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島の冬の日々の中で

寒い日々が続いている。冬らしい冬だと言ったら、そうなのかもしれない。ここ沖縄では冬の風雨による悪天候は今なお続いている。12月の那覇の日照時間はわずか45.9時間だったというからその天気が伝わるだろうか。1ヶ月間で晴れたのはほんの2日もない時間である。それは記録を取り始めてから過去最小であり46年ぶりの記録更新。先島諸島では与那国島の24.9時間。続いて西表島32.1時間、宮古島35.8時間、石垣島37.4時間と軒並みわずかにしか太陽が顔を出すことがなかった。
そして降っては止むを繰り返す雨。12月の降水量は206.5ミリを観測。平年12月の1カ月間の降水量(102.8ミリ)の約倍である。


今回は3回目の沖縄で過ごす冬だ。
もともと沖縄の冬の天気は、島を一気に吹き抜ける大陸からの強く冷たい風と雨の天気という感覚があったのだが、今年は特にそれが続いている。とにかく晴れない。そして気温も低い日が続いている。
周りの農家は苦労していることだろう。畑を見ていても日に日に植物は元気を失い、病気も散見するようになってきた。途切れることのない雨、乾かない土壌、北からの冷風。植物たちは耐え忍んでどんなに晴れ間を待ち望んでいることだろうか。


それでも美しい島の中で、例年通り冬の間に今年の農園の栽培予定を考える。作付けを考えることは、この冬の雲と雲の合間から射し込む日の光を見る様で楽しい。ある程度の大きな流れはあるけれど、やりたいこと、植えてみたいもの、たくさんあるやるべきことの順番を考えたり、必要なものをリストしたりと尽きない。
野菜を売ることで生計を立てているので自由気ままに採算を考えないでという訳にはいかない。少数多品目を栽培する中では季節に合わせて野菜が途切れないように栽培することは本当に難しい。更に採算を考えてとなると熟慮を重ねて備えなければならない。まだまだ余力のない私たちの農園にとって栽培の失敗は命とりになりかねないからだ。然りとした準備が良い結果を生む。


さて、私たちにとってここ沖縄の「ぬちぐすい」という古くからの医食同源の思想はとても親しみ深い。沖縄の言葉で「ぬち」は「命」、「ぐすい」とは「薬」の意味。"命の薬"と書く。それは食そのものをさす言葉であり今も生活に根付いている。食は薬であり命を養うものであり命そのものであるという考え方。
そしてこの考えの根底には「ヌチドゥタカラ=命が宝」という"命は何ものにも代えがたい宝"であるという思想がある。
言葉は変わっても私たちが農園で言っていることと同じ。だから私たちが島から学ぶことは多い。


周りを見渡した時、それを食べた時、見慣れぬ南の植物への興味は新鮮な驚きを伴う。その食としての魅力、滋養、薬効。利用方法に感心が深まる。野菜に山野草も実際に見て食べて味わって本質が伝わる。

北海道への帰りしなには沖縄本島に数カ所ある魅力的なハーブ、薬草、薬木園があるので行ってみたいと考えている。たくさんのヌチグスイな在来植物が見ることが出来そうなので楽しみにしている。
この島に来てそんな風に過ごしていると、また色々と栽培してみたいものが増えた。もちろん南の島と北では環境が違うので栽培できる植物は少ないけれどできることもあるだろう。今年の栽培予定を考える中で広がりを得て楽しみが増えている。

季節はゆっくりと進んでいる。
ヒガンザクラが対岸の島では咲いていた。

遮るもののない島を一気に風が吹き抜ける

海風を防ぐ為に作られた美しいフクギ並木は対岸の景勝地。備瀬でゆっくりと過ごしてみたい。

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