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暇空茜氏・東京都・Colaboの住民訴訟についての個人的なメモ2 〜リモート裁判手続と、被告へのダメ出しの理由

「令和 5年(行ウ)第24号 損害賠償請求等義務付け請求住民訴訟事件」についてたわいのないことを書き記した前回の記事が思いの外反響あったのでびっくりです。今回はそれの補論的なことを書きます。

弁論準備手続におけるTeamsの利用

特にコロナ禍以降に積極利用されるようになったのですが、ある程度複雑度の高い民事事件では、ラウンドテーブルが一つある小部屋で裁判官がお互いの言い分を整理して事件の争点をまとめ上げる手続に付されることがあります。
これを「口頭弁論準備手続」といって、裁判官の許す限りにおいて、リモートミーティングなど、古典的な法廷での手続に囚われない柔軟な手段で中間手続を進行することができる制度があります。

裁判所がこれにTeamsを採用している件については以下のページを参考に。


リモート会議と裁判制度制約の適合性

裁判官のルールに基づいてさえいれば誰でも傍聴が許される公開の口頭弁論と比べて、弁論準備手続は限られた人しか審理に立ち会うことが許されません。公開の裁判を完全にオンラインでやるにはいろいろと障壁(公開といえど審理中の撮影や録音の禁止など裁判所としてのルールがあり難しい)があったりします。

そこでまずは各当事者に弁護士がついている場合の非公開手続部分だけでもリモートでやるということでしょう。Teamsは文書や画像のファイルを共有しながら特定少人数の招待制の会議をするのに適したプラットフォームのひとつです。

裁判の公開原則との整合は?

弁論準備手続によって各当事者の主張が整理されたあとは、準備手続後の最初の口頭弁論期日において、各当事者は整理後の主張を各自することになっています。

訴訟記録はTeamsで提出された書面書証についてはそのデジタルデータをプリントアウトするだけですむので合理的です。

そして今回の住民訴訟

今回の住民訴訟も、どうやら一旦この非公開の手続に入ったということの情報を得ました。
弁論準備手続のなかで実質的な本案の審理が十分なされてしまえば、あとはオフラインの口頭弁論期日を一回待つだけであったりとか、証拠申出に応じて証人尋問をするだけだったりとか、非公開のうちに終盤まで審理がすすむこともありえます。

本件の争点おさらい

現時点で、原告側は1月の時点で都に対して令和三年度予算から拠出した2600万円中「108万2392円」をColabo賠償請求ないしは返還請求させ、あるいは都知事らが連帯して賠償するように求めています。3月時点において訴状の変更申立があった(暇空氏は変更申立書をアップロードし忘れしている?)ようですが、金額および算定根拠について、特に大幅な変更はないように見受けられます。

いまのところ双方の主張は以下のように大きく食い違っていますが、特段新しい主張があるわけではありません。

  • 原告(暇空茜)の主張の要点

    1. Colaboが令和3年度の事業費として請求した2600万円中必要な経費として認められうる経費は多くとも2491万7608円である(疑義は監査請求で指摘の通り)。

    2. よって経費として認められない108万2392円分は、都に返還ないしは賠償させるべき。

    3. 審理の進行により、新たに不適切な支出が確認でき次第、返還ないし賠償金額を増額することを予定している。

  • 都の主張の要点

    1. Colaboの会計について再度精査したところ、当該年度の2713万1000円は事業経費として認めることができる。

    2. 概算払い済みの2600万円をはみ出した分はColaboは自己の資金で払っており、都はなんら不当利得返還ないしは損害賠償の請求権を得ていない。

双方の主張で引用するために出てきた文書も、情報公開請求と監査請求の過程で都から開示されたものに他なりません。たとえば、原告が示す甲7と、被告側が示す乙7は監査結果の全く同じページからリンクされた別ファイルであったりします。

なぜか補充の立証を求められる被告

しかし、その上で裁判所は、被告の反論が原告に対する的確な反論になっていないと指摘したといいます。どういうことでしょうか。

実は、東京都側が出した資料は監査の結果であって、その結果を導き出すための再検証可能なデータなどは含んでいませんでした。

暇空氏側に肩入れ?裁判所の心証は?

もちろん原告側は、新たに算定根拠となる資料が明らかになった場合は請求額を拡張する用意があると言っています。裁判所は審理の長期化を避けるためにも、金額の算定根拠を客観的に明らかにさせて、主張を尽くせるようにする必要があるわけです。
言い換えると、被告東京都が「監査委員がそう判断した」のをそっくりそのまま鵜呑みにした答弁を述べるだけで、再検証可能なデータを示さない、それを裁判所が是認してしまうのであれば、そもそも審理の意味がないわけです。

だからこそ、裁判所は、釈明権に基づいて、どうやって2713万1000円という数字を弾き出したのか、参加人Colaboは領収書等の原本を持っているからそれらを一切出してくれ、その上で再検証していこうと、至極当然のことを言っているわけです。
監査請求に対する事後審理たる住民訴訟とはそういうものであり、また、争点整理が始まった段階ですから、現時点で心証がどちらに傾いているかを予想する段階ではないといえるでしょう。

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