7/26マクロライド長期投与

今日は抗生物質を長期的に服用している患者が来局した。その患者はエリスロシンを飲んでおり、薬歴を遡ってみると平成31年から今までずっと処方されていた。エリスロシン(エリスロマイシン)はマクロライド系抗菌薬の1つで、適応症としては、"表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管炎・リンパ節炎、乳腺炎、骨髄炎、扁桃炎、肺炎、肺膿瘍、膿胸、腎盂腎炎、尿道炎、淋菌感染症、軟性下疳、梅毒、子宮内感染、中耳炎、歯冠周囲炎、猩紅熱、ジフテリア、百日咳、破傷風"と多岐に渡る。添付文書の使用上の注意の欄には「耐性菌の発現等を防ぐため、原則として感受性を確認し、疾病の治療上必要な最小限の期間の投与にとどめること。」と記載があり、抗菌薬は基本的に2週間ほどの投与期間で処方されるが、マクロライド系抗菌薬は長期少量投与で治療に用いられることがある。エリスロシンは中でも呼吸器系疾患に使われる傾向があり、今回の患者も呼吸器系の症状が見られて処方されたようだった。エリスロシンの局量では成人で800〜1200mgを4〜6回に分割投与するとあるが、今回の患者は200mg錠を2錠分2処方と少ない量である。マクロライド系を少量投与する目的としては本来の抗菌作用を目的とするよりかは、抗炎症作用や免疫系への作用、細菌のバイオフォルム形成や付着抑制作用といった効果を期待している。他のマクロライド系ではクラリス(クラリスロマイシン)がよく使われており、これは副鼻腔炎などの耳鼻科系疾患に使われやすい。
いずれの抗菌薬に関しても、耐性菌の出現については十分に注意する必要があり、症状の悪化や副作用の発現などがみられたらすぐに中止することも考える必要がある。