オウンドメディアと言わずとも

いつ頃からだろう、「オウンドメディア」という言葉を耳目にするようになったのは。

私は、しばらくこの言葉の意味が分からなかった。なぜなら、インターネット上にワールドワイドウェブ(WWW)が誕生してこのかた、基本的にウェブサイトとは自前でつくるものだったから。

WWWのアイデア自体はしばらく前からあったようだが、実装・公開されたのは1990年である。といってもその頃はまだウェブページは珍しいものだった。多くは従来のようにコンソール画面(コンピュータに対してキーボードなどから命令を打ち込むためのプログラム。黒い背景に白や緑の文字でテキストが表示される画面を見たことがあるだろうか)からネットで接続したどこかのコンピュータの記憶装置のなかを覗くように使っていた。世の中でインターネットとWWWが普及し始めるのは1995年前後あたりだった。

いずれにしても、その頃からインターネットでなにかするということは、自分でページをつくることを意味していた。

とはいえ、オウンドメディアという言葉の意味が分からなくても困ることもないので放っておいた。のだが、そうこうするうちに、ある時期から知人や仕事相手にもこの語を使う人が現れたので考えてみることにした。以下は私の想像である。

①インターネットはそもそも自前でものをつくる場所だった。つまり、わざわざ言うまでもなくオウンドメディアだった。
②利用者が増えるにつれて、他人がつくったウェブサイトにものを掲載してもらったり軒先きを借りるという状況が現れた。(ペイドメディアなど)
③②に対して自前でウェブサイトを持つことに名前をつけて区別する必要が生じた。

で、オウンドメディアと呼ばれるようになった。のではあるまいか。

インターネットをどういう場所と認識しているかによって、オウンドメディアという言葉への印象も左右されるのかもしれない。要するに私の場合、ネットは自前でなにかする場所で、他人のウェブサイトを借りることに名前をつけて区別しておけばいいんじゃないの、と思っていたわけである。

ここまで言っておいてなんだけど、インターネットはそもそも他人のサーバー(ネットで接続されたよそのコンピュータ)とそこに保存されたデータやプログラムを融通しあう仕組みなので、正確にいえば借り物メディアが基本である。また、真のオウンドメディアとは、自分でサーバーを用意して使っている場合ということになるだろうか。話をややこしくしてしまった。

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