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ジェネリック医薬品ってなにが良いの?~薬局とお金の話⑤

調剤薬局に行ったら必ずと言っていいほど勧められるジェネリック医薬品について、基本的なことから国や薬局が勧めている背景についても、薬剤師でありファイナンシャルプランナーであるgorisanが解説させて頂きます。

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<ジェネリック医薬品とは>

ジェネリック医薬品は、先発品(最初に研究開発された医薬品)と同じ有効成分を同量配合している安い医薬品です。安全性についても国家基準の安全試験をクリアしないと販売できないので、先発品と同じように使用して差し支えありません。

薬剤師の観点から見ても海外のジェネリック医薬品とは異なり、日本で販売されているジェネリック医薬品は安全性が高く、一部メーカーが不祥事を起こすことも稀にありますが、基本的には安心して勧めています。

それでも心配という方は、オーソライズドジェネリックという選択肢もあります。オーソライズドジェネリックとは、有効成分だけでなく製法まで全く同一のジェネリック医薬品であり、他のジェネリック医薬品よりは高いですが、先発品よりもずっと安いのでジェネリックが医薬品が不安という方にもオススメです。

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<特許と国策>

ジェネリック医薬品は先発品が発売されてから約20年後に発売されます。これは先発品の特許が関係しており、医薬品は発売後20年ほどで特許が切れるからです。このタイミングで先発メーカー以外のメーカーも同じ有効成分の医薬品を販売できるようになるので、研究開発費をかけていない分だけ先発品よりも安価にジェネリック医薬品を販売し始めます。

人気があったり値段が高い医薬品ほど、利益率が高いので数十社ものメーカーがジェネリック医薬品を出す場合もあれば、数社しか出さない場合もあります。それでも先発品だけよりもジェネリック医薬品が使用されたほうが、医療費は抑制されますので国家としてはジェネリック医薬品を推奨しています。

これは日本だけのことでなく海外では日本よりもはるかにジェネリック普及率が高くなっています。保険制度が充実していない国では、医療費はそのまま生活の負担となるので普及率が高くなっているという背景もありますが、ジェネリック医薬品を推進する流れはグローバルスタンダードでもあるのです。

<調剤薬局でジェネリックを勧める2つの理由>


1つめの理由は、先述したように国策だからです。調剤薬局の報酬形態も国が定めているので、ジェネリック医薬品の使用率によって報酬がアップしたりダウンしたりします(後発医薬品調剤体制加算など)。利益をあげるためにジェネリック医薬品を勧めるのは、会社として当然のことなので従業員である薬剤師もその方針に従っています。

そして2つめの理由は、薬剤師の観点から見てもジェネリック医薬品が先発品に劣るとは思えないからです。有効成分が同一であれば理論上、効果効能も同じなのでわざわざ高いほうを選ぶ理由がありません。だから無理に勧めている訳ではなく、どっちでもいいなら安いほうでいいんじゃない?と思っている薬剤師が大半です。自分や家族の薬をもらって帰るときも、ほとんどの薬剤師がジェネリック医薬品を選んでいます。

詳しい方ならば賦形剤(※註)や製法が若干異なると言われるかもしれません。確かに料理ならば微妙な差で味が変わるかもしれませんが、医薬品で重要なのは効果と安全性です。賦形剤や製法が異なっても効果は変わりませんし、安全性と効果については国家基準の試験をクリアしたものしか販売されていません。

(※註)賦形剤…粉末状の薬品を錠剤に整えたり、微量の薬品をかさましすることで服用を便利にするために加える添加剤。乳糖やデンプンがよく用いられます。

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それでも気になる方には、賦形剤や製法まで同一のオーソライズドジェネリックという選択肢もありますので、効果と安全性はジェネリック医薬品を否定する理由としては弱いです。そうなってくると、商品パッケージやブランドにこだわる場合のみ先発品を選ぶ理由となるのではないでしょうか?

もちろん先発品を選ぶのもジェネリック医薬品を選ぶのも自由です。しかし、何となく不安だからという理由で経済的メリットを放棄するのは、僕から見るとすごくもったいなく感じてしまいます。

また近年、一部のジェネリック医薬品メーカーで不祥事が相次いでおり、ジェネリック医薬品に不信感を抱いている患者さまからの質問や問合せがよくあります。確かに大きな問題ですが、これだけでジェネリック医薬品を否定されるのはすごく残念です。

このような問題が起これば、全国の調剤薬局はメーカーの自主回収に即座に対応し、卸売業者を通して当該医薬品を返品します。そして安全性と流通が確保されている医薬品へと切り替え、安定供給につとめています。

一部の問題だけをみてジェネリック医薬品はよくないと結論づけてしまうのではなく、安全性と経済的メリットについて正しく認識して頂きたいと、一人の薬剤師として思っています。


<この記事を書いた人>
gorisan
地方の小規模チェーン調剤薬局の薬剤師。薬剤師歴12年。3児の父。認定実務実習指導薬剤師。FP技能士3級。