将棋自戦記#3~第5期指す将順位戦第3局~vsボロネーゼさん

 こんにちは!早いもので指す将順位戦も第3局を指し終えました。組み合わせ発表から第1局までの間がとても長かったのですが、はじまれば2週間に1局ペースというのはあっという間ですね!
 さて本局はボロネーゼさんとの対局。ボロネーゼさんは今期が指す順初参加。わたしも2期目ですので当然初手合でした。開幕2連勝で迎えた本局、結論から言えばここで私は初黒星となりました。指す順の振り返りそれ自体を楽しむべくスタートしたこの自戦記。敗局の振り返りこそが上達のためには重要ですね。どこを変えていくべきか、じっくりと改善点を探っていきましょう!!

局前の準備~ボロネーゼさん編~

 局前の準備ですが、本局はこの時点で敗着(?)があったかもしれません。前局のvsアカサビさんでは序盤数手の傾向を分析することで、先手番・後手番での戦型を組み立てました。作戦通りの戦型に誘導することができたので、この成功体験を大切に!とボロネーゼさんの分析に取り掛かります。
 ボロネーゼさんは棋譜を拝見した限りでは居飛車党。角換わりと雁木を使い分けており、場合によっては序盤で角道を止める将棋が多い印象でした。特に先手番で横歩取り模様になった場合には、手損を厭わず(この場合は実質後手になりますよね)角換わりを選んだり、角道を止めて力戦に持ち込むことが多いようです。指す順第1局のdaidaiさん戦で角換わりをしているイメージがあったので、先後問わず角換わりが戦型予想の本命でした。しかし、雁木の可能性を残されるとなるとそうはいきません!「角換わりも指す振り飛車党」の私に相居飛車なんてできっこないのですから!!!
 ゴホン。ではボロネーゼさんの対振り作戦はどうでしょうか?見てみると基本的には居飛車穴熊やミレニアムといった持久戦が多く、自玉を丁寧に固めて戦うようにしている様子。では石田流orゴキゲン中飛車で、穴熊に組ませて戦おうというのが今回の作戦設計でした。
 しかしこれでは少し甘かったようです。それもそのはず、石田流やゴキゲン中飛車をどのように指していくかといった方針までは決めていませんでした。前局は「角換わり棒銀(端棒銀)を受けて△2二銀打とがっちり受け合う」とまで決めていました。さすがに対振りは戦型も色々あるでしょうが、もう少し深い想定をする(中途半端になるくらいならこういう事前研究はしない!)ことが大事でしょう。やるならやる、やらないならやらないが私には合うのだと思います。

対局開始、浮き飛車作戦の是非

第5期指す将順位戦B級3組
於・将棋倶楽部24 大阪道場「レーティング対局室」
▲ボロネーゼさん △やきそば(持ち時間各15分、秒読み60秒)
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △5四歩
▲2五歩 △5二飛 ▲4八銀 △5五歩
▲6八玉 △3三角 ▲7八玉 △6二玉
▲5八金右△7二玉 ▲7七角 △8二玉
▲6六歩 △7二銀 ▲6七金 △5四飛
▲3六歩 △4二銀 ▲8八玉(途中1図)△5二飛
▲9八香 △5三銀 ▲3七桂 △5四銀
▲5九銀 △6四歩 ▲6八銀右△4四歩
▲1六歩 △9四歩 ▲9九玉 △4二飛
▲7八金 △5二金左▲8八銀 △3二飛(第1図)

 対局室に入ったときには対局がスタートしている、それがネット対局とリアルの違いでしょうか。○時○分入室、みたいな演出ができないですね!
 本局は後手番。これを書いている今気づいたんですが、3局連続で後手番だったみたいです!今は私のなかでの戦型選択も広がっているので、後手番自体は苦ではないですが、次も少し意識してしまいそうです(笑)。
 予定通りのゴキゲン中飛車に真っ直ぐ穴熊に囲うボロネーゼさん。右銀まで穴熊に固める指し方はあまり相手にした経験がなく、どこでポイントを稼ごうかなと少し迷います。結局△5四飛~△3四飛の石田流組み換えルートを選択。ところが▲3六歩と突かれて困ります。これでは石田流にできません。この辺りは完全に経験不足があらわになった手順かと思います。結局浮き上がった飛車は再び沈み、△4二飛~△3二飛と下から石田流を目指していくことになりました。

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 さて途中1図は▲8八玉と寄ったところ。ここで本譜△5二飛と撤退させましたが、例えば△5三銀~△4四銀や△4四歩~△4五歩といった筋はなかったでしょうか。我が家のPCソフト(割と最近の水匠)は10分程考えて「①△5三銀~△6四歩~△9四歩~△4四銀」のルートや「②△4四歩~△6四歩~△9四歩~△4三銀」の組み立てを示してくれました。5番手くらいまで聞いてみましたが評価値の誤差は100点程度、そのなかに△5二飛もあり、決して悪い手というわけではなかったようです。ですが私の△5二飛は「石田流を目指すなら引いたほうがいいかー」くらいの消極的な飛車引き。狙いも相手に有効打を与えるようなものではありませんから、浮き飛車の利を生かして銀を出る手順は参考にしたほうが良さそうですね。
 戻って本譜は三間飛車に回ってから、なんとかして捌こうと躍起になっていきます・・・。

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無理を通すが故の敗着

第1図以下の指し手
▲7九銀右△4二角 ▲2六飛 △3五歩
▲同 歩 △同 飛 ▲3六歩 △3四飛
▲5六歩 △同 歩 ▲6八角 △5三角
▲3五歩 △4五歩 ▲5六飛(途中2図)△5五歩
▲3六飛 △3二飛 ▲2四歩 △同 歩
▲3四歩 △3五歩 ▲同 角 △3四飛
▲5三角成△3六飛 ▲5四馬 △3七飛成(第2図)

 第1図の時点では作戦負けがはっきりしています。堅牢な四枚穴熊(角付き)がそびえ立ち、後手には主張らしい主張がありません。第1局のvsとよしさんでは勝負形に持ち込むことができましたが、それは争点を作ることができたから。本局は飛車角を捌いてなんとか、というところを目指しますが押し引きに失敗!途中2図の▲5六飛を完全に見落としており精神的にも劣勢を感じるところでした。

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 本譜はここから△5五歩に▲3六歩と一旦は穏便に済ましてもらいましたが、単純に▲3四歩△5六歩の踏み込みも先手成功だったと思います。そもそも穴熊は堅さを主張に捌きあいを制してしまう戦法ですから、大駒の交換だけを単純に狙うのも良くない話ではありますが・・・!それでも殴り合いにしなければリードを縮めることは叶いません。たとえ評価値が悪かろうとも、自分にとって指しやすい形に誘導する方がアマの将棋では大事だと思います。ですが本譜の手順はここからがひどく、実質銀損の飛車角交換といった模様になりました。感想戦ではこのあたりについても話がありましたが、やはりもう少し落ち着いた手順を示して頂きました。本譜の手順をほぼ一本線のように(消去法で他の手を消しつつ)読んでいましたから、もう少し手広く考えていくべきですね!ここも大きな反省点でした!

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攻め合いの筋があったか!?

第2図以下の指し手
▲5三歩 △6三金 ▲5五馬 △4八龍
▲5二銀 △5八飛 ▲6一銀成△同 銀
▲4五馬(途中3図)△7二銀打▲6八金引△5三飛成
▲2六角 △4七龍 ▲5三角成△4五龍
▲6三馬 △同 銀 ▲5一飛 △7二角(第3図)

 ▲5三歩と叩かれ拠点を作られ、天王山の▲5五馬に▲5二銀の打ち込み!後手がどんどんシビれていきます。いつ投げたっておかしくない形勢ですが、ここは指す将順位戦。そう簡単に食い下がるわけにはいきません。君たちが頼りだと言わんばかりに△4八龍~△5八飛と打ち込みます。速度では当然負けていますが、△7八龍▲同銀△同飛成のときに7六にいる金が浮いているでしょというのがこちらの主張。相手の攻めが失敗すれば、こういう手順もあるのかなと考えつつ打ち込みました。ですがこれはボロネーゼさんの▲4五馬が絶品でしたね!

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 金に当たってるのが痛いのなんの!攻防によく効いていて最高です。感想戦でもこの前後が話題の中心になりました。主に先述した△7八飛成からの攻め筋がどこかで入らないかという検討で、ボロネーゼさんもその手順は警戒していたとのこと。踏み込みのタイミング次第では刺さっていたかもしれません。もっとも先手の攻勢が続くことは予想されますから、それを凌いで逆転することが前提になりますが!実戦的に言えば、相手の気になる攻め手順なら実行しておくべきでした。本譜はこの攻め手順を見送り、▲6八金引と冷静に引かれて攻め味を失うことになりました。

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矢が尽き刀折れるまで

第3図以下の指し手
▲5三歩 △4二龍 ▲2一飛成△5三龍
▲1一龍 △4四角 ▲2一龍 △6六角
▲7五桂 △同 角(第4図)

 第3図時点の△7二角。根性の受けとも、やけっぱちとも言える受けですね。相手は穴熊。差し違えるのが目的ではなく、攻めに変調が起きるのを待たなければなりません。しかしボロネーゼさんの指し手は正確そのもの!確実に、確実に急所に攻めが入ります。自陣竜を受けに使って粘れど、具体的な攻撃なターンは回ってこない!それでも粘ってやると必死に必死に指し継ぎます。

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攻め駒が尽き心折れて

第4図以下の指し手
▲同 歩 △7六桂 ▲5一金 △6二銀
▲6一金 △同 角 ▲同 龍 △5一金
▲5四歩 △6一金 ▲5三歩成△同 銀
▲2一飛 △5一歩 ▲5八香 △6二銀
▲4三角    △8八桂成▲同 銀 △7二銀打
▲3四角打△5二桂 ▲5三歩 △4九飛
▲5二歩成△同 歩 ▲同香成 △同 銀
▲同角成 △同 金 ▲同角成
まで、129手でボロネーゼさんの勝ち
(消費時間=▲15分、△15分)

 第4図の角切りから△7六桂が最後の攻勢。急所の桂を食いちぎって焼け石に水だと分かっていても、攻撃の手は止められません。投了のとき、多くの人は「負けました」「参りました」と言いますが、「ありません」というフレーズも世の中にはありますよね。これを知っているとちょっとツウというか。でもなかなか言う人って少ないと思うんです。ただこの投了を表すなら「ありません」でしょう。もちろん負けは認めるのですが、まさに次に指す手がないのです。完膚なきまで叩きのめされましたね。完敗でした!

次局に向けて

 あそこまで粘るなら、逆転模様の一つでも作るべきだったのかもしれません。しかしそれをさせないのがボロネーゼさんの強さでしたね。本局は仕掛けや反撃手順を中心に丁寧に感想戦をして頂きました。毎回思いますが感想戦をじっくりできるというのは指す将順位戦の魅力だなとしみじみ思いますね。Twitterを将棋用に運用し始めてある程度経ちますが、将棋を通じて出会った方は皆さん本当に良い人ばかり。日々感謝してもしきれません!これを糧に力をつけねばなりませんね。次に向けて反省点はたくさんあります。

・序盤の準備をするなら細かい戦型まで決める事
・作戦負けをする手順が見えていても、諦めずに他の手段を探す事
・中終盤に踏み込まないことで、かえって勝ち味を失わない事

 普段、調子が悪いときの私は読みの粗い攻め筋を暴発させて負けることが多いです。対して指す将順位戦は緊張感から踏み込めない将棋が多いのが現状の課題。敗局がいいところなしに終わる、というのは弱気の現れと言えるでしょう。逆に調子のいいとき、勝てる私は選択肢を用意しながらも勝てる筋を吟味して(当社比)勝つことができるんですね。第1局・第2局での連勝は消極性が丁寧に読むことに繋がっていました。これは紙一重と言えます。だからこそ、準備は大事なんだなあと思います。本局は今までで一番準備段階での自信がありませんでした!もちろん第1局のように予定から大きく外れることもありましたが、それでも多少自信を持つことはできていたはずです。

 第4局のお相手はのののさんです。ここが終わって3勝1敗と2勝2敗では見える景色が違います。皆さんとのTwitterでの絡みが少ない私であっても快く対局をして下さり(負かされ!)、そしてなんと野良で見かけたときにも挑戦をして下さる!(そして負かされる!)とても心優しいお方。ですが次だけは負けるわけにはいきません。丁寧に準備をして挑みます。
 ここまで長文お読みいただきありがとうございました。今将棋界隈は叡王戦の持将棋に大盛り上がりですが、指す順も段々と昇級・残留に向けた序盤の戦いにめどが立ってくる頃です。真夏の勝負を、見逃すな!!!

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