将棋自戦記#8~第5期指す将順位戦第8局~vs動点Pさん

 みなさんこんにちは。秋来ぬと目にはさやかに見えねどもな、やきそばです。今回も指す将順位戦の自戦記を書いていきます。日々熱のこもった対局が行われている指す順ですが、いよいよ昇級戦線・降級戦線に向けて佳境に入ってきましたね。本局も準備から終局まで、ゆっくり振り返っていきたいと思います!

局前の準備~動点Pさん編~

 8月の終わりに指した7回戦では、事前準備の方法を変えたのが良い結果に繋がったのではないかと感じていました。以前は序盤数手の傾向(飛車先からなのか、角道からなのかetc)を調べたうえで戦型選択を考えていました。ですが、3連敗をしたこともありこの方法には行き詰まりを感じていました。そこで大まかな戦型の分類を先に行うように順序を変えました。今までのやり方が手順前後だったのかもしれませんが、大まかな方針が見えやすくなり対策が立てやすくなりました。
 そこで今回も動点Pさんが指された戦型をまとめ、先後に分けて傾向を分類していきました。別のネット大会で当たった際は中飛車vs急戦の構図になりましたが、普段私が相手にしたことのない形を採用され対応に苦慮したのを覚えています。ですがそれは10分切れ負けの将棋。15分60秒という条件では全くの別物だと考え、切り替えて24の棋譜の海へ潜っていきました!
 動点Pさんは居飛車党であり、角換わりや対振りのミレニアムを得意戦法とされています。角換わりは私も指す戦型ですが、動点Pさんはなかでも右玉と▲4五桂(△6五桂)からの速攻を多く採用されている印象。どちらも私は経験値が浅く、相手にして自信のある形ではありません!一方ミレニアムは対四間の実戦例が多く、私が指す石田流やゴキゲン中飛車に対しては穴熊やその他急戦を指されているということが分かりました。以上をふまえた当日の作戦はこの通り。

 自分が先手番のとき
・▲7六歩△8四歩には▲5六歩から先手中飛車を基本
 ※但し▲7六歩△8四歩に▲2六歩から角換わりも有力
・▲7六歩△3四歩には▲7五歩から石田流
 自分が後手番のとき
・▲2六歩△3四歩▲7六歩に△5四歩からゴキゲン中飛車
・▲2六歩△3四歩▲2五歩には△3三角▲7六歩に△4二銀から角換わり系の将棋に持ち込む

 先後に関わらず、中飛車を中心に据えて作戦を立てました。角換わりは何かのときに中飛車に自信が無ければ選ぼうといったところ。先手中飛車に限ってはここ数か月ほど採用を避けていたこともあり、(勝率が悪かったため、それがきっかけで角換わりに手を出した)少し悩みました。ですが最近好調の波が来ていることと、レート対局や練習対局での手ごたえが良かったことを踏まえて採用することに。特に将棋倶楽部24の最高Rを2年ぶりに更新できたのが大きな自信になりました。見立てとしては中飛車8割、角換わり2割くらいの確率だと思っていました。今回はかなり決め打ちしてる感がありますね!

勇気の中飛車

第5期指す将順位戦B級3組 8回戦
令和2年9月12日20時30分
於・将棋倶楽部24 大阪道場「レーティング対局室」
▲やきそば △動点P(持ち時間各15分、秒読み60秒)
▲7六歩 △8四歩 ▲5六歩 △8五歩
▲7七角 △6二銀 ▲5五歩 △5二金右
▲5八飛 △4二玉 ▲4八玉 △3四歩
▲3八玉 △4四歩 ▲6八銀 △4三金
▲2八玉 △3二玉 ▲3八銀 △3三角
▲1六歩 △1四歩 ▲5六飛 △2二玉(第1図)

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 対局が始まり、先手番であることを確認。後手でゴキゲン中飛車に持ち込みたかったのですが、ここまで7局中6局が後手番だったことを考えると先手番になるのも致し方ありません!それでもやはり▲7六歩△8四歩と進んだ3手目の決断には時間がかかりました。15秒ほど考えて▲5六歩を決断。今期4度目となる中飛車に決まりました。
 続いて△8五歩と飛車先を決める手は動点Pさんとしては少し珍しい指し方な気がしました。後手から△5四歩と位取りを拒否される展開も気になりましたが、本局では一直線穴熊模様の作戦に。私の中飛車vs穴熊もこれで今期4局目。前回の自戦記でも触れましたが、私の中飛車vs持久戦模様では2パターンある石田流への組み換えが常套手段。居飛車陣の形に合わせて使い分けをしているのですが、本局は▲5六飛と先に浮くパターン。ただこの形だと△7四歩のときに▲3六飛のような揺さぶりが成立しないので、先に▲7五歩を突いておくべきだったかもしれません。飛車浮きに対して後手は駒組みを優先して第1図を迎えました。

浮き飛車には▲6六角

第1図以下の指し手
▲7五歩 △9四歩 ▲5八金左△3二金
▲7六飛 △8四飛 ▲6六角(途中1図)△4五歩
▲7七桂 △5一銀 ▲7四歩 △同 飛
▲同 飛 △同 歩 ▲7一飛 △8九飛(第2図)

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 居飛車側から7筋を受ける手段は色々ありますが、△8四飛の浮き飛車はよく見る形の1つ。左銀を中心にさばきを狙うとなかなかに厄介な浮き飛車ですが、本譜では▲6六角の覗きがありました(途中1図)。▲5六飛→▲7五飛のパターンではこの▲6六角が指したい手の1つであり、私は半ば脊髄反射のように角を出ました。これでいつでも▲7四歩からさばきを目指せるように。とはいえ単に▲7四歩では△8二飛▲7三歩成△同銀で攻めが止まってしまうため、本譜は▲7七桂で力を溜めます。
 ここまでの手順で後手は△3二金型にして穴熊を見せています。動点Pさんは6分の長考で△5一銀と引かれました。左美濃にする手もあったかなと思っていましたが、右銀が近づけばこの陣形でも十分堅さを感じます。先手としてもさばきを決断したいのですが、どうもそのあとの攻め筋が思い浮かびません!後手は△6五歩が次に△5四歩のような角交換の催促を狙っていますし、こちらから角交換も個人的には自信無し。押し込まれる展開に恐怖を抱いた私は結局ここで▲7四歩を決断。飛車交換から互いに打ち下ろして第2図まで進みました。

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「世界」に△5五角は無かった

第2図以下の指し手
▲8五桂 △4二銀右▲8一飛成△6四歩
▲7三桂成△6五歩 ▲7七角 △7五歩
▲5四歩 (途中2図)△同 歩
▲3三角成△同 銀(第3図)

 第2図直後の▲8五桂は本当は▲6五桂としたいところ。ただこの形では5三の地点を狙うことはできず、格言通り歩の餌食になってしまいそう。▲8五桂なら歩切れを解消しつつ本譜の▲8一飛成~▲7三桂成の手順が実現できそうです。と金の代わりに成桂で攻めるのは私好みですが、できることなら5三に成り込みたかった!

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 そして本局のポイントの1つだったのがこの局面。△6五歩▲7七角△7五歩と角をいじめられるのに耐え切れなくなった私がつい▲5四歩を突いてしまった図。ここでは△7七角成▲同銀△5五角という両取りがありましたが、対局中は(恐らく)2人とも気づいていなかった・・・!
 盤上の世界は対局者の2人で作り上げていくもの。△7七角成▲同銀の形が悪いとはわかりつつ「窮屈になって追いかけられるよりは・・・」と突いたこの歩でしたが、不思議なことにこの角打ちは全く見えませんでした。盤を挟む2人に見えない手は存在しないも同義かもしれませんが、こういう見落としは気を付けたいものですね。
 本譜はこの瞬間の角交換を見送り先手から▲3三角成と角交換。△3三同銀と応じた第3図で後手陣は矢倉風の陣形になりました。後日調べたところソフト的には先手に評価値が振れていたそうですが、正直自信はありませんでした。攻めの手段が見当たらないとネガティブに捉える癖があるのかもしれません。この図以降の指し手にその心境が色濃く表れることになります。

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やきそば流「負けたくない将棋」

第3図以下の指し手
▲6三成桂△9九飛成▲7二龍 △1二香打
▲5二成桂△4四角 ▲7九歩(途中3図) △7六歩
▲同 龍 △8八角成(第4図 )

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 ▲6三成桂~▲7二龍は「これが間に合えば悪くはないよな!」といった感じで、攻めている割には消極的な指し手。やはり具体的にポイントを挙げるような踏み込みが思いつかず、本局は終始自信がありませんでした。そんな私にとって△1二香打のロケットは恐怖そのもの!いつも思いますが、端攻めだけはどうにも対応がわかりません。続く△4四角でも端を狙われて美濃囲いを信用することができません!
 端に対してビビりにビビった私は▲7九歩と打ち付けます。これが本局のもう1つのハイライトでしょうか。「勝ちたい」というより「負けたくない」という気持ちが乗った結果の一手で、玉を中央に逃がしたときの当たりを弱める意味がありました。次の△7六歩も手抜いて問題が無さそうですが、攻める手が見えないなら徹底して受けようと▲7六龍。一夜明けた今見てみれば、過剰防衛なのはよくわかりますね。反省はしますが後悔はしていません!

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そして決着へ...

第4図以下の指し手
▲7二龍 △7八歩 ▲6四角 △4四馬
▲4一成桂△7九歩成▲3一角成(終局図)
まで69手でやきそばの勝ち
(消費時間=▲10分、△15分)

 第4図まで後手陣に迫る手順が見えていなかった私ですが、この局面で▲6四角~▲4一成桂の組み立てに気づきます。互いの玉の周辺ばかりに視線が行っていたのですが、△8八角成をきっかけに視点が移動したのは幸運でした。先述の筋をさらに厳しくするべく▲7二龍から攻撃開始。底歩がしっかり受けに働き、最終的には見つけた攻め筋から詰みに持ち込むことができました。

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振り返り、そして次局に向けて

 本局は2局連続・今期4回目の中飛車ということで、指し慣れた形で戦うことができました。捌きの権利が振り飛車側にあったため、全体的には形勢も良い状態を保つことができたのではないでしょうか。しかし幻となったとはいえ△5五角の見落としや、端攻め・歩に対する過剰防衛はやはり課題です。完璧を求める必要はありませんが、本局の指し方は一歩間違えれば受け過ぎから攻めの手段を失って負けるパターンに陥る可能性もあったので、そこはしっかり反省して次に挑みたいと思います。
 しかし本局は2局連続で事前準備がうまくいった形になりました。中飛車は相手も予想していた戦型だとは思いますが、持久戦模様からこの展開はおそらくこちらの経験値が勝っているだろうと思いながら指していました。相手の棋譜の調査は、ともすれば私の方が自信を喪失してしまう諸刃の剣ではあるのですが、本局はなんとか結果に結びつけることができました。新しい手法が2局連続でうまく行ったので、次局以降でも採用していきたいなと思います!
 これで今期の成績は5勝3敗に。2つ勝ち越しとなるとかなり見映えが良いですね。シーズン途中で5勝3敗防御率2.80とか見映え良くないですか?(防御率とは)
 ゴホン。真面目な話に戻すと、これで後続の2敗勢にプレッシャーをかけることができたと思います。本稿の執筆時点で5勝2敗が6人。順位が2位の私はこの6人が全員負ければ(直接対決があるのであり得ませんが)全体4位となり入替戦圏に入ります!全くの他力なのでここは祈るしかありませんが、他人の不幸を祈っても仕方ありません。B級3組を盛り上げるべく、昇級戦線を脅かす存在として3敗をキープしていきたいですね!
 次局のお相手は天城こじろ~♪さん。棋風などの情報はこれから調べていきますが、優しいナイスガイ(男性かどうかも知りませんが!)という印象。勝手ながら、盤を挟む機会がそれ自体が楽しみだなと思っています。B3のなかでは早めに8回戦を終えましたので、また日程に余裕を持って対策を練っていきたいと思います!果たして次はどのような対局が待っているのでしょうか。今回も長文にお付き合い頂きまして、ありがとうございました!

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