだ」とおっしゃる。その様子がなんというか、心の底からそう感じているのを口に出さずにはいられない、という風でどうも聞いているこちらまでニコニコしてしまう。
食べている最中も、「うん、じつにうまい……」とつぶやき、食べ終わってからも、皿を下げにきたお店の人に「いやあ、ほんっとうにおいしかった!」と朗らかに伝える(ご存じの方は、水野晴郎さんが映画番組の最後に「いやあ、映画ってほんっとうにいいものですね」というときの「いやあ、ほんっとうに」のイントネーションを思い浮かべながら読んでいただきたい)。
食後のコーヒーを待つあいだには、時折うんうんと小さく頷いている。どうやらいましがた食べ終えたもののおいしさを噛みしめ直しているご様子。
コーヒーを味わい終えると、お会計を済ませて「今日は夜もよろしくネ。楽しみにしてるよ!」と言って去っていった。
おかげで、私のほうまでおいしさが2割増しになったような気がした。ありがとう、おじさん。というか、夜も来るんかい。
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