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暮らしの薬学【予防しよう!熱中症編】~②体液と脱水症


体液が少なくなることが脱水症

前項『暮らしの薬学【予防しよう!熱中症編】~①熱中症とは?』のところで、「熱中症」は過度な温熱ストレスで脱水、塩分欠乏、体温調整機能が低下するような状態になることで、「脱水症」は「熱中症」に見られる障害の一つと説明しました。
ここでは、「脱水症」についてさらに詳しく説明します。




「脱水症」は、ずばり、「体液が減少した状態」なのです。
では、体液ってなんでしょうか。体液は、血液、リンパ液、汗、尿、唾液、涙そして便にも存在する水と塩分(電解質)が混ざり合ったものです。その電解質はナトリウムイオンが一番多く、その他にカルシウムイオン、カリウムイオンがあります。そして、食事で水分を取り、尿や便、汗などで水分を出すことで体液量は入れ替わりながらいつも一定量になるように調整されています。しかし、食事がとれない、あるいは暑さで大汗をかく、下痢などで便が多く出された時は、体液量が一定量に保てず、相対的に少なくなり、脱水症になります。
体液は、栄養素や酸素、老廃物を運ぶ働きをしているため、脱水症になるとさまざまな症状が起こります。
例えば、脱水症により十分に血液が巡らなくなると、脳への血流不足から、認知機能が悪化したり集中力が低下したりします。さらに、筋肉から電解質が失われることで、足がつったり、しびれが起こったりすることもあります。体液が尿として排出される量が減少すると、尿路感染、尿路結石の原因になります。その他、肌の乾燥、口腔内の乾燥は経験した人も多いでしょう。

Q. お酒を飲むと脱水症になるのはどうして?

お酒そのものが液体であるため、水分を摂取しているのになぜ脱水症になるの?と思われがちですが、お酒を飲めば飲むほど体は脱水傾向になります。その理由は2つあります。
1つは、アルコール(お酒)には利尿作用があり、お酒を飲んだ量以上に尿として水分が出ていくことです。特にビールは利尿作用が強く、1リットルのビールを飲むことで、1.1リットルの水を失うと言われています。夏の屋外でビールを飲むのはとてもおいしいのですが、汗をかいて、一層水分が失われる状況になるため脱水状態になりやすいです。
2つ目は、アルコールを分解する際に水が必要とするからです。肝臓でアルコールが分解されると「アセトアルデヒド」という成分ができますが、アセトアルデヒドは酢酸に分解され、さらに二酸化炭素と水になり、尿や汗、呼気等になって排出されます。このアセトアルデヒドが酢酸に分解されるときに体液(水)を消費します。
アルコールの利尿作用で、体液が少なくなっていると水を必要とするアセトアルデヒドの分解が進まず、分解されずにアセトアルデヒドが増える一方となります。アセトアルデヒドは、頭痛・吐き気・動悸を引き起こし、いわゆる“二日酔い”の状態になります。

もっと勉強したい人に ~ 参考リンク・参考図書

●飲酒と脱水について(味の素株式会社)
https://www.ajinomoto.co.jp/nutricare/useful/insyu/02.html

<参考図書>
『「脱水症」と「経口補水液」のすべてがわかる本』
『知って防ごう熱中症 ―正しい予防と迅速な処置のために―』
『いのちを守る水分補給 ―熱中症・脱水症はこうして防ぐ―』

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<書いた人・監修>
藤田知子
京都薬科⼤学卒業後、メーカー勤務を経て、ドラッグストアでOTC医薬品販売から処⽅箋調剤など薬剤師業務 に従事。“薬剤師は町の科学者”をテーマに薬系新聞に寄稿、「ドラッグストアQ&A」(薬事⽇報社)を編集。