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空間除菌の有効性について。感染症予防効果は期待できる?

インフルエンザやノロウイルスなど、感染症が流行しやすい冬季になると、

二酸化塩素による空間除菌をうたった商品がドラッグストアなどの売り場で目に付くようになります。

「お部屋の空気まるごと除菌」などの宣伝文句は、感染症予防意識の高い人々にとって、とても魅力的なものに映るかもしれません。

しかし、こうした空間除菌商品については、これまでもたびたび有効性が疑問視されてきました。

過去に実施された実験的研究から、薬剤師として空間除菌に関して考えてみようと思います。

そして調べていくうえでわかった、冬季のウイルスから体を守るすべについても書いています。

薬剤師目線:二酸化塩素について

まずは、空間除菌の主成分である二酸化塩素(ClO2)について。

高校で理系を選択、もしくは大学も理系で化学を学習した人にとってもあまり耳にしたことはない名前ではないでしょうか。

事実、私自身もこの製品が発売されて初めて耳にしました。

二酸化塩素(ClO2)ガスは次亜塩素酸ナトリウム(ミルトン、ハイター等)の約2.5 倍の酸化作用を有し、芽胞を含むすべての微生物に有効である。
要するに、ほぼすべての微生物に有効ということです。

しかし、実際には2014年に消費者庁から、二酸化塩素を主成分とする空間除菌グッズの表示について処置命令が出されました。

そういえば、最近CMなどであまり見かけない気がしませんか。

この処置命令は、景品表示法に違反する行為が認められたとして、表示を裏付ける合理的根拠が示されていないと指摘されたものでした。

実際の有効性について。複数の実験結果から

2011 年に国民生活センターが二酸化塩素によるウイルス除去や除菌作用については、複数の実験的研究によって報告されています。

そして空間除菌商品の製造メーカーは、消費者庁の指摘はあくまで広 告表現に関するものであり、製品自体の性能については、何ら問題はないと主張しています。

実際、マウスを対象にした実験ではインフルエンザウイル スに対する感染症の予防効果が示唆されています。

この研究では、ケージ内のマウスに、インフルエンザウイルスのエアゾールのみ曝露させた場合(10 匹)と、インフルエンザウイルスのエアゾールと二酸化塩素ガス(0.03ppm)を同時に曝露させた場合(10 匹)を比較した結果、二酸化塩素ガスがあった方が、3日後におけるマウスの肺の中のウイルス量が低いという結果が出ました。

しかし、この実験的環境と、実際のわれわれ人間の生活環境にはあまりにも差があり、この結果を人に対する効果として一般化することは難しいのではないかと考えます。

では人での研究はどうでしょうか。

2010年に行われた研究では、陸上自衛隊員を対象に二酸化塩素のインフルエンザに対する予防効果を検討した研究も報告されています。

二酸化塩素による空間除菌商品を設置した建物に勤務している群と、 設置していない建物に勤務している群で比較したところ、インフルエンザ症状の発症を比較すると、二酸化塩素を設置した方が発症を抑えられたという結果になりました。

とはいえ、この研究は観察研究であり、あくまで仮説生成型の研究です。

かなり難しい単語ばかりを並べましたが、要するにかなり偏った研究であると指摘されています。

実験的研究と生活環境とのギャップ

二酸化塩素ガスによる空間除菌商品の微生物除去効果で、細菌やウイルスの不活化が確認されたという結果は、どの場合でも湿潤環境下での実験で、空気中に存在するウイルスに対する効果ではありません。

実際にインフルエンザなどが流行する冬季は、乾燥しているため今までの実験条件とは到底当てはまらないものが多いのが現状です。

さらに、首から名札のようにぶら下げるタイプで身体に装着する、空間除菌グッズ 4 製品の二酸化塩素ガス放散について検討した報告では、どの製品においても 10cm 離れた場所で二酸化塩素はほとんど検出されなかったという結果になっている。

二酸化塩素は強力ですが、検出されないということは少なくとも微生物除去効果は期待できないものと考えられます。

薬剤師の視点

これまで報告されている論文が示しているのは、二酸化塩素ガスを用いた空間除菌商品の効果は、 使用環境中の相対湿度に大きな影響を受けるというものです。

微生物の除去に「効果あり」とする論文報告の多くは湿潤環境下での実験的研究であり、冬季の生活空間とは大きなギャップがある。

そして、実際の生活環境を想定した研究ではウイルスの不活化(元気をなくす)効果は明確ではありません。

そもそも、かぜを引き起こすウイルスやインフルエンザウイルス、ノロウイルスの感染経路は接触感染です。
要するに手などが触れた場所などから人にうつります。

エアロゾルによる飛沫感染もありえなくはないですが、空間除菌商品の感染症予防効果は極めて疑問です。

空間除菌商品を販売するメーカーは、感染症予防効果についてはうたっていません。
また、これらの商品は医薬品でも医薬部外品でもない「雑貨」として区分されるているものです。

現時点では、空間除菌として二酸化塩素が明確な効果を示す根拠はありません。

まとめ

今回、色々調べてみてわかったのは、

「広告に惑わされてはいけない」

ということでした。

しかし、いくつかの論文の結果を見るとインフルエンザなどのウイルスは、湿度は50~70%の環境ではウイルス量が減るということです。

乾燥の季節である冬に流行る、インフルエンザやノロウイルス。

一度かかると、つらい症状はもちろん学校や職場を休まなくてはなりません。

せめて家にいるときは、湿度を高めい保ってウイルスが嫌いな湿潤環境を作って予防しましょう。

また、予防としてはワクチンはもちろん、手洗いやマスクも重要です。

最後まで、見ていただきありがとうございました。

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