将棋自戦記#4~第5期指す将順位戦第4局~vsのののさん

 こんにちは!本日は指す将順位戦4回戦の自戦記になります。もともと自戦記の執筆に相手の方の許諾は不要なのが指す順ですが、今回はのののさんと相互に許諾を取り合っての執筆となります。対局直後の報告ツイートがいつもの4倍の文量になったことからも、私のテンションの高さが伺われますね。いつもよりちょっと(?)キモさ増量中になりますが、生暖かい目で見守って下さると嬉しいです!


局前の準備~のののさん編~

 前回から準備の方法自体は変えていません。しかし一体どうやって相手の方の分析をしているかというと、対局相手の棋譜集めくらいなものです。そこから、序盤数手分のパターンを全部書き出して分類して楽しんでいます。これは手段が目的になっている典型的な例で、やった時点で満足しているのがよくないのですが・・・。先手、後手で採用する戦型に違いがあったり指し手のクセが序盤数手にも見えてとても楽しいんですね。やめられません!
 さて、のののさんは対振りではミレニアム党、但し中飛車には居合抜き超速(?)や穴熊、三間飛車には早仕掛けを採用することもあります。どれも相手にして自信のある戦法ではありません。え?じゃあ石田ゴキ中党のお前は何を相手にすれば勝てるんだって?さあ・・・。相居飛車では角換わりと相掛かりを指されますが、けっこう力戦形も多く指されますね。横歩取りや嬉野流の実戦例もあって、居飛車のオールラウンダーという印象です。ちなみにのののさんには過去2局教えて頂いたことがありましたが、いずれも角換わり相腰掛銀で0勝2敗。ちょっと勝てるイメージが無いなと悩みのタネはつきません。
 そうこう悩むうちに事件が起きます。それはのののさんの3回戦の将棋。右玉対策に一点集中したのののさんは、先手中飛車を採用し完勝。2回戦の右四間elmo採用に続けて巧みな事前準備が光る指し回しを見せつけました。こうなってはもう何を採用されても驚きません。相振りすらあり得ます。将棋を考える時間=のののさん対策の時間となり、だんだん深浦先生の気持ちがわかるような気がしてきました。ですがとにかく大事なのは、どの戦法で来られても自分の指し方を決めて序盤を進めること。余談ですが、本自戦記を書くに当たって「対策」とは何ぞやと少し悩みました。ですが要は「相手の戦法」に対する「自分の戦法」の組み立て方であって、のののさんに限らず本来は匿名の対局と同様に考えられる事なのですね。幅広く自分の指し方を見直し、直前まで悩んで決めた作戦は以下の通り。

先手番の場合
①▲7六歩△8四歩→角換わり模様(実現性75%くらいの見立て)
②▲7六歩△8四歩以下角換わり模様に△3四歩不突→ひねり飛車(5%)
③▲7六歩△3四歩→▲7五歩に対抗形が(10%)or相振りなら左玉(5%)
④▲7六歩△5六歩→▲7八飛で相振り(5%)
後手番の場合
①▲2六歩△3四歩▲7六歩→△3四歩からゴキゲン中飛車(50%)
②▲2六歩△3四歩▲2五歩→△3三角からノーマル三間(25%)
③▲5六歩→△7六歩以下、先手中飛車には三間飛車で相振り(10%)
④▲7六歩△3四歩▲6六歩→振り飛車なら左玉(10%)
⑤▲7六歩△3四歩▲7五歩→相振りにせず対抗形で勝負(5%)

 ・・・・・・パターンが多い!!角換わり模様の対策は、将来のののさんと再戦する日に備えて今は秘密のままで。本局はのののさんの初手▲5六歩で戦型が決まる事になります。
 対局予定日にレッドブル(めっちゃ美味しい)・かりんとう饅頭(めっちゃ美味しい)を購入。30分前にカフェインを体に入れて、対局中にかりんとう饅頭で糖分補給をする作戦でした。ですが実際は対局が延期になり、かりんとう饅頭は即日胃袋に収納されることに(美味しかった)。これもまた美味しい菓子パンを代打に登用して当日を迎えることになりました。
(レッドブルは30分前に飲みました!)

▲5六歩に燃えるハート

第5期指す将順位戦B級3組
令和2年7月24日20時
於・将棋倶楽部24 大阪道場「レーティング対局室」
▲ののの △やきそば(持ち時間各15分、秒読み60秒)
▲5六歩 △3四歩 ▲5八飛 △3二飛
▲5五歩 △5二金左▲5六飛 △4四角
▲4八玉 △1四歩 ▲1六歩 △6二玉(途中1図)
▲6八銀 △3五歩 ▲3八銀 △7二玉
▲5七銀 △3四飛 ▲9六歩 △9四歩
▲9七角 △4二銀 ▲8八角 △3三角
▲7六歩 △5四歩(第1図)

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 緊張と高揚感で心が揉みくちゃになりながら開いた大阪道場。のののさんのアカウントをクリックしたところで先に挑戦が飛んできました。気合いを入れて挑戦を受諾すると、初手は▲5六歩!!中央の歩が前身した姿を見て「ははは!マジか~!」と声が出ました。もう既に変なテンションになっていたのが分かります。序盤党卒業とのののさんは言ってましたけど、細かい変化をかなぐり捨てて根元で対策を取ってくるのが本局の趣向でしたか!
 相振りの定跡は勉強したことがありません。しかし経験で自分なりの指し方は身に付けてきたはずです。のののさんにゴリゴリ攻められる展開にならないよう意識しながら駒組みを進めます。しかし先手は浮き飛車から端角で積極的に揺さぶりをかけ、私の玉は美濃と金無双の分岐点で立ち往生することになりました(これを舟囲いと言います)。
 浮き飛車に石田流風に構えて対抗。左銀を中央に寄せる形はいつでも▲2六飛とする手があって正直気持ち悪いのですが、本譜の△5四歩がそれを上回る好感触。いずれ▲7八金か▲7七角とされる未来は見えていますが、互いにペースを握り合うような将棋にできたので十分とみていました。

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長考に読み抜けあり。直感に好手あり。

第1図からの指し手
▲2六飛 △2四歩 ▲4六銀 △5五歩
▲4五銀 △6四飛 ▲7八金 △5六歩(途中2図)
▲3三角成△同 桂 ▲5六銀 △2五歩
▲4六飛 △2四飛 ▲7七桂 △8二玉
▲5五銀 △5四歩 ▲6六銀 △7二銀
▲7五歩 △4四飛 ▲5六飛 △6四歩
▲5五歩 △5三銀 ▲5九飛 △2四飛
▲4六角 △5五歩 ▲同 角 △4二銀
▲4六角 △6三金(第2図)

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 途中2図の△5六歩に4分の長考。もう少し前から見えていた歩突きでしたが、角交換後の展開で技を掛けられないかというのをずっと考えていました。▲同銀には△8八角成▲同金に△5五歩で△6七飛成が狙えて良し。▲同飛は直接△8八角成▲同金△6七飛成。じゃあ▲3三角成には…△同桂が銀当たりで▲5六銀に△5五歩が効くからこれは良い手だな!とよくよく確認して突きました。・・・あれ?なんかおかしくない?
 そうです。△5六歩に▲3三角成△同桂▲5六銀に△5五歩は大した効果がありません。長考って色んな変化を考えたり、自分の読みに裏付けしたり、手を比較するためのものだと思うんですが、なんと長考して考えた手順の最後が手拍子の悪手だったんですね! しかしそれに気づいた頃には既に▲5六銀の局面です。きっと控え室では「ここで手が止まるようでは変調」との声が上がっていたことでしょう。もちろん長考した手前あんまり時間を使って考えたくはありません。30秒焦った後、30秒考えて最初にぱっと思いついた△2五歩を選び直します。以下△2四飛と転回するまでは我が家の水匠さんも納得の最善手。慌てて指した手の方が良い手順だったみたいです。
 以下は、△2八角と打ち込む味があるか無いかで迷いながら手をじりじりと進める中盤戦になりました。その間に美濃囲いが完成できて一安心。ソフトの結論は「打ち込め」なんですが、どうも打った角の働きが悪いように思えて決断はできませんでした。また△2六歩を突き捨てて△2八歩や△2七歩を打つ手も考えましたが本譜すぐには実現せず。やるなら第2図の△6三金が不要不急の一手で、ここでやるべきでした。直前の△4二銀に代えて△4四銀の変化を読んでいた影響か、本譜で6四の歩に飛車でヒモがついていることを見落としていたんですね。ヒモがついてるなら△6三金と過剰防衛はせずに△2六歩と突いてみたいところです。

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過剰反応

第3図からの指し手
▲5三歩 △5四歩 ▲5二歩成△同 金
▲3五角 △3四飛 ▲4六角 △2六歩
▲3九玉 △2七歩成▲同 銀 △4四飛
▲3八金 △5三銀 ▲9五歩 △同 歩
▲5五歩 △5一金 ▲5四歩 △6二銀(途中3図)
▲5五銀 △5八歩 ▲同 飛 △5七歩
▲同 飛 △4五桂 ▲5九飛 △3四飛
▲6四銀 △同 金 ▲同 角 △6三銀打(途中4図)
▲5三角成△5八歩 ▲同 飛 △6九角
▲6八飛 △7八角成▲同 飛 △5七桂成 (第3図)

 ▲5三歩の垂らしは取り切って後手よし。と言いたかったのですが、▲3五角と出る手に△2一飛と引かなかったのが個人的な反省点。△2一飛型にスイッチする手は石田党なら必修手筋だと思いますが、高美濃が崩れて今こそ有効であろう指し手が指せなかった。浮き飛車に拘ったのは失敗でした。

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 途中3図は△6二銀と引いたところ。戻って▲5五歩の合わせに△同歩▲同銀が冷静な対応だったようですが、どうも銀を捌かれそうで怖くて歩を取れません。指し手がわからず秒に追われて△5一金。自分では意味の分からない手でしたが▲5四歩に△6二銀が好形っぽくやきそば好み。ただ結局▲5五銀と飛車に当てられては意味が無かったかもしれません。結果的に辛抱してくれた金銀が意味のある展開に持ち込めなかったことも反省です。

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 指し手は進んで途中4図の△6三銀が過剰防衛の一手で、評価値的にはここがターニングポイントとなって以下完全に逆転しました。フォロワーさんにもこの手に代えて△5八歩と叩く手を指摘頂いており、本譜の展開より攻めが速く有望なようです。一手遅れて叩きの歩を入れ、桂馬を成り込んだ第3図は「先手の馬が大したことなく、銀冠への攻め味は無いものの上手く指せば後手の辛抱が実って後手十分」が私の形勢判断。実際は銀冠は非常に遠く、後手が形勢を損ねていたというのが実情。のののさんの攻め棋風に対して過剰に受けたのが敗因の1つだったと言えるでしょう。

端の猛攻、見開く瞳孔。玉の動向開けぬ展望。

第3図からの指し手
▲9四歩 △6七成桂▲9八飛 △5四飛
▲同 馬 △同 銀 ▲9三歩成△同 桂
▲9四歩 △7七成桂▲9三歩成△同 香
▲9四歩 △同 香 ▲9三歩 △8一銀
▲9二金 △7二玉 ▲8一金 △6六角
▲2八玉 △2六歩 ▲同 銀 △2五歩
▲8二飛 △6三玉 ▲3五銀 △8八成桂 (第4図)

 ▲9四歩からのののさんは端攻め。曰く「(自分は)銀冠だし殴ってしまえ(大意)」とのこと。攻め合いになるなら早く先手陣にも手をつけていきたいところでしたが、△5四飛がどうだったか。馬は部分的に質駒なのに、飛車との交換は先手に捌かせてむしろ悪かったかもしれません。端の応対は基本的にわからず、「対応しても対応しなくても悪くなるだろうなあ」と2つ目の黒星を覚悟した記憶。ですが辛抱しながら考えていると、△6六角と打った効果で△8八成桂で飛車を詰ますことができています。先手陣への手がかりが少ない状態で飛車を取れるなら大歓迎!将棋は飛車を取るゲームだったんだ!と飛車厨の心を取り戻して成桂を嬉々として寄せていきます。実際の善悪は分かりませんが、こういうときは自分が指せて嬉しい手順に夢を持たないとやってられませんね!

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急転直下

▲8五角 △5三玉 ▲6五歩 △同 銀
▲4五桂 △5四玉 ▲4六銀打△9八成桂
▲5五歩 △6四玉 ▲8三飛成(第5図)△8八飛 
▲9四龍 △7五玉 ▲9五龍 △4八角成
▲5八角 △6六玉 ▲8六龍 △7六桂
▲6七歩 △5六玉 ▲4八金
まで151手でのののさんの勝ち
(消費時間=▲15分、△15分)

 先手の猛攻が続きます。ですが入玉模様まではいかずとも後手玉も思ったよりは広く、もう少しは戦えそうな展開になりました。▲4六銀打と縛られますが、△9八成桂と取る手が実現。まだまだこれからと思った矢先に▲8三飛成(第5図)が見えてパニックに陥りました。

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 もう手の流れには乗っているのでこの手は避けられません。しかし龍が働くと△7四玉と出る手が急に悪い気がしてきます。本譜は△8八飛に▲9四龍△7四玉を仕方ないと受け入れて、△9五龍にどうしようどうしようと考える事に。戻って△8八飛でなく△7八飛と下ろす手は有力で、これなら▲9五龍に△7三角成が龍取りになって後手良しだったようです。こちらも感想戦でフォロワーさんに指摘頂いた手でした。また、空き王手に対して冷静に対応する手段は他にも色々あったようです。(本譜の▲9五龍に△8六金と当てる手が水匠の指摘で一例)
 しかし空き王手を過大評価した私は寄せ合いを志向してしまいます。そして敗着の△4八角成が見えてしまいました。これで寄るなら誰も苦労しないよ!といった手ですが、見えてしまったが最後。頭が真っ白になって他の変化を読むことができませんでした。▲5八馬と馬の効きを遮断されてはゲームセット。粘るだけなら色々ありますが、上部に行って寄せられる手順を選び投了となりました。のののさん、強かった。

総括と次局に向けて

 悔しい敗戦となりました。2勝2敗と3勝1敗では景色が違います。悪い流れは断ち切りたいですが、これで「全体1位での昇級の目」はかなり薄くなったと思います。全勝勢(本稿執筆時点ではのののさんの他に2人)とはもう当たらないので、順位の良さを活かしてこれ以上離されないように粘っていかなければなりません。
 しかし対局内容は悪くなかったというのが自己評価です。たしかに反省点は多いです。形勢判断の誤りや悪手がたくさんありました。ですが、それ以上に自分の手の狙い・相手の手の狙いを考えながら指し手を選択することができたのです。往々にして手拍子に指してしまいやすいのが私の将棋。見通しのない勝手読みで負けることなんてザラです。プロのような完璧な将棋はハナから指せないのですから、善悪と同時に「いかに思考したか」を指標に自分の将棋を評価しなければいけないと考えています。実際じっくり考えて指せているときは、レートが上がる傾向にあります。(最高レートを更新できるときも大体このパターン)
 本局はそういう意味では盤に向き合って集中できました。菓子パンをほお張ったり、扇子をいじったり、しきりにコップに麦茶を注いだり…。ちょっと対局になると多動性が強くなる傾向のある私ですが、そういった動きが集中力を切らさない、いい状態を本局は作ることができました。
 それでも勝てない理由は実力に他なりません。最近は棋書で序盤をインプットすることを勉強の主是とし、序盤で有利に立ち回ることを目標にネット棋戦に臨んでいました。一旦その周期はここで終わりを迎えて、また詰将棋や必至問題に向き合うときが来たのかもしれません。特に詰将棋は大事ですね。個人的には詰みとトレーニングというよりは読みのトレーニングだと位置付けています。いろんな手の可能性を考え、脳に汗をかく特訓ですね。まあでも図書館で借りてきた棋書は面白そうなので読むには読むんですが!

 さて振り返りが長くなりましたが、次局のお相手は錯覚トマトさんです。居飛車も指す方ですが基本は振り飛車党。対抗形志向を錯覚トマトさんがお持ちなら、私はそのまま自然に振り飛車で実力を出し切りたいところです。ただ錯覚トマトさんが振ってきた場合の対応は何間飛車なのかにもよるところですので、事前準備は抜かりなくやっていきたいですね。次局も楽しく真剣に、本気で向き合って精進していきます。

 本稿もお読みいただきましてありがとうございました。またTwitterにて気軽にお声がけ頂けましたら幸いです!

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