将棋自戦記#5~第5期指す将順位戦第5局~vs錯覚トマトさん

 こんにちは!指す順の対局後にnoteあり、やきそばです。今回は第5期指す将順位戦B級3組5回戦より、錯覚トマトさんとの対局を振り返っていこうと思います。振り飛車党対決ということで、戦型が気になる方も多かったのではないでしょうか!(自意識過剰)前置きは短めにして、早速いつもの流れで振り返っていこうと思います!

局前の準備~錯覚トマトさん編~

 錯覚トマトさんは四間飛車中心の振り飛車党。どこかで見かけた居飛車宣言とは裏腹に、きっちり今期の指す順でも振り飛車は投入していた記憶があります。24のレートも900台後半が中心で、B3としては高い棋力が伺えます。そして私は若干不調気味。レートも普段を下回る日が続き(対局当日にはある程度戻りましたが!)少し自信を失っていました。
 ではどう戦っていくか、と棋譜を拝見したところ特徴的だったのが先手番での戦型選択。「初手▲7八飛」「初手▲6八飛」の採用率が非常に高く、何筋に振るのか宣言して指す力強い雰囲気が感じ取られます。定跡に対する知識も一程度以上のものがあると伺えますから、ガチガチの対策はかえって知識不足が祟る展開になるだろうと踏んで結局対応に迷う形に。そして今期としては初めて、「初手以降の手順を確定させない」方針で指すことにしました。今までは▲3四歩△7六歩なら~~と細かく序盤数手を決めていましたが、今回決めたのは以下のようなざっくりした感じ。

 先手番なら
 ・居飛車を見せて四間飛車には▲4六銀(右銀)急戦
 ・居飛車を見せて三間飛車には陽動相振り
  (▲2六歩▲2七銀型で銀冠狙い)
 後手番なら
 ・振って来たら左玉
 ・振って来なければノーマル三間(隙あらば石田)

 ▲4六銀左急戦ではなく、右銀の方にしたのは単に変化手順が少なそうだったから。山田定跡~鷺宮定跡までの流れを頭に叩き込むには至ってませんし、棒銀も丁寧な勉強が必要ですから、左銀には舟囲いの位置で大人しくしてもらおうという魂胆。あわよくば▲6八金上として金無双にし、流行に乗った風を装うこともできます!
 陽動相振りは詳細を省きます。今後も角換わり模様などで陽動振り飛車は指す可能性があります。といっても陽動は目的ではなく、自分にとって指しやすい形に持ち込むことを目的に指すので、陽動にはなっていないかもしれません。
 そして本局は後手番から左玉を選ぶことになります。これも「知らない定跡形より指し慣れた力戦形」という狙いですね。さりげなく後手番、今期5連続な気がします。間違いじゃなければ、この自戦記も全部相手視点の図面を並べているような・・・!?さすがに段々気になってきました。気にしちゃいけないんでしょうけど、次は先手番欲しいな~!
 そういえば、対局当日にこえだめPさんが取り入れているダッツ定跡を導入。大好きなミニサイズのスーパーカップを食べて気合いを入れるようにしました。麦茶をコップに用意して、スタンバイOKです。アイスでおなかが冷えて、対局直前に腹痛に苛まれたのは内緒!(無事指し切りました)

左玉を”知って”いる

第5期指す将順位戦B級3組
令和2年8月6日20時
於・将棋倶楽部24 大阪道場「レーティング対局室」
▲錯覚トマト △やきそば(持ち時間各15分、秒読み60秒)
▲7八飛 △3四歩 ▲6八銀 △4二銀
▲4八玉 △4四歩 ▲7六歩 △6二銀
▲3八銀 △5四歩 ▲3九玉 △4三銀
▲5八金左△5三銀 ▲4六歩(第1図)△3三角
▲7五歩 △2二飛 ▲3六歩 △7二金
▲5六歩 △5二金 ▲5七銀 △1四歩
▲1六歩 △2四歩 ▲7四歩 △同 歩 
▲同 飛 △7三歩 ▲7六飛 △4二玉
▲7七桂 △3二玉 ▲6六歩 △4二角
▲6五歩 △3三桂 ▲9六歩 △2一飛
▲9七角 △2五歩(第2図)

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 対局が始まって、錯覚トマトさんの飛車が6筋を通り越して7筋に着地するのを見届けます。三間飛車やないかーい!というツッコミに要した時間は30秒。少し悩んで左玉の決行を決断。直後に迎えた▲4六歩の局面が1つ目のポイント。
 左玉には色々な形があります。序盤に詳しい方は他にいるので解説は別の場所に譲るとして、私は△6二銀~△5三銀まで上がって二枚銀を決めてしまってから△4五歩の突き越しを入れたい派。序盤の数手で「何やってるんだろう」と思った方も多かったかもしれませんが、左玉を指す人からすれば「露骨に左玉を組もうとしているな!」と▲4六歩は自然な一着。錯覚トマトさんはおそらく左玉経験者。いわゆる「高田流」の理想形に組めないことは分かっていたので、角の使い方を意識するよう心掛けて序盤を進めていくことになります。
 対する錯覚トマトさんは▲5七銀型と石田流の組み合わせ。いかにも三間飛車らしい構成ですね。▲2八玉とは入らずに左玉の攻めを回避しつつ、歩を突きだして玉頭への反撃をいつでもできる状態に整えていきました。第2図に至ってはお互いの言い分を通しあう展開で、互角ながらも後手不満のない駒組みにできた好感触の序盤戦でした!

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振り飛車の絶対手筋

第2図以下の指し手
▲9八香 △6二銀 ▲7九角 △2六歩
▲同 歩 △同 飛 ▲2七歩 △2一飛
▲4八銀 △6四歩 ▲同 歩 △4五歩
▲同 歩 △6四角 ▲5五歩(途中2図)△同 角
▲3七銀左△6四角(第3図)

 角交換はいずれしたいので△6二銀と揺さぶり、飛車先交換を入れてから△6四歩と仕掛けます。△6四角と出た場面は景色もよく技をかけられそうな空気でしたが、▲5五歩が振り飛車らしい手筋!この手をうっかりしていました。杉本先生の手筋本にもこの手は紹介されていたなあ、なんて思い出しながら対応を考えます。

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 このラインに角を出た狙いは3七の地点を受けてもらうこと。ココセの手順だけ示せば、▲3七銀左△2五桂からパスなら3七の地点に殺到康光で△2七飛成を見せるようなイメージ。しかし▲5五歩は先手の飛車も通り、角もいるため▲4六銀と出る展開が目に見えます。AIに聞けば▲5五歩は最善ではなく、▲3七桂と跳ねるくらいで先手十分ということですが、実践的には▲5五歩でシビれている所なのかなというのが私の所感。自陣の銀も活かすことができず、全体的に指しにくいと思わざるを得ない苦しい展開になりました。経験的には負けパターンに入っています。

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力戦はパワーだぜ!

第3図以下の指し手
▲3五歩 △同 歩 ▲同 角 △3四銀
▲4六角 △同 角 ▲同 銀 △6六歩
▲3五歩 △2五銀 ▲3七桂 △3六歩(途中3図)
▲2五桂 △同 桂 ▲2六歩 △3七歩成
▲同銀引 △同桂成 ▲同 銀 △3六歩
▲同 銀 △3七銀(第4図)

 先手は3筋から仕掛けました。AI的にはこの辺りで若干先手が形勢を損ねているようで、一番近いところで先手+100点台まで形勢が縮まります。しかし△3四銀~△4六同角あたりの形勢判断は先手よし。左玉なのに玉頭で戦ってどうするんだ!というのがその理由。しかし何もしなければ痛いところをひたすらにつつかれる展開になるのは目に見えているというものです。こうなれば形勢を損ねても前に進むのが勝負というもの。第一弾として△6六歩と罠を張り(うっかり取ってくれる夢はずっと見ていました!)△2五銀~△3六歩で決戦を挑みます!

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 途中3図から▲2五桂△同桂▲2六歩に△3七歩成!▲同銀引△同桂成と切り込みます。これで後手からいつでも△4四桂があり、何があって詰まされても文句の言えない情勢に。しかし攻めると決めたからには攻めに出る一手。ひたすら絡んで銀を打ち込んだ局面は何となく形勢を手繰り寄せた感じがして楽しかったのをよく覚えています。

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野蛮に攻め、野蛮に散る

第4図以下の指し手
▲4八金上△同銀成 ▲同 玉 △4六桂
▲4四桂 △4二玉 ▲6四角 △5三銀
▲4六角 △6一飛 ▲6二歩 △同 飛
▲3四歩(第5図)△2三歩 ▲6三歩 △同 飛
▲6四歩 △同 銀 ▲3三銀 △5一玉
▲5二桂成△同 玉 ▲3五角 △6七歩成
▲4一銀 △4三玉 ▲4四金
まで、109手で錯覚トマトさんの勝ち
(消費時間=▲15分、△15分)

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 前掲の第4図からは角を打って攻めを繋ぐ手があったようですが、イマイチ成算が持てずに本譜ではすぐに金銀交換に。そこからも飛車を転回するなど、攻めを見せて楽しむ将棋を続けましたが右側への逃走は叶いませんでした。楽しかったのはいいのですが、逆に途中から負けを意識しながら指したのは勝負としては良くなかったですね。逆転のアヤをもう少し探って、引くところは引く将棋にしていれば錯覚トマトさんのミスを誘えたかもしれません。最後は短手数の詰みに打ち取られてシリーズ3連敗となります!
 途中、上に載せた▲3四歩の突き出しが印象的でした。放っておけば角を覗かれるし、歩を拠点にした攻めはいくらでもあって「筋!」という感じの手ですね。指されて強いなあと感心している場合じゃないんでしょうけど、とても勉強になりました。

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局後の感想と、次局に向けて

 これで今期の成績は2勝3敗。研究勝負で連勝したのをきっかけに調子にのり、そのまま連敗街道に突入したといったところでしょうか。勝てない悔しさや辛さもひとしおですが、若干心境の変化が出てきた気がします。
 前期の降級を経て、はじめに昇級を目標に設定。勝つための対策を中心に勉強を進めて行きました。ただこれは指す順そのものを目標にしているだけであって、上達が目標になっていなかったんだと思います。棋力向上ができていれば、今頃自己最高レート帯に居てもおかしくないですからね。一方、指す順が進むとともに一緒に将棋を指して下さる方が増え、指す順の交流の側面を楽しむように考えがシフトしていきました。今の私は指す順に参加すること自体が目的になっており、「わいわい楽しんで指すことができたらいいなあ」と考えながら席につくようになりつつあります。
 勝負にこだわるのも、楽しむことに振り切るのも良い事なのには違いないんです。ただ、前期の参加目的であった棋力向上の志が減ってきている気がしています。その辺りは修正をかけながらも、勝負や交流を楽しむ気持ちは切らさずに、バランスよい状態に持ち込んで後半戦を戦っていきたいなというのが今の心境。なんだかネガティブに聞こえた方も居たかもしれませんが、私自身としては前向きなので問題ありません!ヨシッ!(現場猫)

 さて次局のお相手は天GAMIさんですね。彼とは別の大会での関わりがあり、今期指す順当たると知ったときには驚いたことを覚えています。別の棋戦で当たった際には勝ちを拾うことができましたが、15分60秒の24に舞台を移したときにどうなるか。戦型選択もこれまた若干幅広くなりそうですね。勉強方針自体は本局と同じく、詰将棋などの戦型に左右されない実力を鍛える方向で進めて行こうと思います。そしていつになったら私が先手番を握ることができるのか、ということにも注目していただければと思います!
 では今回はこの辺りで。今後ともどうぞよろしくお願いします~!

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