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「ブックマーク」


詩「ブックマーク」

ブックマーク

おなじはやさで流れていく川の毛並みは淡く夏めいて隔たれた二つの道を行く人の爪は青白い夜をスキップして再生、そして遠ざかる薄鈍色の歪な形をした一文字めは川底にある便箋を送り出すたびに失う文字を思いながら

多くは運ぶために送料がかかる
あなたは
自転車にのっていた
軽やかである
必要があったから
僕には
その必要がなかった
どこかで撮影された映像
タイムラプスのスピード
と、ほんとうのはやさ
回旋する頸椎のために
背筋を伸ばす
空き地じみた月極ガレージの
フェンスの向こう側に
一輪だけ背の高いポピー
反対の道路脇に
不揃いな逆光を浴びる
褪せた馬酔木の低木があり
そういったものの周囲には
もう呼ばない苗字の表札や
あるいは
忘れてしまった名前のいくつかが
透過した香気に満ちて散らばり
現在地を見失わないために
中指と親指を擦り合わせ
音を鳴らす
ふりをしている

現代詩手帖 2024年6月号 新人作品投稿欄 選外佳作


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