将棋自戦記#17~第6期指す将順位戦第5局~vsこえだめさん

 みなさんこんにちは、忙しいようで忙しくない、ちょっと忙しい夏を過ごしているやきそばです。お盆休みを迎えると一区切りという感がありますね!世間のお休みムードに引っ張られてか、普段に増してゴロゴロしてしまっているような気もします。これを書いている今日も、ゆっくり朝を過ごす幸せを謳歌しております。

 指す順の方は変わらず日々対局がにぎわっていて、観戦が楽しいです。普段から仲良くして下さってる方の応援に行ったり、今まで対局してきた方の様子が気になったり、今後の対局に向けて偵察したり・・・。その日その日で色々な目的をもって観戦を楽しめるのも、交流と対戦を自分事として取り込める指す順ならでは。それは裏を返せば、私の対局を見に来て下さる方が居るということでもあります。指しているのはアマチュアの将棋ですから、観られる意識なんてものは本来不要なのですが、襟を正して真摯に指したいなと思います。

 さて、本局はそんな指す順界隈にファンを抱えるこえだめさんとの対局です。動画投稿やゲーム配信をされており、その語り口や素敵な人柄で人々を魅了するこえだめさん。今期は各対局の振り返り動画を制作されています。本局についても後日撮影・投稿されるとのこと。動画投稿の日を楽しみにしつつ、そろそろ本編に入っていきましょう~!

局前の準備~こえだめさん編~

 こえだめさんと言えば「対四間飛車の急戦」。「対四間飛車の急戦」と言えばこえだめさん。その序盤知識の広さ・深さは皆が知るところで、やはり序盤の設計から警戒せねばなりません。改めて棋譜を見たところ、▲7六歩~▲2六歩と突く居飛車党だということがわかりました。一方後手番では2手目△8四歩派で、主戦場はどうやら矢倉のようです。横歩取りを積極的には望まない姿勢から、「先手矢倉・後手角換わり」タイプの居飛車党だというのがわかります。それを私の手札と組み合わせたときに考えられるのが、以下のパターン。

<先手番>
①▲7六歩△8四歩▲2六歩△8五歩▲2五歩以下、角換わり
<後手番>
②▲7六歩△3四歩▲2六歩△5四歩以下、ゴキゲン中飛車
③▲2六歩△3四歩▲2五歩△3三角以下、三間飛車

 ①②は双方にとって自然な流れ。こえだめさんの指す戦型に対応するならば、角換わりでは対棒銀に、中飛車では対右玉に絞って勝負するイメージです。③はGWミニリーグでこえだめさんと指した前例があり、エルモ急戦との対決でした。いずれもこえだめさん独自の指し方をそれなりに分析できそうです。最終的に一番自信のある形(想定局面)を見つけてきて、本番の対局にぶつけたい!…と思っていたのですが、結局それはできませんでした。

 理由は心身の疲労。そう、夏バテです。リアル事情でちょっと疲れが溜まっていて、その回復でいっぱいいっぱい。八十さんとの対局が終わって以降、野良でも調子が振るわずイマイチ頭の回転も悪い状態が続きました。「不調」の二文字が脳裏によぎります。今期は無理をしたくありませんから、ガチガチの対策が必要な①は却下。②も対右玉と普段とは違う条件で準備する必要があるのでパス。周囲と相談の上、残った③(三間飛車vsエルモ)で勝負することしました。これも想定局面を練るのではなく、あくまで今までの自分の指し方を踏襲するイメージです。シャワーで済ませていたお風呂に、ちゃんと湯を張って体を温めるなど、とにかく疲労回復を最優先に対局当日までを過ごしていました。

持久戦に

第6期指す将順位戦B級3組5回戦
令和3年8月13日21時於・将棋倶楽部24 大阪道場「自由対局室」
▲やきそば △こえだめ(持ち時間各15分、秒読み60秒)
▲7六歩 △3四歩 ▲6六歩 △1四歩(途中1図)
▲1六歩 △8四歩 ▲7八飛 △8五歩
▲7七角 △6二銀 ▲4八玉 △4二玉
▲3八玉 △3二玉 ▲2八玉 △5四歩
▲3八銀 △5二金右▲6八銀 △5三銀
▲5八金左△3三角 ▲6七銀 △2二玉
▲5六歩 △3二金 (第1図)

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 対局にあたってのルーティンをこなし、テンションと集中力を高めて対局開始です。途中1図の時点で既に不穏な出だし!2手目△3四歩は明らかに普段とは違う指し方。感想戦でも「やきそばさんは2手目△8四歩を想定しているだろうから、△3四歩にはどう出るかな?と思った」という趣旨のことをこえだめさんは仰っていました。相振り調の出だしで揺さぶりをかけられます。安易に▲7五歩と乗っては危険と判断し、▲6六歩からノーマル三間に組み上げていきます。
 こえだめさんも対三間飛車の後手番における急戦採用は難しいと見ていたようで、持久戦の流れから△3二金(第1図)と上がって穴熊模様になりました。当初想定のエルモではなかったにせよ、この局面はこれまで何度も経験のある形です。ここからはうっかり抑え込まれて、一気に形勢を損ねないようにと念じながら指し続けていきます。

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石田流へ組み換え成功!

第1図以下の指し手
▲6八角 △9四歩 ▲7五歩 △8四飛
▲9六歩 △1二香 ▲7六飛 △1一玉
▲4六角 (途中2図) △6四銀
▲5七角 △2二銀 ▲7七桂 △4二金右
▲6五歩 △5三銀(第2図)

 石田流にすべきか否か。これが悩ましいところで、進行を少し間違えると△4二角~△6四銀の筋で簡単に飛車が抑え込まれてしまう可能性も。▲6八角~▲7五歩はどちらかというと将来の▲4六角~▲7四歩というコビン攻めを狙ったものでしたが、△8四飛と浮いて受けた手を見て石田への組み換えを本格的に考え始めます。目標物の飛車が移動してしまっては仕方がありませんね!

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 ▲7六飛を浮いてから▲4六角(途中2図)と飛び出します。直接的な狙いは▲7四歩ですが、△6四銀の受けに▲5七角と引くことで△4二角には▲6五歩△同銀▲7八飛から▲7七桂を見せてどうかという感じ。対局中は単に▲5七角や▲7七桂では抑え込まれると思っていましたが、今見てみるとそうでもないような。無理に揺さぶる必要はなかったかもしれませんね。
 こえだめさんは浮いている右金を気にされていたようで、△4二角とはせず△2二銀~△4二金右。▲5七角型の石田流から▲6五歩(第2図)で銀を追い返すことに成功しました。第2図は穴熊と引き換えに捌きやすい陣形が整っていて、個人的にはとても指しやすく大満足でした。しかしその満足感がミスを生んでしまうことに・・・!!

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仕掛けに誤算!

第2図以下の指し手
▲7四歩 △同 飛 ▲同 飛 △同 歩
▲8五桂 △9九角成▲7一飛 △5五歩
▲同 歩 △同 馬 (途中3図)
▲5六歩 △8二馬 ▲6一飛成△6二飛
▲5一龍 △5二金 ▲6二龍 △同 銀
▲6六角 △8四歩(第3図)

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 第2図からノータイムで▲7四歩と攻撃したのが手拍子の失着。角筋を通して浮き飛車を狙う石田党必修の攻め筋ですが、このタイミングでは7七の桂馬が浮いてしまうので桂香を先に取られてしまいます。代えて▲9八香や▲6八金といった先受けをすべきでしたが、▲6五歩~▲7四歩で手順にさばく手癖が出てしまいましたね。反省です・・・。

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 コビン攻めを嫌って桂馬を逃がし、▲7一飛と遅れて飛車を打ちますが、△5五歩▲同歩△同馬(途中3図)が絶品の手順。良い働きをしていたはずの角がうまく目標物にされてしまいます。香車を渡す方が被害は大きかったようですね。△5六香と打たれるわけにもいきませんが、手順に△8二馬と引かれては厳しいですね。アヤをつけようにも手駒が少なく、端攻めは反動がきつそうです。仕方なく▲6六角と覗いたところで△8四歩(第3図)が冷静な一手。苦しい時間が続きます。

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中央に活路を、金駒に狙いを!

第3図以下の指し手
▲4六歩 △8五歩 ▲5五歩 △6四歩
▲5四歩 △6五歩 ▲2二角成△同 金
▲5三銀 (途中4図)    △同 銀
▲同歩成 △同 金 ▲4二飛 △5五馬
▲3一銀 △3三銀 ▲4一飛成△3二桂
▲2二銀成△同 銀 ▲3二龍 △3三馬
▲同 龍 △同 桂 (第4図)

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 次に▲8四同角としても△8三香が見えています。桂馬が取られると今度こそコビンが危険なので、どうにかして反撃のターンまで持ちこたえなければなりません。そこで▲4六歩の緩和を先に実行。代えて▲8四同角△8三香▲6六角△8五香▲4六歩の方が得だったかもしれませんが、こちらの方は後手にも変化の余地がありそうです。
 桂馬を拾われて、手の無い私は▲5五歩でさらに角筋を遮断します。このときに▲5四歩と伸ばす手が見えたのが幸運でした。角頭を狙われた瞬間に角切りを決行し、▲5三銀(途中4図)と打ち込んで一勝負できる形に。穴熊とは遠いところを攻めるので筋悪っぽいですが、手掛かりができただけでも十分えらい!

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 途中4図からは一旦△5三同銀▲同歩成△同金と清算が行われ、そこで待望の▲4二飛が実現。この手が馬当たりになっているのがとても大きく、連続して手番を握ることに成功した私はガジガジと穴熊に喰らい付きます。飛車と銀だけでの攻めですが、どこかで止まってしまってはそれこそ本当に勝ち目が無くなってしまいます。駒損した分どうにかこうにか攻めが繋がればと祈りながら指していました。こえだめさんが埋めた駒を剥がし、引き付けてきた馬と竜を刺し違えて第5図に。攻めの手がかりは一時消失しますが、穴熊は十分崩せました。美濃囲いが健在している間にもうひと頑張りですね!

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穴熊を寄せ切る

第5図以下の指し手
▲2六桂 △4四金 ▲5三角 △5七歩
▲4七金 △5八銀 ▲3二金 △7九飛(第6図)
▲4四角成△3九角 ▲同 金 △同飛成
▲同 玉 △7九飛 ▲2八玉 △3一金
▲6一飛 △4四歩 ▲2一金打△同 金
▲同飛成(終局図)
まで、107手でやきそばの勝ち
(消費時間=▲15分、△15分)

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 すぐの▲3二角では詰めろが続かなさそうなので▲2六桂。△4四金のカバーに▲5三角が▲3二金~▲4四角成を見据えた攻め。3手スキは少し遠いですが、狙いが分かりやすく、▲3四桂跳ねもどこかで追撃として実現しそうなのが魅力的に映りました。
 対する△5七金は取ると飛車打ちで両取りを掛けられてしまういやらしい叩きの歩。手抜いて攻め合った方が早そうですが、金を渡すのを嫌って躱しました。続く△5八銀も怖い追撃ですが、美濃囲いを信じて▲3二金を打ち込みます。あまり相手にしすぎてもかえって自玉が危なくなりますし、受けに回られて攻めがもたつくのも怖いですからね・・・!

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 そして迎えた第6図。△7九飛がおそらく直接の敗着でした。美濃囲いの金を攻めて迫力のある手ですが、ここでは代えて△4九銀成が詰めろで、以下後手の攻めが続いていたかもしれません。△7九飛は詰めろになっておらず、▲4四角が間に合う恰好になりました。とはいえ対局中はギリギリまで▲2八玉とかわす手が見えておらず、最後まで緊迫感溢れる展開でした。最終的には後手玉を即詰みに打ち取り勝利を納めることができました。こえだめさん対局ありがとうございました!!

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振り返りと、次局に向けて

 前局とは打って変わって、本局は準備不足を受け入れるところがスタートラインでした。指す将順位戦は半年に渡って行われる長期開催の棋戦ですから、こうした心技体の好不調ともうまく付き合っていかねばなりません。準備を打ち切ってからは意図的に将棋に関わる時間を減らしたので、正直不安な気持ちもありました。ですが対局前、お風呂や音楽を聴くといったルーティンをこなしているうちに自然と気分が高揚し、今までと変わらないテンションで対局に臨むことができました。次でやっと折り返しですから、これからもうまく自分をコントロールしていきたいです。

 さて、次局のお相手はカメさんです。今期から参戦された方ですね。聞くところによれば純粋三間飛車党とのこと。詳しいところはこれから調べることになりますが、自分にできる範囲の準備を尽くして臨もうと思います。また、次局からしばらく振り飛車党との連戦が予想されます(7回戦がちょっと怪しいけれど)。少し考え方を切り替えて、新たな心持ちで1局1局に打ち込めたらいいなあ。むろん、今回と同じように準備できない可能性もありますが、それはそれで指す順の醍醐味なので大丈夫です!!それでは今回はこの辺で。皆さまありがとうございました!!!

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