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893祭り~地回りバトル~


街録でもちょっとお話させてもらいましたが、援デリ時代の地回りとのバトルをここにまとめておく。話しきれないこともあったので、全部ぶっちゃけて書くね。

まず静岡、御殿場。
ここが私の初地回りに捕まった現場。
割と現場ついてすぐ来たお客で、ドライバーが歩いて確認しに行った。そして私の携帯に着信。「シルバーの軽がいるんだけど、乗ってるやつちょっと若いから怪しいんだよなあ。危なそうだったらすぐ戻ってきて」とドライバーが言った。

実際に接触して車に乗ると、確かに見た目がすごく若そうだった。「いくつ?」と聞くと「18歳」と答えた。うーん、若いな、若いやつって大体金払う気なかったりするから嫌なんだよなあと思いつつも、合流してしまったので車は進む。
でも進行方向がどう考えてもホテルの方向じゃない。
「どこ向かってるの?」
「行けばわかるよ」
その返答で、多分地回りなんだと思った。赤信号のタイミングで飛び降りることも考えたが、なんせ田舎。全然赤信号で止まる気配がない、ぐんぐん進んでいく。「まあ許可取ってるって聞いてるし、地回りだったらドライバーに電話すればいいだけだからいいや」と私は能天気に考えていた。

そして車が地下駐車場に入った瞬間、センチュリーがバーッと出てきて私の乗る車を囲んだ。そして次々に柄シャツを着た人たちが車から降りてきて「この野郎!」だの「てめぇ」だの叫んでいる。
怖いとかいう以前に、漫画かよ!と私は思った。私の座る側の窓が開き「てめー誰に許可取ってんだ!あ?勝手に人の島で商売しやがって!!」と強面の男が怒鳴る。
「許可取ってるって聞いてますけど?」と答えると
「どこのもんだ、責任者呼べ」と言うのでドライバーに電話をつなぎ、そこからケツモチに電話が繋がれた。何やらみんなで集まって、その電話を聞いている。
「お前怖くないの?」ここまで私を連れてきた張本人の若者が聞く。
「別に。」と私が答えると
「肝座ってんね。普通だったらビビり散らかすよ」と言う。
「ビビってどうなる?怖がってどうなる?そもそもそんなんだったらこの稼業やらないわ」
「そう」
「それにしても君、若いのにこんなシノギさせられて大変だね。18だっけ」
「まあ色々あって。来月身代わりで刑務所はいるんだ」
「へえ。若いからこき使われて大変だね」
「待ってる女でもいりゃ頑張れるけど、正直行きたくねえ」
「そんな事言ってたらヤクザなんかやめちまえよ、向いてないから」

なんて雑談していると、さっき私に怒鳴りつけたヤクザがやって来た。
「ごめんね、許可取ってたね。怖がらせちゃったよね、本当にごめんね」とさっきとはうって変わって笑顔をこちらに見せた。しばらくしてドライバーが迎えに来て、私を車に乗せるとドライバーはクスクス笑い出した。
「何笑ってんだよ!」と言うと
「だってあんな数のセンチュリーに、いるヤクザが揃いも揃って柄シャツにスラックス履いてあんなん任侠映画でしか見たことないじゃん。本当にあんなに丸出しでヤクザみたいなの、地元ですら見たことねえよ」と言うので私も「確かに」と言って笑った。

土浦と平塚でベンツに囲まれたとかセンチュリーに囲まれた話は聞いたことがあったけど、まさか私がそんな場面に出くわすなんて思ってもいなかったので、当時の私の心境としては「本当にこんなことあるんだ」と言う感じであった。

次は青葉台
田奈、青葉台は隣の駅で使うホテルも一緒だったからドライバーの気分でどっちの駅使うか決めてたんだけど、その日は青葉台。
時間も深夜を過ぎ、「さーてそろそろ閉める?」なんて話してた時のことだった。
「なんかさっきからずっと白のベンツが後ろにいる気がするんだけど、気のせいかなあ」とドライバーが言い始めた。
振り返ると、確かに白いベンツがいた。しかもナンバーが一番。
「つけてるのかな?ちょっと移動してみるか」と言って車を走らせると、そのベンツはこちらと同じ進行で進んで後ろに着いてきている。

「やべえ、多分地回りだ。着いてきてんな」とドライバーが言った。
「いや逃げようよ、もう出よう」と女の子に急かされて、ドライバーがスピードを加速させると、ベンツもスピードを上げてついてくる。

「いぇーい!カーチェイスだー!!」と私は後ろのベンツを見ながら騒いだ
「呑気な事言うなよ、運転してるほうはガチなんだから!!」とドライバーは言う。信号無視しまくってスピード出し続けていたけど、それでも着いてくるベンツ。
「ダメだ。もう高速いくぞ!!!」と言ってドライバーは急旋回して高速に向かい始めた。それでもまだベンツは着いてくる。
「どこまで来んだよ!!」と皆で騒いだが、結局高速に乗ったところで向こうは諦めたらしい。そこから追っかけてくることは無かった。

これが人生初のカーチェイス。感想?クッソ楽しかったw



そしてこれはエリアを特定しないが(あまりにも多すぎるため)
一人で地回りに来るタイプのヤクザ。地回りで脅すフリをしてしてタダマン狙うような外道、またはヤクザと偽って地回り行為をして女を脅す援デリ狩りなんて言うのもあった。

基本的に一人で地回りに来たヤクザの場合
業者ってばれると金取られたり締められたりするので「業者って言うな!素人って言いくるめて出て来い!」っていう決まりだったのでそういう対応するのが常だった。いくら時間がかかっても、脅されても屈さず「素人です」と言い張る。ヤクザが諦めるまで。正直このタイプが一番めんどくさかった。
タダマン狙ってるようなやつとか援デリ狩りの時は、「鍵がない!入口で落としたかも!」とか言って外に出てそのまま逃走したり、田舎のホテルだと風呂場に窓があったりするからトイレ行くふりして窓から裸足で逃げたりとかしてたなあ。本当自分でもびっくりするんだけど普段ボケーっと生きてるのに窮地に追い込まれると死ぬほど頭働くのよな。「どこからなら逃げれるだろう?」「どうしたらこの人を納得させられるだろう?」って脳みそフル回転だったように思う。

一回本当にバカな奴が来たことがあって。

ホテル入るなり「業者だよね?許可取ってやってんの?」って言われたから
はい、キター------!ってなりながら「違いますよ」って答えたら
「俺ね、頼まれてここ来てんの。素人でも業者でもいいけど上には黙っててあげるから一発やらせてよ」というバカ。
「は?やるわけないじゃん。」と言うと
「そう言わずにさ、ほら、いい薬もあるから」と言ってテーブルにシャブを出すチンピラ。ああ、シャブやってるくらいのチンピラなら大したことないな、と思った私は「私はシャブのために股は開きません。他当たった下さい」と言って帰ろうとすると「待って!じゃあ金払うから!ちょっと付き合ってよ」と必死になるチンピラ。
「金もらってもシャブ中相手にしねえよ。じゃあね」と言って置いて出た。

そしたらなんと「待て!おい!」と言いながら後を追ってくるではないか。
「ひぃいいいこええええええ!!!!」

となった私は全速力で走って逃げて、住宅街の角に隠れながら事情を話しながらドライバーに電話して位置情報を送り、早く迎えが来る事を願いながら、チンピラにバレないように息をひそめた。

五分くらいでドライバーが私のところに到着し、車に乗って駅に向かう道中、そのチンピラはあたりをキョロキョロしながらまだ歩いてるのを見て「あいつやべえよ、怖い」とドライバーと口をそろえた。
その後も何度かその現場でやる時に引っかかってきていたが、ブラリに入れられてる為どの援デリ嬢がいくことは無かった。


その次が南柏
その日、私は絶賛シャブの切れ目。なのにめちゃくちゃ忙しくて気持ち悪いのをぐっと我慢しながら次々と客に着いていた後の出来事。
5本目を終えて、駐車場に止められた車に戻ると客がいったん落ち着いて間が空いてる時間に入った。「ラッキー、ちょっと座席倒してゆっくりしよう」と思いながらグレープフルーツジュースを飲み、ぐうたらしていると黒のベンツが入って来るのが見えた。「ガラ悪そうな車だなー」と思いながら見ていると次々に黒い車が入って来るではないか。
「あ、地回りだな」と思った時には遅かった。私たちの車の周りにスーツ姿の柄の悪そうな人たちが配置され、ドライバーの座る運転席の窓を怖そうな顔をしている人がコンコンと叩いた。

「なんできたか、わかるよね?」との問いに
「いやちょっとわからないです。」と答えるドライバー

「これに全部録音してあるのね。お前らが接客した客全員後つけて、いくら払ったか、なにしたか、全部聞いて録音してあんの。聞く?」
といってレコーダーを手にしたヤクザ。

もう逃げれないと思ったのだろう、ドライバーが一言こういった
「すいません」

「車の扉全部開けろ、女逃げたら困るからうちのもんが見張るぞ。」と言うと、車に着いてる全ての扉が明けられ、私の横にも怖そうな男が配置された。そしてケツモチ同士の話し合いが始まり、私たち嬢は見張られながら車の中で携帯見ながら過ごすほかなかった。「あー切れ目なのにしんどいな」なんて思ってると、見張りの男がお茶を渡してきた。「暑い中ごめんな、女には怖い思いさせないからさ」と言う。めんどくさいのでシカトしていると「お姉ちゃん芸能人の〇〇〇に似てるな、こんな稼業辞めてうちの島の店で働けば?」なんて話してくるのでめちゃくちゃだるい。シカトをキメ続けていると「なんだよ可愛げないなあ」と言って話しかけるのを辞めてくれた。よかった、切れ目でだるいのにヤクザと話すほど私には元気がない。

一時間ほどして、やっと話し合いが終わったらしい。ドライバーがヤクザに金を渡し、私たちは解放された。
「半分持って来やがったよクソ」と呟きながら帰り道を運転するドライバーに、ドンマイ以外にかける言葉はなかった。だって地回りに捕まって持ってかれたお金は、ドライバーが負担するからだw


その次が坂戸の隣の駅(名前忘れちゃった、ごめん。若葉台だったかなーなんか葉っぱの漢字使う駅名だったような)

「ロータリーに停まってるベンツ行ってくれる?」とドライバーから電話が入った。歩いて向かっていると、遠目にそのベンツが見えた。ナンバーは覚えていないけど治安悪そうなナンバーのベンツだったと思う。「やだな。」と思いながら近づくと、何やら違和感を覚えた。視線を感じるのだ。

ちょっと先を見ると、ベンツの近くに堅気の匂いがしない人が一人、携帯をいじりながらきょろきょろしている。もう少し先にも、同じような人がいた。ベンツを凝視して、手にはスマホ。

「たぶん皆グルだ」と気づいた私はベンツの横を通り過ぎ、ドライバーに電話した。
「なんか仲間っぽいのが近くに二人いる。だからこれ辞めた方が良い」
「うん、俺も見てた。で、見張ってたやつの1人がいずみの後つけてる。だから一回どっか入って。電話するフリしながら。」
「OK」

私は彼氏に電話をしながら、ロータリーを出て、とりあえず歩いた。田舎の駅だったから何も店が見当たらなかったけど、とりあえず歩いた。すると少し先に、コンビニが見えた。とりあえずそのコンビニに駆け込み、トイレに閉じこもることにした。そしてドライバーに電話をかけた。

「今駅からちょっと歩いたコンビニ入りました。まだついてきてそうですか?」
「あまり近くまで寄れなかったけど、ロータリー出るまでは着けてたよ。今車動かして隣の駅まで行くから、いずみタクシー呼んで〇〇のマックで待てる?俺もつけられるかもしれないから、様子見て拾うわ」
「了解」

私はタクシーを呼んで、マックに向かった。マックに着くと、同僚の二人もそこにいた。みんなも客に着こうとしていたらしいが、ドライバーの電話でマックにタクシーで向かうよう指示されたらしい。
「やだね地回り~」なんて話しながら待っていると、30分ぐらいしてドライバーが迎えに来た。

これでもう大丈夫。と思いながら車に乗り、ボーっと窓から景色を見てるとドライバーが「さっきのベンツ後ろにいる!!」と言った。振り向くと確かにベンツがいる。

「完璧につけられてたな。仕方ないちょっと運転荒れるよ!!」とドライバーが言うと、車が揺れた。急旋回してビデオ屋の駐車場に入った後、逆方向に車を走らせた。それはもう、猛スピードで。ベンツは追ってこなかった。

「あー危機一髪だったわ完全に。もう今日はブクロ戻って飲むか!帰ろ!」と言うドライバーの一声に「よっしゃ―!飲もうー!」と騒ぐ私たち。その日の売り上げはゼロだったけど、酔っぱらったらどうでも良くなったw

人間には危機を察知する能力があるとよく言うけど、それは本当にそうだと思う。それに助けられたこともあれば、察知をくぐり抜けて来たやつに捕まっちゃうこともあるんだけど。


最後はこれも街録で話したけど蘇我。

深夜過ぎ、到着した白の1番のベンツだった。車に乗ると、絵にかいたようなヤクザが乗っていた。沢山の数珠を付けた腕に、無造作に置かれた何台もの携帯。サングラスをかけているが、なんとなくの感覚でシャブ中だと思った。逃げて降りようかと思ったけど、残念ながらホテルまでの道のりは2分ほど。信号の隙をついて降りることは不可だった。

部屋に入るなり、やくざは言った。
「お前、援デリだろう?車から降りてくるとこ写真にとってあんだよ」と言って、スマホの画面を見せられた。確実に私だ、言い逃れは出来ないと思った。その瞬間玄関のドアが開き、強そうなヤクザが3人入ってきて私の周りに立ちはだかった。頭の中で「ちょっとやばいかも」と思った。でも平然な態度でいないと、舐められてしまう。
「そうですけど。」
「困るんだよねこういう事されちゃ。ケツモチはいるのか?話が分かる奴に今すぐ電話しろ」と言いながら、私をギロリと睨む。

仕方なしにドライバーに電話した。「捕まりました。」というと「部屋どこ?すぐ行く」とドライバーが言うので、部屋番を伝えて電話を切った。

ドライバーが来て、ケツモチと電話が繋がれた。
多分金を払って終わりだろう、いつもそうだし。そう思っていたけど、電話が終わった後ヤクザはニヤリと笑いながらこう言った。

「可哀想になあ、そちらの組織はうちと敵対してるから手は出せないってよ。で、どうすんの?落とし前はどうつけるの?」

「何が希望ですか?」とドライバーが聞く。

「そうだなあ、とりあえず20万よこせ。あと女もよこせ。だな」

「20万も今日は売上ないです。」

「じゃあお前の懐から出すしかねえだろ。おろしてこい」

「いや、銀行に金入れてないんで…」

ドライバーは金を出すのが惜しんだろう。やり取りを聞きながら私はそう思った。でもヤクザは引かない。

「じゃあ家まで取りに行くしかねえな。うちのもんに運転させてお前の家まで取りに行け。あ、お前の車と、車のカギと、女は置いてけよ」

「女の子だけは勘弁してやってくれませんか。責任は自分にあるんで」

「いや、無理だな。おい、さっさと連れてけ」
ヤクザがそういうと、舎弟がドライバーの腕を掴んだ。ドライバーは心配そうな顔をしてこちらに目線を向けたが、私は睨みつけることしかできなかった。舎弟が全員部屋を出て、バタンと音がした後私は絶望した。


終わった。置いてかれた。

そう思った。信じて働いてたのに、こんな最悪の事態が起きるなんて予想もしていなかった。みんなはどうなるんだろう、わたしはどうなるんだろう、どうしたらこれをうまくおさめられるんだろう、色んなことがぐるぐるしたが、腹をくくるしかない。

「お前スマホ寄こせ。警察でも呼ばれたら困るからな。ちなみにフロントに助け読んでも無駄だぞ。ここのババアに金払ってるからな」
そう言いながらヤクザは私のスマホを取り上げた。

スマホが使えない、フロントも無理、このホテルに窓はないから逃げるのも無理だ。完全に監禁されているこの状況、逃げ道はない。

「じゃあ服脱いで風呂入って来い。」
ヤクザが封筒から注射器をだしながらそう言った。やっぱりシャブ中か…

「どういうことですか?風呂に入る意味がわかりません」

「お前が俺の相手すんだよ。てめーが人の島荒らしてんだからそれぐらい当然だろ」

「私はただではサービスしません。お金をもらわずセックスは出来ません。」

「お前自分の立場分かって言ってんの?だとしたらすげーよ。無駄口叩くなよ。」

「立場なんか関係ありません。私は風俗嬢です。金がなきゃ動きません。嫌なものは嫌です。」

ヤクザは黙ってこっちを睨んだ。私はそれでも毅然とした態度でいた。
しばらく沈黙が続いた後、やくざは諦めてこういった。

「いや、スゲーわお前。わかったわかった。金はやるよ。お前はいくらでやってんだ?」

私が絶対引かないとわかったのだろう。

「2万円です。」

財布から札を抜くと「ほらよ」と言って2万をこちらによこした。私はそれを受け取ると、風呂場へ向かった。とりあえず金だけは取れた。ただでは股を開かないという私のプライドは守れた。でもシャブ中の相手か。何時間かかるんだろう…考えるだけで嫌になる。

風呂を出ると、完全にキマったヤクザがそこにいた。
金をもらってるから仕方ない、私はそのたたないちんこを舐め続けた。


何分か経っただろうか、ヤクザが「もう一回打つから休憩していい」と言った。なんだ、休憩くれるなんて割とまともなシャブ中じゃんと思った。大抵のシャブ中は諦めずえんえんとなめさせるからだ。

私はタバコに火をつけて、ボーっとしていた。

「おい、お前。普通の女はな、ここに来たら泣くんだよ。怖くて怖くて泣きながらセックスするんだよ。お前はうんともすんともいわないからつまんない女だな」ヤクザがポンプ片手に、そう言った。

「泣いたらどうにかなるんだったら泣きますよ。ヤクザは泣いたところでどうにもならないでしょう。外道なんだから。」

「お前なんでそんな肝が据わってんだ。どっかのヤクザの女か?」

「関係ないでしょう。」

「つまんないうえに可愛げもないな、お前」

「あなたに褒められても嬉しくないのでそれでいいです。」

よっぽどつまんない女だと思われたんだろう、追い打ちが終わった後ヤクザは私にプレイを求めてこなかった。その代わり「もうすぐ捕まるんだ」だのなんだのヤクザの話をベラベラ話し出した。
こうなったら私の物。シャブ中は話し出すと止まらない。そしてヤクザはヤクザの話が好き。適当に相槌打ってれば、あとは勝手に喋ってくれる。良い時間稼ぎだと思った。気持ちよく話してることに気を良くしたのか、「困ったら電話寄こしな」とヤクザは電話番号を私に渡した。


何時間経っただろうか、ドライバーが戻って来た。それと同時に私は解放された。車に戻ると、げっそりした同僚二人が乗っていた。話を聞くと、タダでシャブ中の相手をさせられたらしい。
本当にクソだと思った。ヤクザも、この事態を招いたドライバーにも。
時計を見ると、もう朝方の5時を指している。

疲れた。一刻も早く帰りたい。

そう思った。金も渡し終えたし、このまま家帰ったら6時には着くかな、なんて考えていると、ドライバーの電話が鳴った。
そして電話を終えると、申し訳なさそうな顔で私にこう言ったのだ。

「あの組の上の方がいずみに相手して欲しいって言ってる。行ってきてくれないか?」

「は?何言ってんのお前」
「いや、もう逆らえないんだ。頼む。〇号室にいるから」
「…死ね!!」

吐き捨てるようにそう言って、私はその部屋に向かった。入ると老いぼれジジイがヨレた顔でこちらをみている。
「私もうすでにほかの方相手してるんです。あなた相手に仕事する気はありません。」と言うと
「まあまあ、そう言わずに頼むよ」とジジイ。

頭にきた私は先ほどのヤクザに電話して「なんかまた呼ばれてジジイの相手しろって言われてんだけど。どうなってんの?!」と怒鳴った。
「ごめん、電話代わって。俺が言うから」
ジジイに電話を渡した。なんかごにょごにょ言ってるけど、言いくるめられたらしい。電話が終わると「帰っていいよ」と言った。


当たり前だろシャブ中クソジジイ!!といいたいのを堪えて、車に戻った。

帰り道の車内は、お葬式のようだった。いつもならくだらない話して大笑いしながら帰るのに、誰一人言葉を発さなかった。そりゃそうだろう、こんなに最悪な日を過ごしたんだから。



ここに書いたことが、本当にあった地回りとのバトルの全貌である。他にも色々あったんだけど大抵ケツモチ同士が話して金渡して解散で終わるので、ネタに出来るほどの話はこれぐらいだ。

事務所に連れてかれたこともあれば、囲まれたこともある、でもどれが一番しんどかったか聞かれたら即答で「蘇我」と答える。だってあんな嫌な思いしたことないもん。

地回りってどんな感じですか?と言う質問が同業からよくくるけれど、そのヤクザによって違うのでなんともいえない。
蘇我のように女まで手出すヤクザもいれば、売り上げ全額持ってく暴利的なヤクザもいれば、うちは金もらってもこの地域の風俗が儲からないと困るからやるな、っていうやくざもいる。ヤクザに許可をとってやる場合、だいたい月に3万くらいそこの地域のヤクザに納めてたかな。でも地域によってバラバラ。

でも援デリ始めた当初はそんなに地回りは多くなかった気がするのだ。働いた後半くらいかな?そういうことが増えたのは。ヤクザもこんなちっぽけな金欲しいほど金に困ってんのかなあと思っていた。


小娘ごときにそんなにヤクザが動くか!って街録にコメントあったけど、向こうも業者だとわかってて来るんだからガチで来るよ。だって援デリは島荒らししてるのといっしょなんだから。勝手にその地域で商売してんだからそりゃ怒ってくるもんよ。


辞めてからしばらくたつが、当時の同僚に会うと「毎日平和だよね」という話になる。だって当時は毎日サバイバルしてるようなもんだったから。頭おかしいやつもいるし揉めるしシャブ中いるし地回りいるし働いてる女もドライバーも打ち子もみんなぶっ飛んでるしよく働いてたよね~とあの頃を懐かしむ。どんな風俗よりトンチキな毎日を送れる稼業だったな、ほんと。







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