将棋自戦記#24~第7期指す将順位戦第2局~vsアカサビさん

 みなさんこんにちは、やきそばです。日本列島を覆ったはずの梅雨空は一瞬で消えてしまい、とんでもない暑さに襲われていますね。今年もこんがり焼かれてしまったやきそばです。元が色白なので、日焼けのコントラストが普段以上に気になる今日この頃。前局から約ひと月が経ち、指す将順位戦の2回戦を指しました。アカサビさんとの対局は今期では初めてとなる再戦。それも2年ぶりという今までになかったパターンです。それゆえに作戦選択から悩みに悩んだこの1局、じっくりと振り返ってまいりましょう!

局前の準備~アカサビさん編その2~

 本局のお相手はアカサビさん。棒銀と対振り急戦に明るい居飛車党です。実際に、今冬に指された24名人戦では角換わり棒銀と対振り急戦で高勝率を上げています。指す将順位戦は第3期から参加されており、第5期にてB3から昇級。B2は今期で2期目…とキャリアはしまのばさんと全く一緒なんですね。昇級・降級の経験が一緒の同期というのはとても珍しい・・・!
 そんなアカサビさんとは第5期で対局しています。自戦記もぜひご覧頂きたいところですが、そのときはアカサビさんの角換わり棒銀を受けて立ち、なんとか勝利をもぎとることができました。本局もまた、互いに手札をある程度知っている上での対局ですから、その点をふまえて戦型を考えていくことにしました。

対中飛車の△4四銀型を迎え撃つ。

 三間飛車の急戦定跡に自信のない私は、三間飛車を最後の選択肢として検討を始めます。そこで当初考えたのが中飛車。アカサビさんは超速左銀風に先に△4四銀と出てから指す形を採用されており、これを狙い撃ちできれば勝算はかなり高いと見ていました。ですが自分の思うような対策を立てられるまでは至らず、採用するか否かは最後まで悩みました。急戦定跡においては先後の差が大きく、先手三間もかなり有力だと言えるからです。それでも対戦表の公開直後から、開幕2連戦は中飛車をぶつけようと構想していたため初志貫徹の志で中飛車採用と腹を括ります。

左銀急戦から捌き合う変化は、経験値が少なくとも自信が持てた。

 後手番ではさらに悩みました。▲2六歩△3四歩▲2五歩△3三角まではほぼ確定するため、ゴキゲン中飛車の立ち上がりが採用できません。ここでは定跡に対する理解度が比較的高い、四間飛車で勝負する順を模索しました。傾向として最近のアカサビさんは▲5七銀左戦法の採用頻度が高く、▲4五歩早仕掛けの方を選ぶ可能性が低そうだ、というのも検討の支えになりました。第6期の棋譜を参考に、当初は如月モコナさんが採用されていた△4三金と仕掛けに対して上がる形を検証。有力だとは思いましたが、最終的には捌き合う形を求めて想定図に至りました。やはり美濃囲いは3枚くっついている方が好きですね!
 一番指している三間飛車を2局連続で外す、変化球気味の作戦構成となりました。三間飛車を選べない自分に対して葛藤を抱きつつも、最後は先手中飛車、後手四間飛車を強く決心して対局の時を迎えます。

予定通りの立ち上がり

第7期指す将順位戦B級2組2回戦
令和4年7月2日20時
於・将棋倶楽部24 大阪道場「レーティング対局室」
▲アカサビ △やきそば(持ち時間各15分、秒読み60秒)
▲2六歩 △3四歩 ▲2五歩 △3三角
▲7六歩 △4四歩 ▲4八銀 △3二銀
▲5八金右 △4三銀 ▲6八玉 △4二飛
▲7八玉 △6二玉 ▲5六歩 △7二玉
▲9六歩 △9四歩 ▲3六歩 △8二玉
▲6八銀(途中1図)△7二銀 ▲5七銀左 △5二金左
▲4六銀 △5四歩 ▲3五歩 △3二飛

アカサビさんの伝家の宝刀を迎え撃つ。

 いつものルーティンをこなして対局開始。対局が土曜の夜ということもあり、一日ゆっくり過ごして対局を迎えることができました。立ち上がりからすらすらと進んで途中1図。おおよそ左銀急戦になるだろうという序盤進行になりました。早々に▲4六銀と形が決まり、戦型が確定。早仕掛け系の将棋を回避したいという目論見が成功します。
 急戦に対する四間飛車の待ち方は色々あるところですが、私は今回△5四歩を優先し△1二香を後回しにしました。普段は△1二香を先に指すことの方が多い気がします。本局はアカサビさんの実戦例なぞることを意識し、その場で仕掛けがきそうな△5四歩を選びました。ここも予想通りの▲3五歩。両者の累計1分ちょっとという、短い考慮時間でするすると進行しました。

シンプルな仕掛け、確認してきた定跡や検討内容を思い出しつつ指していた。

対策不足の攻め筋

第1図以下の指し手
▲5五歩(途中2図)△3五歩 ▲同 銀 △4二角
▲3八飛 △3四歩 ▲4六銀 △1二香
▲2四歩 △同 歩 ▲2二歩 △同 飛
▲5四歩 △3二飛 ▲5五銀 △3三角(第2図)

「そっちか~~~!」と心の中では叫んでいた。

 ▲5五歩(途中2図)が見落としていた一手。昨年のB級2組▲ラギィ─△アカサビ戦で類型の仕掛けがあり、その存在を知りつつも検討の本線から外してしまっていたのです。この辺りの組み立てについて、感想戦でアカサビさんが「四間飛車で来られると、研究を警戒して少し普段と違う指し方をする」という趣旨の話をされていたのが印象的でした。これは作戦設計上の思想を覆される展開で、本局における重要な反省点だといえます。
 さばきどころを模索しますが、▲5四歩~▲5五銀の抑え込みを許してしまいます。第2図では△4四銀の進出を拒んで△3三角としましたが、▲5四歩の楔が大きく厳しい雰囲気を漂わせています。押し引きを読んでいくなかで時間もじりじりと減っていき、いかに耐え忍ぶかという中盤戦に入っていきました。

ジリジリと焦げていくような展開。

雌伏の時

第2図以下の指し手
▲4六歩 △4二飛 ▲3七桂 △1四歩
▲4五歩 △5一歩(途中3図)
▲2八飛 △1五歩 ▲2二歩 △1三桂
▲2一歩成△2五桂 ▲同 桂 △同 歩
▲同 飛 △2四歩 ▲2九飛 △4五歩
▲6五桂 △4一桂(第3図)

手が縮こまっているようだが、そういう手が見える日なので仕方がない!

 ▲4六歩~▲3七桂と4筋突破を見せられ、動き方の難しい局面が続きます。振り飛車側としては△5六歩の垂らしなどから舟囲いを突破するような方法を探したいところ。とはいえ飛車角がまだ動ける状況ではありません。できれば他の筋からも動いていきたいですが、例えば2筋は突き捨てが入っていて△2四歩型が重いですね。読み筋は自然と▲4五歩~▲4四歩の取り込みに傾いてゆき、ここから清算した後に勝負する手順が無いかと考えます。そこで気になるのが▲4四歩△同銀▲同銀△同角▲同角△同飛に▲5三銀と打ち込まれる形。ここを先着されたときに美濃の耐久度に不安を感じました。手順中△4四同角に代えて先に飛車から行くのが筋ですが、対局中はいずれにせよ▲5三銀で大駒には当たってしまうため、飛車を渡す方が怖いのではと判断していました。
 そこで途中3図の△5一歩です。△5六歩の権利を手放すためひと目悪手ですが、4筋5筋に読みを集中させていた私には底歩を上回る手が見つけられませんでした。引き付けてさばきを狙う方針を維持したのです。それだけに、次の▲2八飛の柔軟さにはしびれました。継ぎ歩への対処もわからず、と金作りと桂交換を許して第3図。5筋突破を見せられて焦る中打った桂馬が、一瞬のドラマの可能性を生んでいたとは・・・。

しんどい受けの一手だが、勝負手としての可能性を秘めていた。

その日、花は咲かなかった!

第3図以下の指し手
▲3一と(途中4図)△6四歩
▲4一と △5五角 ▲同 角 △5四銀(途中5図)
▲4二と △5五銀 ▲5二と △同 歩
▲3一飛 △6五歩(第4図)

後日の検討では、この瞬間だけ評価値が互角に戻っていた。

 途中4図の▲3一とを見て、私は瞬時に「やらかした!」と心の中で悔やみました。受けに打った桂馬が簡単に標的にされてしまうようでは、という後悔です。ここで集中力を切らしてしまったのが運の尽きでした。桂取りは受からないので、▲4一と△同飛▲5三歩成が入る前に動かなければなりません。具体的な手がわからないまま△6四歩と桂馬を追った直後、その先を読もうとしたときに閃いたのです。

 △5五角▲同角△5四銀なら角に当てながら歩を払えるやん!!!

 本譜は既に▲4一とが入っているので、△5四銀(途中5図)と出た瞬間に飛車を取られます。その手も金取りですから目も当てられません。ですがこの手がひらめくと同時に、1手前の△6四歩に代えて上記の手順があったのではないかと気づいてしまったのです。これはやってしまったと思いつつも現在は対局中。過去の局面について検証している暇などありません。1手遅かろうとこの手しかないと開き直り、本譜も△5四銀を選びます。

 今改めて見ても、やはりもう1手早く△5五角と出るのが最善だったと思います。「引き付けて迎え撃つ」という戦い方を全うしながら、一番近づいてきてくれたその瞬間が分からなかったのです。底に打った桂を狙われる、事前の指し手を否定される流れが私から判断力と発想力を奪いました。序盤からここに至るまでの、1局の積み重ねを象徴するかのような見落としでした。

歩・銀と角の二枚替え。垂れ歩を払えるところに極上の価値があるが、一手遅かった。

 ですが後悔がすべてではありません。対局中に△5五角の筋が見えたこと、それを一手遅くとも次善手であると決断して指し切ったこと、そして(一手遅かったことを含め)対局中の理解が後の検討でも正しいようだとわかったこと。これらは大きな収穫だと言えます。対局においては指さなかった手には価値の与えようがありませんが、俯瞰して見れば、自ら良い手を見つけた経験には重要な意義があるように思います。
 そんな印象的な局面を過ぎて、駒をひとしきり取りあって第4図を迎えます。敗勢を意識しながら、先手玉に迫る手順をひたすらに考えていました。

まるまる飛車損。底歩が5二に移動してしまったのも痛い。

1勝1敗に

第4図以下の指し手
▲6二金 △7一銀 ▲6一金 △同 銀
▲同飛成 △6二金 ▲3一龍 △5六角
▲2四飛 △6六桂 ▲8八玉 △5八桂成
▲2一飛成△7二金打 ▲5八金 △6六歩
▲6八銀 (第5図) △6七歩成
▲同 銀 △6六歩 ▲5六銀 △同 銀
▲5四桂
まで、99手にてアカサビさんの勝ち。
(消費時間=▲15分、△15分)

寄せ合いに持ち込まないアカサビさんの好判断。ポキツと心から音がした。

 美濃への攻めをどうにか一度しのぎ、攻めのターンを取り返します。それでもアカサビ陣はまったく崩れておらず、速度差では明らかに負けていました。さらにアカサビさんは、急戦党独特の感覚から▲6八銀(第5図)と受けの手を繰り出します。以下も拙攻を続けましたが、もはや後続の手段はありません。▲5四桂と要衝を崩す一手を見て投了となりました。アカサビさん対局ありがとうございました!

指す順としては久々の大差負けだった。

振り返りと、次局に向けて

 本局は力を出し切れない展開になってしまいました。アカサビさんの急戦を引き受けて、ギリギリのところで捌くという作戦自体は悪くなかったと思います。ですが、それを実現させるために必要な準備が足りませんでした。実戦練習もしたとはいえ数は足りなかったですし、序盤の検討はもっと工夫の余地がありました。心構えで言えば、指す順においては受ける手の方が見えやすい、という自分の傾向が良い方向に働くようマインドセットをしておくべきでした。例えば常にさばく手と受ける手の両軸を意識させておく、みたいな。色々な課題が見えつつも、満足感のある一局だったと思います。

 星取りはこれで1勝1敗。前期を踏襲する星の付き方ですね。しかし前期に比べてとても疲れてしまっています。仕事周りが原因で、知らず知らずのうちに体に蓄積していたようです。今は将棋についてどうこう言える状態ではないので、昇級だとか作戦だとか、そういうのは一旦おいておこうと思います。とにかく明日に対局が控えているので、そこを楽しくやり通すのが目標です。
 次戦のお相手はkazuhydeさんです。第7期からの初参加勢ですね。新しい方との出会いもまた、指す将順位戦の楽しみであります。少ない情報を辿る限りでは居飛車党のようですが、果たしてどんな展開が待っていることやら。来る7月15日(金)20時をどうぞお楽しみに!今回もお読み頂きありがとうございました~。

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