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1vs1ではなかった勝負の綾

横浜スタジアムで連勝し、神宮へ乗り込んだ阪神ナイン。

勝ちたかった、勝たなければならない試合だった。そして勝っていたら最も取り上げられるであった場面の1つ、8回のウラ湯浅vsヤクルト打線をピックアップしたい。

真っ直ぐ2球で追い込むも真っ直ぐはカットしつつ浮いた変化球をヒットゾーンへと狙う山崎のアプローチに粘られ、カウント2-2からの8球目。

基本的には湯浅は150kmを超える真っ直ぐと140km台で落ちる球で勝負する投手だ、リリーフ投手は自信のある球で勝負するというのもごく自然であり、当然打者はこの球種を頭で描く。

インサイドへの力強い直球はカットされ、フォークもファールや見逃されてボール、外真っ直ぐもファールと得意な攻め方はほとんど逃げられた。

そうならばと第3の球種で打者の裏をかきにいくのが捕手坂本誠志郎だ。カウント2-2、ここだ。肌がそう感じた、ツイートは間に合わなかったが、ここでバッテリーは第3球種を入れると確信した。

湯浅が投じた球は打者の頭のラインへと向かい、そこから鋭く落ちてきた。見逃し三振だ、そう思ったが少し高く外れ、ボール判定。惜しかった、決まっていればどれだけ良かったことか。

ここからまた湯浅の直球vs山崎が続く。山崎に対して2球目となる第3球種は更に怖く要求は難しいだろうと思った。歩かせOKでの勝負もアリなのでは、と思わせられる粘りだったが、徐々に嵩む球数、球場の追い上げムードにネクストには山田哲人。

どう切り抜けるんだ…、そう思った13球目。坂本はベース真ん中に身体を置き、ミットはやや内寄りに構えた。

それがあったか…!坂本の構えたミット目がけて湯浅が渾身の力を込めて腕を振った。投球は吸い込まれるように坂本のミットへと収まった。

神宮球場へ駆け付けたヤクルトファンの追い上げに期待するムードは、阪神ファンの歓声へと一瞬で変わった。

真ん中低めを狙った球はそこから少し高く来て真ん中に近いコースであったが見事に見逃し三振に仕留めた。

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いや、真ん中だろ。山崎が運良く手を出さなかっただけ?

そうではないと私は思う。低めの落ちる球は見逃し、浮いた変化球をヒットゾーンへ、真っ直ぐはポイントを遅らせてファールにする山崎のアプローチ。

真ん中のゾーンより少しでも低く球が放たれればフォークを疑うのは当たり前だ、そこに真っ直ぐをドンと突き刺す、というイメージをあのタイトな場面で描き、要求したのだ。

あの場面で第3球種を要求する度胸と準備、ラストに真ん中低めに真っ直ぐを持って来れるインサイドワーク。これぞ"坂本誠志郎"を見せてもらった。

野球はチームスポーツだが、投手vs野手。つまり1vs1が繰り返されていく。そんな中で1人じゃないぜ、サポートする捕手。そういった所に目を少し向けるといつもと違う見え方があるかもしれない。

また明日もそんな楽しみに出会えることに期待している、明日は勝ちという最高の勲章も掴みたい。


#阪神タイガース



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