将棋自戦記#29~第8期指す将順位戦第4局~vsわわわさん

 みなさんこんにちは。最近日差しが強すぎて帽子が手放せないやきそばです。各地で梅雨明けが宣言され、いよいよ夏本番ですね。指す将順位戦もある意味では体力が大事。長期間の勝負を乗り切れるよう、この夏も元気いっぱいに過ごしたいものです。
 3回戦の期日が7月16日。まだ数日しか経っていないこともあり、B級2組では本局が4回戦の一番乗りでしたね。対局の勢いに乗せて、自戦記もどんどん書いてしまおうと思います!

局前の準備~わわわさん編その2~

 本局のお相手はわわわさん。指す将順位戦には前期から参加されています。のりたま将棋クラブの一員として棋戦参加をされており、リアルでも社団戦に出場されるなど指す将ライフを満喫されている様子。社団戦、関西でもやってくれないかなぁ。前期対局があり、その際は相振り飛車から猛攻を凌いで辛くも勝利。昨年の再現を果たせるでしょうか。

先手番の作戦を考えるが、早くも予想を絞れない。

 わわわさんは角交換四間飛車中心の振り飛車党。最近の棋譜では角交換型の相振り飛車を指されていました。ところが詳しく調べたところ、4手目△6二銀から右四間飛車を志向する棋譜も発見。急に狙いが絞れなくなってしまいました。相振りか対右四間か、狙いを定めようにも決定権は相手側にあるわけです。体力や精神状態の兼ね合いも考慮し、本局では詳しい用意はせずに、どの戦型が来ても良いよう復習メインの勉強をすることにしました。具体的には1回戦で用意した右四間対策を再確認し、相振りでは手元の棋書を一通り読み直しました。
 フラットな状態で対局に挑むことができればベストでしたが、残念ながら野良対局の勝率が下降傾向に。メンタル面の揺らぎを自覚し、身体をしっかり休ませることを優先しました。欲を言えばもう少し早くその判断ができればよかったのですが、こういうのは気づいた瞬間にやるのが最短ルート。反省は終局後と割り切っていざ対局です。

角交換型の戦い

第8期指す将順位戦B級2組3回戦
令和5年7月20日21時
▲わわわ △やきそば(持ち時間各15分、秒読み60秒)
▲7六歩 △3四歩 ▲9六歩 △9四歩
▲2二角成(途中1図) △同 銀
▲6八銀 △3三銀 ▲7七銀 △4二飛
▲6八飛 △6二玉 ▲3八金 △1四歩
▲8八飛 △7二金 ▲6六銀 △8二銀
▲8六歩 △1五歩 ▲7七桂 △2四歩
▲4八玉 △2五歩 ▲7八金 △2二飛
▲2八銀 △2六歩 ▲同 歩 △同 飛
▲2七歩 △2四飛(第1図)

5手目角交換から相振り飛車へ。

 21時に対局開始。後手番に決まって早速▲2二角成(途中1図)の角交換から勝負が始まりました。3手目が端歩だったので受けずに△4四歩もありましたが、相振り志向ではさすがにやりづらかったですね。
 一旦相四間に構えたのちに、先にわわわさんが向かい飛車へ振り直します。普段は金無双を好む私ですが、本局では△7二金~△8二銀と矢倉風の駒組みを選びました。これは▲5六角を軸にした攻めを警戒する意味。以下に筋違い角の筋を食らわず、逆にこちらが△5四角の含みを活かせるかというのを考えながら指していました。
 追って私も向かい飛車を振り直し、飛車先を交換して第1図。先手は銀桂の早い活用を、後手は浮き飛車と端の突き越しを主張しています。神経を使う最序盤を乗り切って、駆け引きに集中できそうな展開で十分と見ていました。

先手玉も同じ構え。バランス重視の戦型は気をつかう事が多い。

均衡を破り破られ開戦へ

第1図以下の指し手
▲8五歩 △3五歩 ▲8九飛 △4二金
▲5六歩 △3二金 ▲5五歩 △4二金
▲6八金 △3四銀(途中2図)
▲8四歩 △同 歩 ▲5四歩(第2図)

均衡を自ら破りに行く決断。千日手模様でも良かったか。

 △3五歩を突いて飛車の横利きを通したところで局面は膠着状態に。互いに動き方が難しく、こちらとしては先手が無理に動いてきたところで反撃を狙いたい。その意味で▲5四歩~▲5五歩が自玉のコビンを開ける危険な手であると、私の目にはそういう風に映ったわけです。△4二金と自玉の近くに寄せておいて△3四銀(途中2図)が決断の一手。飛車先交換を受け入れて、次に△2五銀が実現できれば主導権を握れそうかなと思い指しました。
 すかさず▲8四歩△同歩▲5四歩(第2図)が機敏な仕掛け。伸びすぎと思っていた5筋の歩が、一手で鋭い仕掛けに変貌したのです。よく見れば▲6五桂や▲5九飛など、中央に攻めを展開する手段が豊富に存在しているではありませんか。こうして汗のにじむ中盤戦が幕を開けたのでした。

いきなり急所に手がつく。どこかで△7一玉としておく手があったかもしれない。

切り返しを見据えて

第2図以下の指し手
△4五銀 ▲5三歩成 △同 金
▲6五桂(途中3図) △5二金
▲5九飛 △5六歩 ▲4六歩 △5四銀
▲5五歩 △8六角(第4図)

猛攻を浴びる。代えて▲4二角がより厳しかったかもしれない。

 仕掛けの処置に悩んで△4五銀と出た記憶があるのですが、棋譜を見返すと文字通りのノータイムで着手しており愕然とします。将来▲8四飛と走られた形から、▲5三歩成が王手飛車になるのが怖いので先に歩を払っちゃおうというのがこの銀の意図。しかし▲5三歩成の取り込みがとても厳しい。記憶ではかなり迷っていたはずなんだけどなぁ・・・。ただ、▲6五桂(途中3図)と跳ねる手には△5二金と引く余裕が生じてわずかに気分も楽になりました。▲5九飛の継続手にも一旦は△5六歩と止められますからね。互いに玉の危険地帯が戦場になっているわけで、5筋の主導権を握り返すことができればたちまち形勢が入れ替わるはず。本譜は銀を追われますが、その瞬間に△8六角(第3図)がこれしかない反撃。6二の金が浮いているため部分的には数手前からある狙いでしたが、このタイミングで決行します。この角を打つだけの余裕を手にできたのが大きかったです。

銀を手に入れられる前に勝負する。非常に怖い踏み込み。

勝負手を通す

第3図以下の指し手
▲7七角 △同角成 ▲同 金 △6五銀
▲同 銀 △6八角 ▲5六飛 △7七角成
▲5四歩 △5五歩(途中4図)
▲4一角 △5一金打▲5二角成 △同 金
▲5三銀 △同 金 ▲同歩成 △同 玉
▲5四歩 △4二玉(第4図)

再掲図。直線の斬り合ったときに、後手玉がどこまで耐えているか。

 △8六角(再掲第3図)の局面で、最大の焦点は▲5四歩の取り込みに△6八角成が成立しているかどうか。自玉の安全を考えるなら△5四飛ですが、銀を拾われると▲7七銀打で反撃筋が受かってしまいます。よって▲5四歩には△6八角成と踏み込む一手ですが、▲5三銀から非常に危険です。感想戦では△7一玉~△8三銀で玉の懐が広がり当面は安全という話に。ただ後手からの反撃もすぐには決まらず、駒を渡すと結局後手が寄るということで、非常に難解な局面だったようです。
 わわわさんは本譜で▲7七角と受けの一手を選択。これには△同角成~△6五銀と連結を乱して△6八角と継続手段がありました。本譜の通りに進んで▲5四歩と伸ばされたときに△5五歩(途中4図)と止められるのが非常に大きいですね。角打ちの勝負手が通った格好になって、少しずつ難所を乗り切れそうだと手ごたえを感じていました。

金を拾った手で馬が先手玉から遠のいたが、自玉がこの一手で潰れにくくなった。

 途中4図はそれでも▲5三銀など怖い攻めがまだまだ残る局面。わわわさんは▲4一角と追撃を放ちます。手抜いてもギリギリ自玉は詰みませんが、こういうときのうっかりほど怖いものはありません。形勢自体は良くなっていると信じて、△5一金打とがっちり受けました。ところで、この近辺では既に私も秒読みに突入していて、なるべく50秒は使おうという意識の下指していました記憶があります。ところが棋譜のデータ上では秒読み突入はもう少し先のことになっています。記憶違いだったのでしょうか?仕掛け付近のノータイム指しといい、消費時間の記録に謎が残っております・・・。
 話を戻して、対局の方はひとしきりの攻めが清算されて△4二玉(第4図)と広い方に逃げ込むことができました。はっきり優勢を感じたところで、いよいよ先手玉を捕まえに行くターンです。

金2枚では自玉は寄らない。反撃筋に注意して寄せを目指していく。

寄せを見つめて曇る視界

第4図以下の指し手
▲6六飛 △6八馬 ▲5八金 △7七馬
▲4五金 △6九銀 ▲5五金 △5八銀成
▲同 玉 △5七歩 ▲4七玉 △5八歩成(途中5図)
▲同 玉 △7九角 ▲5六金 △6八角成
▲4七玉 △7八馬上 ▲4八金 △6九馬右
▲5八銀 △同馬引 ▲同 金 △3八銀
▲同 玉 △5八馬(第5図)

開き直って仕切り直しに歩を成り捨てる。リスクを負わないことが大事。

 △6九銀を皮切りに先手玉を寄せていきますが、どうもはっきりとした決め手が見つかりません。壁形を相手にしているので寄せやすいはずなのですが、▲4七玉と上がった形が妙に捕まえにくいのです。もたもたすると△5三Xからの反撃が厳しくなる可能性もあります。途中5図で△5八歩成と、直前に打った歩を成り捨ててやり直した辺りなどは緊張のピークとも言うべき場面でした。脳裏をよぎるのは2回戦の失着。スピードは遅くとも、駒を渡さない寄せを。もうあんな思いはしたくないと、2枚目の馬を作ってじわりじわりと追い詰めていきました。観戦欄では94手目に△5五桂と打って詰ます順が指摘されていたとのこと。心理的に追いつめられると、こうした詰み筋が見えなくなるのだなぁと改めて痛感します。本譜は馬を1枚犠牲にしながら、△3八銀~△5八馬(第5図)と迫っていよいよ先手も受けが苦しいはず。本当に着地ができるかというところまで辿り着きました。

持ち駒が角銀では目ぼしい受けが無いと見て。

長い詰みより短い必死

第5図以下の指し手
▲5三角 △3二玉 ▲2六歩 △同 飛(第6図)
▲2七銀 △4七金 ▲2八玉 △4九馬
まで110手でやきそばの勝ち
(消費時間=▲23分、△22分)

色々な詰み筋がありそうだが、確実な手段を選ぶ。

 ▲2六歩と退路の確保を目指してきたところで、△2六同飛(第6図)と蓋を閉めにいったのが最後の決め手。持ち駒がたくさんあるので最後まで飛車切りなどで詰ましにいけそうだとは思っていました。それでも自身の状況から、安易に詰みを狙えば失着が生まれうると判断できたのが良かったと思います。飛車取りを無視して△4九馬と入ったところで先手が投了。最後の最後まで、体感時間がとても長い一局でした。わわわさん対局ありがとうございました!

後手玉は必死で、先手玉に詰みはない。

振り返りと、次局に向けて

 本局は開戦前と後で大きく流れの変わる将棋でした。現代調の立ち上がりでバランスを取るのが難しい側面もありましたが、陣形や飛車の位置など、相振り飛車において考えるべきポイントを常に念頭において戦えたのは良かったと思います。なかなか寄せ切ることができず苦しかった終盤も、駒を渡しすぎないことを意識して確実な手を選べました。このところはっきりと寄せを描けないことが多く、終盤力はしばらく課題になりそうです。攻めが迫ったときの読みなど、中盤の競り合いでは力を出せたので、こういった頭の回り具合を意識した立ち回りを今後も大切にしたいと思います。
 準備・生活の面ではやはり体力の回復が課題です。消耗が激しいので自分からもっと休む行動を取れるように設計していきたいところ。逆に言えば疲れが溜まっていてもある程度の勉強量は確保できているわけで、この辺は秋冬の積み重ねがよく効いています。2勝2敗のタイに戻って、ここからもっと白星を増やして昇級戦線に復帰したいと思います。まだ昇級どうこうを語るには早い時期ではありますが!
 5回戦の相手は島ノ葉尚さん。ずっとお世話になっている戦友との一戦です。昨年は開幕局で当たりましたが、今期は中盤の山場とこれまた楽しいタイミングでの対局です。互いに苦しい残留戦線を乗り切ったからこそ得られた対局の機会、より良い内容の将棋が指せるよう、一層頑張りたいですね。まだまだ暑い日々が続くので、読者の皆様もどうかお気をつけて。次の対局お楽しみに!お読みいただきありがとうございました。

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