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暮らしの薬学【からだ用洗剤・洗浄編】~②成分と働き

毛髪を洗うのはシャンプーで、体はボディソープ、顔は洗顔フォームで手洗いはハンドソープ・・・体を洗うものにはいろいろな種類があります。でも汚れの落とし方はどれも同じです。洗浄のメカニズムは、家庭用洗剤(暮らしの薬学【家庭用洗剤・洗浄編】②界面活性剤について)や衣類用洗剤(暮らしの薬学【衣類用洗剤・洗浄編】①洗浄について)とも同じです。
今回は、ボディソープ、シャンプー、洗顔フォームなどに配合されている界面活性剤やその他成分とその働きについて解説しましょう。

からだを洗うのも界面活性剤におまかせ!


◇シャンプー

洗浄成分、つまり界面活性剤は、(1)陰イオン性(アニオン性)界面活性剤で、一般的なのはラウレス硫酸ナトリウムなど“硫酸系”または“スルホン酸系”があります。最近、“アミノ酸系”がマイルド性と環境へのやさしさからよく使われるようになりました。また、陰イオン性界面活性剤と併用するとその刺激を和らげる目的で両性界面活性剤や非イオン界面活性剤(コカミドDEAなど)も配合されています。それ以外には(2)コンディショニング剤(セルロース系ポリマー、シリコーン系ポリマーなど)や(3)安定化剤(金属封鎖剤など)や薬用シャンプーには、医薬品成分が入っています。薬用シャンプーに配合される医薬品成分とその働きについては(暮らしの薬学【からだ用洗剤・ケア編】)で詳しく解説します。

◇コンディショナー(リンス・トリートメント)

シャンプーすると頭皮から余分な皮脂がとれてさっぱりするけれど毛髪はなんだか滑りが悪い感じがしますよね。それは、シャンプーすると毛髪は(―)マイナス静電気を帯びてもつれやすくなり、洗浄により油成分が洗い流されてしまうからです。そこで、(―)静電気を打ち消すものとして、(+)イオンを持つ(4)陽イオン性(カチオン性)界面活性剤がコンディショナーには配合されています。さらに油成分を補い、毛髪を保護するために(5)油成分(ステアリルアルコール、シリコーン油など)が添加されています。この油成分を水成分と混ざった状態にするためにも先ほどの陽イオン性界面活性剤が存在しているのです(暮らしの薬学【家庭用洗剤・洗浄編】~②界面活性剤を参照)。このようにしてシャンプー後のコンディショナーは静電気を抑え油分を補い、指通りを滑らかにします。

◇洗顔せっけん・洗顔フォーム

固形が“石けん”で液体が“洗剤”ってイメージがあるため、洗顔フォームは合成洗剤なのかと思われがちですね。石けんと洗剤の違いについては、(暮らしの薬学【家庭用洗剤・洗浄編】~③洗剤の成分、分類 Q&A「石けんと合成洗剤はどう違うの?」)をご参照ください。固形タイプ、液体タイプどちらも基本は界面活性剤で、シャンプ―と同様に、界面活性剤を水に溶かして泡立てて皮脂などの油汚れを包み込んで水の中に分散させて水ごと洗い流します。
せっけん(固形タイプ)は、成分のほとんどが界面活性剤です。水に濡れややすい風呂場洗や洗面場に置くことが多いので、比較的水に溶けにくい(6)石けん素地(高級脂肪酸ナトリウム)を主成分にしています。しかし、カリ石けんや一部のアミノ酸系は、水に溶けやすい界面活性剤であるため、あらかじめ水に溶かしてチューブに充填した洗顔フォームに向いています。
洗顔フォームには、美容効果の期待できる植物エキス、洗った後に肌が突っ張らないように保湿成分なども配合されています。

◇浴用せっけん・ボディソープ

洗顔せっけん、フォームは顔用として存在するように、体用として浴用せっけん(固形タイプ)、ボディソープ(液体タイプ)があり、基本は同じです。固形タイプの浴用石けんのほとんどは洗顔せっけん同様に石けん素地が主成分のため、弱アルカリ性でさっぱりとした洗い上がりになります。液体のボディソープは、添加物を配合しやすいため、肌のpHに合わせ中性~弱酸性に調整することができしっとりとした洗いあがりが実現可能です。さらに、泡立ちをよくしたり、メントールなどの清涼剤を配合したものがあります。

◇手洗いせっけん・ハンドソープ

手洗いせっけん・ハンドソープも手を洗うものとしてこれまで説明したものと同じです。さらに、医薬品成分を配合した薬用せっけんは、汚れを洗い流すだけではなく、殺菌・消毒効果を期待して使用されるものがあります。
薬用に関しては、暮らしの薬学【からだ用洗剤・ケア編】で詳しく解説します。

高級な、(※イメージ)

Q. “高級脂肪酸石けん”って何が高級なの?

「高級脂肪酸石けん」は界面活性剤の一つです。石けんを製造するときにはけん化法と中和法という二つの方法があり、それぞれ微妙に違うのですが、簡単にいえば、脂肪酸という弱い酸と、強アルカリを化学的に反応させて作られるので「高級脂肪酸アルカリ塩」とも言えます。
その脂肪酸はいくつもあり、それぞれに炭素の数(C数字)によって、性質が異なりますが、炭素数が10以下では洗浄力が弱く、20以上になると水に溶けにくいので、石けんに適したものは限られます。この脂肪酸のうち、炭素数12以上のものを高級脂肪酸といい、長鎖脂肪酸とも呼ばれています。代表的なものに、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸などがあります。

もっと勉強したい人に ~ 参考リンク・参考図書


シャンプーとリンスとトリートメントと・・・(日本石鹸洗剤工業会)
脂肪酸の種類と性質(日本石鹸洗剤工業会)
高級脂肪酸石けん(日本化粧品技術者会)

<参考図書>
トコトンやさしい化粧品の本 第2版』
これでわかる!石鹸と合成洗剤50のQ&A
賢い化粧品の選び方 -スキンケアの正解は成分でわかるー
化粧品成分事典

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<この記事を書いた人・監修>
藤田知子
京都薬科⼤学卒業後、メーカー勤務を経て、ドラッグストアでOTC医薬品販売から処⽅箋調剤など薬剤師業務 に従事。“薬剤師は町の科学者”をテーマに薬系新聞に寄稿、「ドラッグストアQ&A」(薬事⽇報社)を編集。