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暮らしの薬学【衣類用洗剤・洗浄編】~①衣類がきれいになるメカニズム

ミズホ「子供たちっていろんなところで服を汚してくれるのよね~、セーターやズボンとか、汚れもさまざまだけどいつも面倒だからまとめて洗濯機にぽい!あとは洗濯機によろしく~って感じなんだけど、ちゃんと汚れが落ちてるのかなぁって思ったりするのよね~。」

薬剤師ナナコ「食器洗剤のところで界面活性剤のお話をしたけど覚えてる?(暮らしの薬学【家庭用洗剤・洗浄編】②界面活性剤について)衣類洗剤にももちろん界面活性剤が入っていて汚れを落としてくれるんだけど、それ以外にいろいろな成分(助剤と言う)が入っていて界面活性剤と一緒になって油汚れも泥汚れを落としてくれるんですよ。今回は“衣類を洗う”ことを勉強しましょう。

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衣類洗剤には界面活性剤の働きを助ける成分が入っている

衣類洗剤の基本は界面活性剤です。多くの人が洗濯機を使って洗うので、洗濯機の中で界面活性剤がどのように働いて汚れを落としているのか説明しましょう。

プロセス1:界面活性剤の油性部分が汚れ(油・どろなど)に吸い付きます。
プロセス2:汚れは界面活性剤の内側に取り込まれて、洗濯槽内の水の流れにより衣類から離れます。
プロセス3:衣類から引き離された汚れは界面活性剤の働きで細かく小さな粒になります。(洗濯機の洗い)
プロセス4:洗濯機は洗いのあとすすぎ→排水→脱水により、汚れ、残った界面活性剤(洗剤)が流されていきます。

これで洗濯の完了ですね。
このように界面活性剤だけでも汚れを落とすことができるのですが、よりきれいにするためのさまざまな成分が界面活性剤の働きを高めています。このような成分を洗浄助剤ともいい、 (1)アルカリ剤、(2)分散・再汚染防止剤、(3)水軟化剤・金属封鎖剤、(4)酵素、(5)蛍光増白剤などがあります。

(1)アルカリ剤(炭酸ナトリウムなど)は、特にタンパク質や脂肪の汚れを分解して洗い落とします。

(2)分散・再汚染防止剤は、界面活性剤によって一度離れた汚れが再び衣類にくっつかないようにする働きがあります。水に含まれるカルシウムやマグネシウムなどの金属イオンは、界面活性剤の働きを邪魔したり、石けんカスというものを生じさせるため洗浄能力を低下させてしまいます。

これを防止する働きを持つのが(3)水軟化剤・金属封鎖剤です。

(4)酵素(プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼなど)は、タンパク質でできた触媒です。触媒は化学反応の速度を早くする物質で、界面活性剤の働きを活発にします。

最後に、(5)蛍光増白剤は、太陽光の紫外線を吸収し、可視光線の紫から青色の波長の光(蛍光)を放出します。ちょっとわかりにくいですが、この成分のおかげで、黄ばんだ衣類は白くきれいに見えるのです。
( ↓ ↓ 具体的には下記Q&Aコーナー参照! ↓ ↓ )

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Q.衣類洗剤の蛍光増白剤は、台所用ふきんを漂白する漂白剤とどうちがうの?

台所で使用される漂白剤は、ふきんを白くしてさらに、除菌もしてくれますよね。(暮らしの薬学【家庭用洗剤・除菌/漂白編】~②除菌/漂白成分の種類と性質 参照)。衣類洗剤に配合されている蛍光増白剤は、ふきんを白くする漂白剤とは違う働きをもっています。つまり、蛍光増白剤は汚れを落とすのではなく、白さを増すための一種の染料なのです。白く染め上げることで白くきれいに見せるのです。ただ、食品や食品の包装、また医療用ガーゼなどには、蛍光増白剤を使われることは禁じられていますので、赤ちゃんの口を拭くガーゼや“よだれかけ”などには蛍光増白剤入りの洗剤は使わないほうがいいでしょう(暮らしの薬学【衣類用洗剤・洗浄編】~③洗剤の選び方と洗い方参照)。衣類の漂白については、暮らしの薬学【衣類洗剤・漂白編】で詳しく説明します。

もっと勉強したい人に ~ 参考リンク・参考図書


界面活性剤の働きを助けている“助剤(ビルダー)” というものたち(日本石鹸洗剤工業会)

<参考図書>
すっきりわかる!くらしの中の化学物質大事典―身近な場面で理解するくらしと化学物質―
石けん・洗剤100の知識

<書いた人・監修>
藤田知子
京都薬科⼤学卒業後、メーカー勤務を経て、ドラッグストアでOTC医薬品販売から処⽅箋調剤など薬剤師業務 に従事。“薬剤師は町の科学者”をテーマに薬系新聞に寄稿、「ドラッグストアQ&A」(薬事⽇報社)を編集。