将棋自戦記#11~第5期指す将順位戦第11局~vsドラキーさん

 みなさんこんにちは!やきそばです。せっかく今期も指す将順位戦に参加するなら・・・と始めたこの自戦記も、ついに第5期の最終節。一区切りになるようなところまで書き続けることができた自分を褒めつつ、本局もじっくりと振り返りをしていこうと思います。対局も自戦記も完走できてえらいぞ自分!

局前の準備~ドラキーさん編~

 前局を終えて私の成績は6勝4敗。対局数日前には僅かに残されていた入替戦進出の可能性が消滅し、自身の残留が確定している状況でした。対するドラキーさんは5勝5敗の指し分け。互いに本局は来期を見据えた順位争いという位置づけになりました。モチベーションはちょっと下がり気味でしたが、それ以上にドラキーさんと対局できるのが嬉しく、対局当日を楽しみにしながら準備を進めていきました。また、ドラキーさんもブログで自戦記を執筆されており、こっそり拝読しながら更新を楽しみにしていたり。そうやって最終局の存在を意識していたことで、モチベーションを切らさずに準備できたのは良かったなと思っています!

 ドラキーさんは中飛車の使い手。最終局の相手というのは自然と気にするもので、8月くらいには「最終局には中飛車対策を用意しなきゃ・・・」とふんわり考えていた記憶があります。具体的に棋譜を見ていくと、先手番では初手▲5六歩に絞って100%中飛車を志向している一方、後手番ではわずかながら2手目△8四歩の採用例も。当初の予定より戦型が絞りにくい印象で、まずは中飛車との戦いに限定したいなと考えていました。個人的には石田流vs中飛車の構図で戦いたいなと思いつつ、本局は以下のような想定で臨むことになりました。

先手番の時
▲7六歩△3四歩▲6六歩△5四歩▲7五歩以下、
中飛車左穴熊なら本美濃、中飛車左elmoなら片美濃に組んで石田流で対抗
後手番の時
▲5四歩△3四歩▲5八飛△8四歩▲7六歩△8五歩▲5五歩以下、
先手中飛車に対して居飛車穴熊で対抗

 具体的な想定局面までは用意できませんでしたが、先手番なら石田流を明示さえすれば中飛車にして左側に玉を囲ってくれるだろうと予想していました。なかでもエルモ囲いを採用した棋譜に注目し、どちらに囲うにせよ、浮き飛車のタイミングと金銀の位置に注目して指して行こうという方針です。
 後手番でも三間飛車は無理ではないと思うのですが、普段の対局での経験値が浅いため見送りました。このところ中飛車相手に居飛車穴熊を採用してみることが多く、また感触も良かったため本局での登板を決定しました。

想定と想定外

第5期指す将順位戦B級3組
令和2年11月1日21時
於・将棋倶楽部24 大阪道場「レーティング対局室」
▲やきそば △ドラキー(持ち時間各15分、秒読み60秒)
▲7六歩 △3四歩 ▲7五歩 △5四歩
▲6六歩 △5二飛 ▲6八銀 △5五歩
▲6七銀 △4二玉 ▲7八飛 △3二玉
▲4八玉 △3三角 ▲3八玉 △2二玉
▲2八玉 △1二香 ▲3八銀 △1一玉
▲7六飛 △5四飛 ▲5八金左△2二銀(途中1図)
▲4六歩 △6二銀 ▲7七桂 △3一金
▲9六歩 △5一金 ▲9七角 △4二角(第1図)

画像1

 本局は先手番になり、予定通りの進行・・・に見えて3手目と5手目が手順前後していました。本譜の先に▲7五歩でも大差ないですが、気持ちが少しつんのめっていたようです。△3三角と穴熊模様を示唆された時点で左エルモの可能性が消滅し、想定と少し外れます。左穴熊も本命なのでもちろん不満はありません。途中1図で互いに駒組の骨子が決まり、▲4六歩と手待ちし、△7二銀を見て石田流本組に組んでいきます。「浮き飛車+△5三銀」はおそらく中飛車左穴熊でよくある形なんだろうと思いますが、ここに目を付けて仕掛けの糸口が見つかればいいなと思っていました。あわよくば浮き飛車を標的にできればさらに良いなという感じです。
 さらに数手進んで第1図。△4二角と引く手が先に入るのは予想外で、少し方針に迷ったのを覚えています。小考を挟みつつ、本譜はもう1手待ってから仕掛けていくことになります。

画像2

これにて先手良しなのに!

第1図以下の指し手
▲1六歩 △5三銀 ▲7四歩 △同 歩
▲6五桂(途中2図)△4四銀 ▲4二角成△同金右
▲7二角 △5一飛 ▲6三角成△8八角
▲7四飛 △7三歩 ▲同桂成 △同 桂
▲同飛成 △9九角成▲6二龍 △4一飛
▲同 馬 △同金引 ▲6一飛 △5一香(第2図)

画像3

 途中2図は▲6五桂と気分よく跳ねて仕掛けたところ。本譜は△4四銀と角筋を通す対応。そこで▲4二角成△同金▲7二角と打ち込んで先手好調の序盤戦となりました。感想戦では△4四銀に代えて△6四銀と出る手が検討され、以下▲7四飛には△6五銀と食いちぎって後手が攻め合い勝ちになりそうだという話になりました。後日この近辺で何か良い手がないかとAIに聞いたところ、▲6五桂に代えて▲8六飛が・・・!単純に次の▲8三飛成が受からず厳しいですね。7筋の突き捨ては浮き飛車を狭める狙いがあったのに、これを見落とすのは少し反省です。
 本譜は▲7二角以降じわじわと時間を消費しながら攻めの継続を図りました。ですが53手目の▲4一同馬と飛車角交換に持ち込んだ手が感触悪く、雲行きが怪しくなってきました。そもそも▲4一同馬という手は、やるなら▲5四桂などを決めてから指したい手。ただ具体的に「良い!」と言える手段がないと、ついつい数手後に実現したい手を優先してしまう癖があるようです。2分の考慮でマウスの赴くままにこの交換を指してしまったことは、本局一番の反省点でした!

画像6

 なお、感想戦ではこの第2図の香打ちをもって後手の穴熊が堅く後手が良くなった・・・という認識。ドラキーさんとも共通見解を得られていた記憶がありました。

が!!水匠さんに聞いてみたところ!!

画像7

!?!?!?!?(混乱)

 将棋の形勢判断は難しいものだと、改めて思い知らされました・・・。


攻めのテクニックと、事件

第2図以下の指し手
▲9一飛成△5四桂 ▲4八香 △8四角(途中3図)
▲6三龍 △6六桂 ▲同 銀 △同 馬
▲6二歩 △5六歩 ▲5四桂 △同 香
▲同 龍 △5七歩成▲同 金 △同 馬
▲同 龍 △同角成 ▲5九香 △7五馬(第3図)
▲6一歩成△5八歩 ▲5一と △同 金
▲同 龍 △5九歩成▲同 金 △8九金(第4図)

画像5

 途中3図までの△5四桂~△7五角の組み立てが絶品。△5四桂に対して▲4八香の切り返しがまずまずだと判断していただけに、この手にはかなりシビれました。最初のリードを失った焦りからか集中力が切れており、数手後には△5六歩を完全に見落としてしまいます。この辺りは穴熊vs美濃の構図に慣れているドラキーさんだからこそ見える手順でしょうか。私にとって、形勢が悪くなったときの方針は2つに1つ。「①ガンガン攻めて無理な攻めが通るのを待つ」「②ひたすら受けに回って反撃の手番を少しずつ掠め取る」です。現状の穴熊相手に①は通用しなさそうなので、ここでの判断は②の方針。非常手段の受けを投じてさっぱりしたのが第3図の局面。

画像6

 駒損で玉形の差も考えるとさすがに先手が悪そうです。それでも駒の効率は駒損に目を瞑れば悪くないですし、弾いてなんとか手番も握っています。ソフトの評価値だけをアテにしてはいけませんが、実際ここは-2000点以上の局面。さっきの画像と比較するとざっと4000点は上下していますね。これは上達に有効かというのとは別の話で、自己認識と実際の形勢の相違点・一致点を探すのはとても楽しいなと思います。
 本譜は間に合わないとわかっていても▲6一歩成から攻め合いを模索します。作ったと金は穴熊の金と交換となり大満足。ただ自陣も依然薄く、痛い反撃が来そう・・・。そう思った矢先に事件は起きました。

画像8

 この金が、本来は飛車だった。というのは瞬時に理解しました。ネット将棋における最大の恐怖。クリックミスです。ですがドラキーさんの受けたショックがどれほどかと慮ったとて、ここは真剣勝負の場。チャンスが来たならば逆転を目指さなければなりません。しかしこの局面、金を手放されても依然駒損。後手の穴熊は健在で、8九の金を角で狙うような手も見当たりません。「クリックミスがあったのに、捲って勝てないようではダメじゃないか!」と余計な思考が出てしまうのが正直な心境でした。第4図の局面でも実際の形勢は後手十分。普段の劣勢とも、逆転模様とも異なる独特の焦りを抱えながら対局は後半戦に突入していきます。

拙攻と死守の反復横とび

第4図以下の指し手
▲1五歩 △8四馬 ▲6一龍 △5六桂
▲1四歩 △同 歩 ▲1三歩 △同 香
▲2五桂 △4八桂成▲同 金 △同 馬
▲4九金 △同 馬 ▲同 銀 △2四銀
▲1三桂成△同銀引 ▲8六角 △7八飛
▲5八歩 (途中4図)    △7九飛成
▲6九歩 △5三香 ▲4五香 △4七香
▲4八桂 △同香成 ▲同 銀 △5八香成
▲3九銀 △8八龍 ▲6八香 △4八金(第5図)

画像10

 第4図の後、しばらくして両者秒読みに突入しました。手の作り方がわからなかった私は、▲1五歩~▲1三歩~▲2五桂と思いつくままに端攻めを見せます。しかしこれは全く響きません。ドラキーさんの△5六桂~△4八桂成▲同金△同馬に対して速度負けしています。それでも▲4九金に△同馬▲同銀と清算できたことで、また数手ほど寄せられるまで余裕ができる流れが作れました。途中4図の▲5八歩など、ひたすら相手の攻めを緩和して粘ろうとする半面、こちらの反撃に思わしい手が無いという応酬がしばらく続きました。ドラキーさんの攻めをなんとか受け止めて第5図。△4八金とされて「後手が明らかに悪いけれども、まだ先手玉にわずかな余裕が残っていそうだ」というのが私の形勢判断。ここを機とみて本格的な逆転狙いに移っていきます。

画像10

祈願

第5図以下の指し手
▲3一角成△同 銀 ▲4四香 △3九金
▲3一龍 △3八金打▲1八玉 △2二銀打
▲3二龍 △2九金寄▲4三香成(途中5図) △1九金
▲1七玉 △3五角 ▲2六歩 △2五桂
▲1六玉 △1五歩 ▲2五玉 △2四銀
▲3六玉 △3一香 ▲4二龍 △3三桂打
▲同成香 △同 桂(第6図)

画像11

 ▲3一角成~▲3一龍が「お願い」の第一弾。半分下駄を預けたような手で、心境的には諦めていないですが「詰まされたら仕方ない」と覚悟を決める手でもありました。本譜は読み通りの△3八金打で、金が手持ちから無くなれば先手玉の寿命もかなり延びただろうと思いました。そして▲4三香成(途中5図)が第二弾の「お願い」で、一旦の詰めろ。ドラキーさんから繰り出される王手ラッシュはとても怖く、逃げ切りに失敗したのののさんとの対局がフラッシュバックしました。△3一香~△3三桂打もイヤなところを突いてくる手。そろそろ攻め切る手を見つけなければ、いよいよ玉の寿命もすぐそこまで来ているぞと緊迫感と高揚感でぐじゃぐじゃでした。

画像12

逆転勝利

第6図以下の指し手
▲1二歩 △同 玉 ▲1四桂 △3二香打
▲2二桂成△同 玉 ▲1一銀 △1三玉
▲3一龍 △8七龍 ▲2二龍 △1四玉
▲2三龍 △同 玉 ▲2二金 △1三玉
▲1四香 △同 玉 ▲2三銀
まで、163手でやきそばの勝ち
(消費時間=▲15分、△15分)

 時間に追われて打った▲1二歩は疑問手でしたが、▲1四桂~▲2二桂成が間に合い、寄せの構図を描くことに成功します。最後の最後まで寄せ切る形が見えませんでしたが、△8七龍と詰めろが回ってきた局面で▲2二龍~▲2三龍の手順を発見できたのが幸運でした。そのまま詰み筋に持ち込んで、今期二回目となる1時間超の熱戦に勝利することができました。

画像13

振り返りと、来期に向けて

 本局は何度も形勢が揺らいだ将棋でしたが、総量で言えば苦しい時間の方が長い将棋でした。このまま負けるわけにはいかないと、開き直って指し続けられたのが大きかったです。感想戦では序盤から終盤まで、みっちりドラキーさんと検討することができました。互いに残留が決まっている身ですので、来期もまた一緒に指すことができればうれしいなと思います。

 そして、本局を以って第5期指す将順位戦を完走することができました。結果は7勝4敗の全体7位。当初の目標だったB2復帰は残念ながら叶いませんでした。今期2位だった順位も来期は6~7位ぐらいになるでしょうか。前半戦で喫した3連敗と、9回戦のこじろ~さん戦。どこかでもう1つ白星があれば8勝3敗で直接昇級だったわけですね。悔やんでも悔やみきれない対局はたくさんありますが、これも実力ということです。

 正直に言えば、降級組なんだから復帰はある程度容易だろうと思っていました。奢りの気持ちですね。あえてレートの話をすれば、十分上位に食い込める力があるとも思っていました。対局・交流を繰り返すなかで、努力の足りない部分実力の足りない部分が見つかり・・・課題は山積ですね。前期初参加のときは、多忙にかまけて(実際どうしようもなかったけど)対局消化にいっぱいいっぱいでしたし、何より昇級・残留を目指して懸命に1局1局に向き合う相手の棋力を全く吸収できていなかったと思います。それでいてB2とB3の実力差を量ること自体がおかしいことだったでしょう。

 なんだか反省文みたいになっちゃいましたね!今までは24のレーティングをほとんどそのまま自分の成長指標にして来ました。もっとも、これからも最高レートの向上が指す将ライフにおける目標にであることには変わりません。ですが、指す将順位戦が「棋力とは何か」「実力向上とは何か」「どうすれば強くなれるか」「どうすれば勝てるか」という課題に自身を向き合わせてくれる最高の機会であることを、改めて噛みしめています。一局ごとに本当に緊張感とワクワクに浸ることができて、対局がひたすらに楽しかったですし、観戦や交流を通じて将棋のモチベーションを上げ続けることができました。
 さてさて、これで一区切りがついてしまいました。果たして来期までこのモチベーションを保つことができるしょうか。飽きっぽい私はこのオフシーズンを怠けてしまいそうですが、今期のご縁で仲良くなれた皆さんとVSなどしながら、来年の開幕時に向けて精進していきます。
 毎回自戦記をお読み頂いた皆さま、指す将順位戦の運営に携わる皆さま、参加者の皆さま。本当にありがとうございました!指す順はこれから入替戦という鬼勝負があってまだまだ楽しめますね!来期ももちろん、みんなと一緒に盛り上がりたいなと思っていますので、どうぞよろしくお願い致します!

 最後になりますが、将棋の内容的な面での総括というか、今後どうしていこうかといった点は別に記事を作ってみようと思います。指す順に限定した話にはならないかもですが、思ったことをばばばっと書いていきます!
 この自戦記シリーズの次回も未定です。何か機会があれば指す順以外の対局機会で記事を書いていきたいなと思います。文量とかは減りそうだなあ。でもこんなに続くとも思ってなかったし、気楽に自分のやりたいようにnoteで遊びたいと思います!

 ではでは、長文駄文に最後までお付き合いいただきありがとうございました!!それではまた~~。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?